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『秋空のもとで 』
スノー ヴェイツaa1482hero001

 秋晴れが爽やかだ、と思った。
 空が高く、透明度も明確に変わったとわかるようになれば、季節が冬に向けての準備を始めているということになる。
「寒くなってきたけど、イイ季節だなぁ……」
 天を仰ぎつつ、スノーがそう言った。
 つい先日まで賑わいを見せていた収穫を祝う祭りは終わり、街を覆っていたオレンジ色も無くなった。
 それと入れ替わりのように木々は赤や黄に色づき始め、相変わらず目を楽しませてくれる。
「紅葉狩りなんてのもオツだなぁ。和菓子お供にどっか行きてぇな」
「スノー姉さん!」
「……んぁ?」
 全身で『秋』を満喫している彼女の背に、そんな声がかかった。
 スノーは天を仰ぐ姿勢のままでそれに反応して、僅かに振り返る。
「あー、またお前か」
「あ、あの、お菓子作ってきたんです! よかったら、どうぞ!!」
 視界の先にいるのは一人の少女であった。
 見知ってはいるが、それほど深い間柄でも無いらしい。
 少女は頬をピンク色に染めながらスノーに手製の菓子を差し出してくる。
「ん、あー、その、どうもな」
 スノーはその勢いに押されつつ、菓子を受け取った。
 少女との馴れ初めは、ついこの間の夏の終わり頃の話だ。
 ――とは言っても、特筆すべきことでもない事がきっかけだった。
 スノーが歩いていた道筋に、悪漢がいた。その悪漢が、この少女に乱暴をしようとしていた。
 目に止まってしまった以上、スノーは動かずにはいられず、悪漢の腕を掴んで『イイ男ってのは、弱者に手ぇ上げるもんじゃねぇぜ?』と嗜めてしまった。
 その瞬間、スノーは少女にとっての憧れの女性という枠に入ってしまったようなのだ。
「今日もお綺麗です! この青空のような瞳も、あの紅葉のような御髪も、眩しいくらいに……!」
「お、おぅ……その、有難うな……」
 少女が瞳をキラキラさせながらそう言って迫ってくる。
 スノーはそれを邪険には出来ずに、先ほどもらった菓子を片手に収めながら、困り顔になった。
(悪い気はしねぇが、なぁ……)
 普通に人助けをしただけなのだが、とも思いつつ、どうしたものかと思案する。
 少女の年の頃は、十代半ばくらいかと推測する。思春期の間は、同性に強く憧れたりする時期があったりもするのだろう。
 そんな事を考えつつ、スノーはなんとか彼女を撒けないだろうかと思った。
 そして懐から何かを取り出して、少女の目の前に差し出した。
「……? なんですか?」
「まぁ、なんだ。魔法の飴ってやつ。オレの特製。これ食ったら、アンタもオレみたいになれるかもしれねぇな?」
「じゃあこれが、姉さんの美の秘訣なんですね!!」
「え? まぁ……そう、かな?」
「頂きます……ありがとうございます、姉さん……!!」
「…………」
 少女がスノーから受け取った飴は、普通の飴であった。
 スノーが普段から子どもたちに配っているものと、代わりはない。
 そのはずなのだが、少女にとっては何者に代えがたい飴となってしまったようだ。
 少しの言葉のスパイスというのは、受け取りようによっては強力だ。
 スノーはそれを目の当たりにして、苦笑した。
「……さて、オレはもう帰るぜ」
「あ、はいっ! あの、また会えた時には、こうやってお話させてくださいね!」
「そうだな。またそのうちな」
 スノーは少女の言葉に内心でほっとしつつ、そんな返事をした。このままついていきたいなどと言われても困るからだ。
 必要以上の干渉はしたくない。
 それは自分にとっても少女にとっても、丁度いい距離感であるはずなのだ。
 少女は深々と頭を下げながら、スノーの側を離れて掛けていった。
 そんな彼女を手を振りながら見送り、スノーは静かにため息を吐いた。
「やれやれ……」
 再び、一人となったスノーは秋風に頬をくすぐられながら歩みを再開させる。
 その際、少女から受け取った菓子の袋を開封して、中身を確かめた。
「……おっと、和菓子か。お供が出来ちまったなぁ」
 手製の菓子、と言っていたが和菓子は洋菓子と違って何かと手間が掛るはずだ。そんな事を思いつつも、スノーは頬が綻ぶのを止められなかった。
 紅葉がひらり、と彼女の髪をかすめて宙を舞う。
 それを視界の端で感じ取りながら、季節の移り変わりゆくさまを、スノーなりの楽しみ方で感じているのだった。



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【aa1482hero001 / スノー ヴェイツ / 女性 / 20歳 / ドレッドノート】

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 ギリギリのお納めになってしまい申し訳ございません。
 この度はご依頼有難うございました…!
 初めてのPCさんでしたので、始終緊張しながらも書かせて頂きました。
 こんな日常もあっても良いかな、という風景を切り取った感じにしてみました。
 少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
 またご縁がありましたら、よろしくお願い致します。
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2018年11月02日

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