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『作戦コード「HALLOWEEN」 』
世良 杏奈aa3447)&世良 霧人aa3803

●今回のあらすじ
 夫婦でH.O.P.E.のエージェントを務める世良家。世間では様々に不穏な噂が飛び交っているが、彼等はめげない。特に妻の方は、そのしみったれたテンションを吹き飛ばすべく、とある計画を敢行しようと企んでいたのだった。

●KIDDING
 H.O.P.E.東京海上支部。世良 杏奈(aa3447)は科学部研究課の隅にある恭佳の開発室を訪ねていた。一週間ほど前に注文しておいた武器を受け取りに来たのである。
「やー、恭佳せんせー!注文していた品物は完成してるかしら?」
 部屋に駆け込むなり、彼女はデスクの上に飛びつく。何かの基盤を弄っていた仁科恭佳(ゲストNPC)は、左腕を突き出して彼女の動きを制した。
「ステイステイ。あともう少しなんで」
 恭佳の手元では、レーザーサイト付きのごてついた拳銃が着々と組み上げられている。
「ごめんねー。いきなり武器製作の注文なんかしちゃって」
「大丈夫っすよ。ちょうど似たような形の品物作ろうと思ってたんで、さほど時間はかかってませんし」
 ネジ止めを終えると、恭佳は拳銃を手に取って杏奈の眉間へ突きつける。悪戯っぽいドヤ顔で、恭佳は杏奈に尋ねた。
「しかし良いんですかい? これを私に作らせたって事は、もう世良さんと私は一蓮托生、姉さんからのお仕置きを平等に受けなくてはならないって事ですぜ」
「ふふん。いいのよ。最近支部がしんみりし過ぎだもの。ハロウィンくらいはエンターテインメントを引き起こさなきゃ」
 杏奈は突き出された拳銃をその手に受け取り、小悪魔のような笑みを浮かべた。いわゆるアラサーだが、ニコニコしてると十代にさえ見えてくる。
「恭佳先生こそ、途中でオリとか無しだからね?」
 恭佳はくつくつ笑うと、引き出しからもう一丁の拳銃を取り出した。
「誰に言ってるんですか。……何度あの姉さんにしばかれてもへこたれなかった女ですよ」
「頼もしいわね。……じゃあ作戦コード“ハロウィン”、始動よ」
 二人は力強く手を取り合い、研究所から戦場へと飛び出すのだった。

●Trick
 一方その頃、世良 霧人(aa3803)は当てもなくH.O.P.E.のロビーを歩き回っていた。最近一家に迎えた英雄と午後から家で読み書きの勉強をする筈だったのだが、妻ともども何時まで経っても支部から帰って来ないのだ。
「任務を探して来るってだけのはずだったんだけどな……」
 単独でも調子に乗ったナンパ野郎達をテキトーにしばき倒せる実力を持っている杏奈。今更その無事を心配してはいないが、それでも妙な予感がある。
「うーん……何だろう。何だか嫌な予感が……」
 少年少女の頃から連れ添って培った勘は嘘をつかない。霧人は確信していた。その予想を支えるように、今朝のとある光景を思い出す。
(そう言えば……電話で例のブツがどうのこうのって話してたような)
 その眼はいたずらごころに目覚めて優先度+1で行動している時のそれだった。ふと霧人はポケットからスマートフォンを取り出す。見れば、本日は10月31日。霧人は左目をぱちぱちさせる。
(……うん。するね。嫌な予感がするよ)
 周りを見れば、仮装をして歩いているようなエージェントも目立つ。元から派手に傾いた装いをしている者は多いが、今日は特に多い。
(せめて今日くらいは……ってところかな?)
 しみじみと考えてしまうが、すぐに霧人は正気に戻る。咄嗟に壁際に身を寄せ、背中を守る。背後から訳も分からず仕留められる事だけは避けなければならなかった。左目を見開いて周囲を見渡している間に、科学部の方が何やら騒がしくなってくる。
「な、な……何? 何が起きてるの?」
 大勢の人間が何やら騒ぎながらロビーに飛び出してくる。誰も彼もが、狼やら猫やら様々な着ぐるみやらコスプレを着込んでいた。それどころか、仕草もどことなくおかしい。
 狼の着ぐるみを着た青年がロビーの吹き抜けに向かって吼えているし、猫のコスプレをした知り合いの少女はカウンターの上で丸くなっている。隣では彼女の英雄が呆れたように頭を抱えていた。
「まただ……またネコになってるんだけど……また始まったの……?」
「Hey, Catch!」
 二階から鋭い声が響いたかと思うと、魔女のコスプレをした恭佳が拳銃でその英雄を撃ち抜く。次の瞬間には英雄から犬の耳が生え、そのまま彼は少女のそばにじっと座り込んでしまう。
「お、お座りしてる……って、ちょっと! 恭佳ちゃん、何してるの!」
「何って……トリックですけど」
 拳銃をくるくるくるくる回して恭佳が応える。その答えに迷いが無さすぎる。思わず霧人は突っ込んだ。
「え、トリートは無し!?」
「もっちろん! 私達の合言葉はTrick yet Treat、お菓子はいらない、イタズラさせろ!」
 その隣に青いドレスに身を包んだ杏奈が立つ。霧人は思わず言葉を失った。
「……」
「驚きすぎて言葉も無いみたいね。ならば説明しよう! このイメージシューターはライヴスを塊にして放ち、予めプログラムしておいた姿に装いを変えてしまう武器! イメージプロジェクターを他人に使っちゃうようなものよ! 何か知らないけど変化に応じて行動も変わっちゃうみたい! 流石は恭佳ちゃん印のびっくり装備ね」
 杏奈が超早口で色々語っている間に、霧人は何とか正気を取り戻す。最早予感ではない。トラブルは今まさに目の前に存在している。
「……いやいやいや、杏奈!?」
「という訳で霧人ぉー!」
 フィルムパックに包んだ小さなチーズケーキをロビーでバタバタする人々に向かってばら撒きつつ、杏奈は霧人の目の前に向かって飛び降りる。そのままストンと着地して、杏奈は霧人に向かってイメージシューターの銃口を突きつけた。
「Trick yet Treat!」
「うわわわ」
 咄嗟に身を屈めて光の銃弾を躱し、霧人は咄嗟に逃げ出す。背後を振り返りながら、必死に逃げる。
「逃げても無駄無駄ー♪」
 ヒールの足音が高らかに鳴り響き、杏奈が背後から追いかけてくる。とっくに英雄はお菓子で買収されている事だろう。悪戯が自然に終わる事は有り得ない。困った事に、自分の英雄二人は家で留守番している。抵抗の手段も無しだ。
(と、とにかく隠れないと……)
 頭を庇うようにしながら背後から飛んで来た弾丸を躱し、霧人は廊下を折れた。並ぶドアを見渡し、適当に一つ選んで咄嗟に飛び込む。何かの倉庫だ。霧人は物陰に身を潜め、こっそりと息を潜める。とにかく隠れてやり過ごす。それしか逃げ道は無いように思えた。
 しかしそれが運の尽き。杏奈はすぐさま部屋にやってきた。反応する間もなく、霧人はイメージシューターの弾丸を受けてしまう。
 狼の耳のカチューシャ。手には狼の爪を模した手袋が。狼尻尾のアクセサリーまで付けてしまう。茫然としている霧人に、杏奈は新たな銃を片手に一歩一歩歩み寄っていく。
「ウフフフ、これで霧人は“呪われし者”、私達の仲間よ。一緒に悪戯頑張りましょうね」
「そんな、僕まで皆を強制的にコスプレさせる役になっちゃうなんて……明日からどうすればいいんだ……?」
「楽しめばいいのよ。この世界を余すことなく。合言葉は?」
「Trick yet Treat……」
 杏奈は悠然と微笑み、霧人にイメージシューターを差し出す。シューターの効果ですっかり錯乱していた霧人は、思わずその手を拳銃へ伸ばして――
「さーせるかあああっ!」
 刹那、ドアを蹴破って防弾チョッキを着込んだ少女が現れる。ブルパップを構えた彼女は、杏奈に向かって容赦なく引き金を引く。狭くて躱す場所がなく、杏奈は背中にゴム状の弾丸を何発も受けてしまった。
「いたっ! いたたたたっ! 待って待って! 実力行使はやり過ぎじゃない?」
「だったらその銃を下ろしてくださいよ! これ以上しばかれたくなかったらね!」
 少女――澪河青藍(ゲストNPC)の構える銃口が妖しく光る。杏奈は溜め息を吐くと、その手の拳銃を力無く地面へ落とす。
「あーあ。もう少し悪戯出来るかなと思ったのにー……動くの早くない?」
「SNSでバカ拡散されてんだから気付きますよ。はい、とにかくこっちに来てくださいね」

●Treat
「……今回は世良さんもですか」
 青藍は二人の下手人を目の前に正座させる。恭佳は慣れ切った調子でお澄まししている。一方の杏奈はふてぶてしく微笑んでいた。
「さあ、どうするの?」
「別にどうもしないですけど……今大変な時期なのに、どうしてこんなことを……」
「思い出してほしかったからよ。英雄と出会って、H.O.P.E.に来て、良かったって気持ちはきっとある筈。その気持ちをもう一度感じて欲しかったの」
 青藍に尋ねられて、杏奈はきっぱりと言い切る。霧人は眉を開いた。何だかんだで彼女も大人。全く考え無しで暴れる恭佳とは違うのである。
「なるほどね。……杏奈らしい、のかな」
「……都合の良い言い訳じゃないですよね?」
 杏奈は首を傾げる。青藍は訝し気に目を凝らす。
「あの」
「……とにかく、皆にH.O.P.E.の中で感じていたはずの楽しい気持ちを忘れて欲しくないってのは本当の気持ちよ。私自身が忘れたくないんだもの」
 杏奈は目の前に立つ霧人を真っ直ぐに見上げた。その眼には一切の澱みが無い。
「私は信じて戦うわ。皆と出会えたのは運命の筈だもの。いきなり他所からやってきた王様なんかに、その運命を奪ったりなんかさせないから」
「そうだね。……皆大事な家族だからね。絆を失わずに済むよう、頑張らないとね」
 霧人も頷く。夫婦の想いはかくしてまた一つにまとまっていくのだった。

 彼らはH.O.P.E.東京海上支部のエージェント夫婦、世良杏奈&霧人。片や攻めの魔術師、片や守りの剣士として、迫り来る最終決戦においても必ずや活躍を見せる事だろう。



 CASE:世良 杏奈、霧人 おわり






━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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世良 杏奈(aa3447)
世良 霧人(aa3803)
澪河青藍(ゲストNPC)
仁科恭佳(ゲストNPC)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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影絵 企我です。この度は発注いただきありがとうございました。

そういえば二人が一堂に会する姿を描く事ってあまり無かったな……と思いつつ、呟きやイラストなどを参考にしながらちょっと色々させていただきました。お気に召していただければ幸いです。
何かありましたらリテイクを。

ではまた、御縁がありましたら。



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2018年11月05日

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