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『『静まらない鼓動――そして』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

「……ディラの気持ちは、嬉しい……でも、少し、話をいいか?」
 呼吸を整えてアレスディア・ヴォルフリートは言い、腕を落し、顔を上げた。
 彼女を抱きしめていたディラ・ビラジスは、体を起こして黒い瞳でアレスディアを見詰めた。
「ああ」
 不安げな色をにじませながら、ディラは静かにアレスディアの言葉を待つ。
「ウイルスに侵された時、一人で行こうとしたな」
 あの時確かに、ディラはアレスディアを避けて、1人でゲートに向かおうとした。
 それは……アレスディアへの想いがあったから。アレスディアのことが好きだったからだと、アレスディアは今はっきりと知った。
 彼は、自分を護りたいと思っている。恐らくは、自らの身を犠牲にしてでも。
「……自らが犠牲になっても、護りたい。その気持ちは、わかる。私が、そうだから。私は、ずっとそうしてきた」
 アレスディアは少し前までの、自らの思いを言葉にしていく。
「例えどれだけ傷つこうと誰かが護れればそれでいい。護った果てに命尽きることが幸せだ、と」
 護るべく者に護られ、生き残った彼女は、そんな風に命を使ってきた。
 アレスディアは、首をゆっくり左右に振る。
「でも……今は、違う。果てるために、護るのはやめた。護った先の道は、まだ、考えているところだが……護った先にも道があると、思っている」
 ディラの手は、アレスディアの両肩に置かれていた。
 2人の顔の位置は近く、互いの鼓動は変わらず強いリズムを刻んでいる。
「なぁ、ディラ」
 アレスディアは左手で、自分に伸ばされたディラの右腕を掴んだ。
「この手――その矛で、私を護ってくれないか。私の盾で、護らせてくれないか」
 僅かな反応を示す彼の目を、切実にアレスディアは見つめる。
「道半ばで力尽きるかもしれない。でも、共にいてくれ。共にいさせてくれ。この道がどこへ続こうと、最後まで。私は、ディラと共にいたい」
 彼女の真剣な想いに、ディラは眉間に皺を寄せて、苦しげともいえる表情で頷いた。
「嬉しい、苦しほど。俺は、そうありたい」
「……ありがとう」
 感慨深げに呟き、アレスディアは少し躊躇い、視線を逸らし、またすぐに戻して。
「……嫌じゃない、と言ったな?」
 左手を彼の腕から離して、頬に手を添えて。
「ディラ……」
 アレスディアは、そっと、ディラの唇に唇を重ね、
「……好きだ」
 赤らめた頬を向けて、微笑した。
「ありが、とう……」
 ディラがアレスディアの肩を抱いた。
 彼の熱い息が、アレスディアの首筋に落ちてきた。
「これ以上は抑えられなくなりそうだから、続きはまた今度」
「抑えられなくなる?」
 顔を起こして見ると、彼はどこか辛そうだった。
 顔が赤いのは、自分と同じ理由だろうか……熱のせいかもしれない。
「苦しいのか? まだ少し熱があるようだな」
「いや、もう熱は下がったんだが……ちと、1人で休んだ方がいいかも」
「見舞うつもりで、病み上がりのところ少し無理をさせてしまったようだ。すまなかった」
「そんなことはない。サンキュー、ホント、すげぇ嬉しい」
 ディラがアレスディアの手を掴み、アレスディアはその手を両手で包んだあと、立ち上がる。
「では、またな」
「ああ。数日で仕事に戻れるはずだから、それまで無茶なことは絶対するなよ」
「わかった。ディラも、私を置いて行こうとするな」
 アレスディアの言葉に、ディラはこの時、しっかりと頷いた。
 何かあったら、必ず互いに連絡をする。
 そう約束を交わして、アレスディアはディラの部屋を後にした。

 外へ出ても、冷たい風に当たっても、鼓動はまだ鎮まらない。
 だけれど訪れる前よりも、アレスディアは楽になっていた。
 彼と過ごした僅かな時と、交わした約束により、湧き上がった感情――幸せの感情がアレスディアを包み込んでいた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
2人の未来に続く、貴重なお話をありがとうございました。
この先のドラマも何かございましたら、是非よろしくお願いいたします。
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年11月02日

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