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『守護者・ハードロック 』
鬼塚 陸ka0038

 以前に比べて人込みを避けて歩くようになった。
 ごちゃごちゃした場所が好きだったというわけではないけれど、メインの通りからは1本ないし2本くらい裏の方を歩くことが増えた。
「あっ、キヅカさん! ちぃーっす!」
「ちぃーっす!」
「ああ、うん、こんにちわ……」
 道端にたむろっていた見るからに厳つい集団に愛想笑いで挨拶を返す。
 僕は足早に彼らの傍を抜けていった。
 
 守護者になってからというもの生活が一変した――というと言い過ぎだけれども、何かと見知らぬ人に声を掛けられるようになったのは確か。
 歩いていれば街の人たちはそれとなく僕のことを見て、驚いたような、興奮したような表情をする。
 あれだ……街を歩いていたらテレビでよく見る有名人とすれ違った時みたいな、そんな感じ。
 世界のために自分にできることがあるなら――そう願って選んだこの道だったけれど、まさかこういう形でその価値を思い知らされることになるとは流石に考えが至らなかったね。
 一般人相手ならまだそこまで顔は割れていないけれど、ここリゼリオならそうはいかない。
 なにせハンターの街だ。
 不本意だけど、僕がこの街を歩くということは若者でごった返す休日の渋谷にアイドルを放り込むのに等しい。
 
 ジャケットの襟で口元を隠すようにして、さっと大通りに出て目的のお店に入る。
 大通り、クリア。
 ふぅと一息つきながら陳列棚から手早く必要なものを選んだ。
 えっと……インクと、石鹸と、布巾と……そう言えば血で汚れちゃったし新しい下着買わなきゃな。
 ふと目に付いたガラ物のパンツを手に取って眺めていた。
 大砲がたくさんプリントされたそれは、うーん、なんか意味深。
 流石に趣味じゃないな……。

 それにしても血で汚れて使えなくなる、だなんて数年前の自分の口からじゃまず出てこない言葉がでてくるなんて、なんだか可笑しくて笑いもこぼれた。
「あれっ、もしかしてあれキヅカさんじゃね?」
 不意にそんな声が聞こえてギクリと肩が揺れる。

――しまった、気づかれた!

 ……キヅカだけに。
 
 そんなことを考えてる場合じゃないけれど、そりゃ買い物中にいきなり「フフッ」なんて笑い出したお客がいたら誰でも見ちゃうよね。ごめんなさい。
 慌てて抱えた商品を持って会計へ。
「合計で3000Gになりまぁす……って、キヅカ様だ!」
 値段を計算していた女性店員も、僕を見るなり目の色を変えて声を上ずらせた。
「あ、あの、サイン良いですか!? えっと、何か書くもの――」
「ゴメンっ! 用事あるからまた今度来るよ!」
 ジャラジャラと硬貨をカウンターに放って買ったものをポケットに突っ込む。
 名残惜しそうな店員の静止を振り切って、店の外へ逃げるようにダッシュ。
 そして大通りに出た瞬間、沢山の人が店の前に集まっていた。
「ほんとだ、キヅカさんだ!」
「キヅカさん、握手してくださいっ!」
「うわああああああ!?」
 思わず情けない声をあげてしまったけれど、体裁を取り繕っている場合じゃないよ。うん。
「石鹸買ってる! キヅカさんも洗い物とかするんだ!」
 するよ!
 いや、たまにしないかも!
 ときどきは、たまにじゃないかも!
 でも石鹸ってないならないで不安でしょ!?
 
 と、とにかくここを切り抜けないと。
 周りは野次馬、後ろはお店、だったら――
「飛べよおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」
 覚醒――ジェットブーツを起動して、靴裏からマテリアルを噴射。
 路上の噴煙をまき散らしながら、一気に空へと飛びあがる。
「キヅカさんが飛んだああああぁぁぁぁ!!」
 何故か歓声が上がる野次馬を見下ろして、そのままお店の屋根に着地。
 猛ダッシュで屋根から屋根へと駆け抜けていく。
 おちおち買い物もできやしない!
 これが有名税ってやつ!?
 
 半べそかきながら屋根伝いに通りを何本か越えて、細い路地に飛び降りる。
 ここまでくれば大丈夫……のはず。
 買ったものも落としてないかな……うん、大丈夫だ。
 お金も落としては――
 
 確認しようとして思い返す。
 あれ、そう言えばインクと石鹸と布巾で3000Gもなるっけ?
 下着は買ってなかったし……うーん、まあ、いっか。
 どこか釈然としないけど、とりあえずは無事?のミッションコンプリートにほっと胸をなでおろした。
 下着、また別の機会に買いに行かなきゃなぁ……次はマスクとサングラス、用意しておこう。
 サングラス、死ぬほどに会わなさそうだなぁ……こぼれるのはため息ばかりだった。

 後日、街の男達の間では大砲柄のパンツがちょっとしたブームになったらしい。
 触れ込みは「守護者愛用の品!」。
 なんでも買い物をした守護者キヅカが道端に落としていったものだったとかなんとか……その真偽は定かではない。

 ――了。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0038/キヅカ・リク/男性/20歳/機導師】
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ファナティックブラッド
2018年11月09日

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