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『彼女じゃない、君といる日々 』
小宮 雅春aa4756

 ゴウンゴウン。
 規定の料金を入れると残り時間が表示され機械が動き出す。
 洗濯物を入れて来た容器を備え付けられた机に置き、漫画雑誌を手に取ると小宮 雅春(aa4756)は丸椅子に座った。
 表示される時間は、待つには少し長い時間だが、一度家へ戻るほどの時間でもない。
 連日の秋雨で溜まった洗濯物を洗いにやってきたコインランドリーは時間のせいか誰もいなかったが、雅春の洗濯物が入っている機械以外にも動いている洗濯機や乾燥機があるところを見ると、待ち時間の間、どこかへ行っているらしかった。

 パラパラと雑誌をめくりながら機械の回る音と雨の音に耳を傾ける。
 規則的な両者の音は何故か耳に心地いい。
(色んなことがあったな)
 リンカーになってから大規模な戦いが何度かあり、色々な依頼をこなしてきた。
 その中で色んなものを見て、色んな人と出会い、色々な経験をして……たったひとりの英雄と出会ってから雅春の世界は変わった。
 幼い頃出会ったある女性と同じ姿の英雄。
 初めて出会った時、再会したのかと思った。
 いなくならないで欲しい。
 その思いだけで契約し、それから家族の様に友人の様に過ごしてきた。
 でも、それももうすぐ終わってしまうかも知れない。
 北極点での世界蝕、そして降臨した愚神の王。
 王を倒せば、愚神はいなくなるだろう。
 そして英雄たちも……。
(彼女は本当に消えてしまうんだろうか)
 想像出来なかった。
 契約するまで彼女のいない生活が当たり前だったのに。
 それほどまでに雅春にとって彼の英雄は魂に寄り添う存在になっていた。
 代わりなどではなく彼女との時間が大切になっていた。
(いなくならないで欲しいな。でも、彼女はどう思っているんだろう)
 いつも静かで穏やかな英雄のことを思う。
(聞けばいいんだろうけど……)
 何だかそれはとても恐ろしいことの様に思えた。
『一緒に居たくなかった』
『これでせいせいする』
 頭の中でそんな考えが頭をもたげる。
 勿論、理性のところでは彼女がそんなことを思わない人だと言うことはわかっている。
 それでも湧きだした暗い気持ちは止まらない。
(…………)
 胸の中で英雄の名を呟く。
 すると、返事でもするかの様にガコンと音がして雅春の意識を現実へと引き戻した。
 はっとして音の方を見て雅春の洗濯物が出来た合図だと気が付いて、苦笑する。
 その、あまりのタイミングの良さに。
(今ある日常を大事にしよう。彼女がどう考えていようと、これからどうなってしまうとしても、今一緒にいられている事実は変わらない)
 そう頷いて雅春が立ち上がると誰かが入ってきた気配がした。
「……。お待たせ」
 振り返り微笑む。
 そこにいたのは彼の愛しい人形、その人だった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa4756 / 小宮 雅春 / 男性 / 24歳 / 未来より現在を 】
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2018年11月01日

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