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『その花言葉、夢かなう 』
小宮 雅春aa4756

 小宮 雅春(aa4756)は人形展覧会に来ていた。
 街の小さな美術館で行われている、企画展だった。偶然にもポスターを見掛けて、ついふらりと立ち寄ってしまった。
 入り組んだ迷路のような通路を抜けると、広い展示室に人形の種類ごとに分けられて展示されていた。
 精密な作りをした球体間接人形。
 のっぺりとした微笑みを浮かべる日本人形。
 フリルとドレスに身を纏ったビスクドール。
 最新のカスタムドールやフィギィア等も展示されている。
 そのどれもが多かれ少なかれ異質な存在感を主張している。
「凄いですね……」
 人形の群れに感嘆の息を漏らしつつも、何処かに彼女の面影を探してしまう。愛おしい『あの人』。
 覚えていないけれど覚えている。あの彼女は何者だったのか。
 小宮は無意識に手元の木偶人形を撫でていた。
「君はどう思いますか?」
 応えは無い『あの人』が持っていた手の中の人形に話しかける。
 この展覧会の人形の群れには埋もれる何の変哲もない木偶人形。でも、彼女が置いて行ったから何よりも特別だった。
 あちらこちらと人形を見て回る。
 紫のドレスを着た人形を見て、そう言えば彼女は着替える必要はあるのだろうか、なんて考えてしまう。
 最後の方に人形の着せ替え用のドレスコーナーもあったけれど、勿論彼女の大きさのドレスは見当たらなかった。
「木偶人形にドレスもな……」
 少しばかり悩みつつ、彼女用に小さな蒼い薔薇のコサージュを買って、「彼女に似合うだろうか」「紫の方が良かっただろうか」等と悩みながら会計を済ませた。
 ちらりと隣を見れば、大きめの人形を抱えた綺麗な女性がゴシック調の人形のドレスを購入していた。
 何となく彼女を思い出して、それと同時に自分の服装の野暮ったさに気が付いて少々赤面する思いも浮かぶ。
「プレゼントもそうだけれど、もしかすると僕の格好は彼女に相応しくないのかもしれない」
 とっさに思い浮かんだその発想に、彼女と『あの人』に相応しい格好とは何か、を考えつつ、蒼い薔薇のコサージュを小さめの小箱に包装されて、大事に紙袋に入れて。
 小宮がその場を離れようとした時。
「蒼い薔薇の花言葉を知っていますか?」
 店員の女性が物腰柔らかにそう問いかけて来る。
「蒼い薔薇は作り出すことが出来ない事から、花言葉は『不可能』、とされていましたが、近年になって人工的に蒼い薔薇が作られて、『奇跡』や『夢かなう』、と変化したんですよ。人間の努力が不可能を奇跡に変えたんです」
『夢かなう』
 その言葉に小さな勇気を貰った気がして、蒼い薔薇にして良かったと、何となく安堵の溜め息を吐いた。
 店員に有り難う、と告げて、展覧会を後にする。
 帰りに少しは洒落た格好をしてみようか、彼女は驚くだろうか、なんて。
 想像するだけでも楽しいふわりとした夢心地に浸りつつ、コサージュを持って彼女が待つ場所に帰る。
 帰途にはスーツや綺麗めな服装を扱うブランドショップに立ち寄ると、その値段に吃驚したり。どうにかお手ごろな価格の服を買って、紙袋を下げた帰り道。
 今は人形の彼女に何をして良いのか、分からないけれど。
 この気持ちは何と表現して良いのか分からないけれど。
 夢かなう、小さな蒼い薔薇を携えて、少しだけいつもと違う自分が彼女に会うのは、とてもとても。
 胸が弾む――気がした。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa4756/小宮 雅春/男性/24/骨のあるチキン】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 御待たせ致しました!
 今回はイメージは「蒼い薔薇」で書かせて頂きましたが、後で「ブルームーン」(カクテル)の方が……? と思ってしまいました。
 色々と素敵な方ですので、是非又書かせて頂ければと思います。
おまかせノベル -
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2018年11月05日

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