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『終末の先に 』
雨を告げる鳥ka6258

 雨を告げる鳥(ka6258)が辺境地下の開かずの扉を開いてから数週間。
 今まで調査されていなかった遺跡が発見された事で、開かずの扉周辺にはドワーフや帝国の研究者が大勢押し掛けていた。
「…………」
 雨を告げる鳥は、その喧噪の中にいた。
 辺境に訪れるという終末を調べ続けているうちに、開かずの扉へと辿り着いた。本当に古代文明の人々が終末に備えていたとするなら、この遺跡に何らかの痕跡があるはずだ。
(私は願う。古代文明文字を修得した成果が出る事を)
 この数週間、雨を告げる鳥は古代文明の文字判別修得に費やしていた。
 勘が正しければ、この文字修得が今後も役に立つはずだ。
「おおぃ! どいたどいたっ!」
 ドワーフ達が大きな塊を担いで遺跡から運び出している。
 造形から考えれば、古代文明の魔導アーマーであるピリカのパーツだろうか。その存在からしてもこの遺跡に兵器が眠っている事は間違いない。
「私は読み取る。この遺跡の意味を」
 雨を告げる鳥は改めてこの遺跡の内部を見回した。
 長方形の部屋に柱が六本。
 左右には三つの部屋があり、ピリカや石版か発見されている。
(私は思考する。この遺跡を作り出した者の意図を)
 遺跡に意味があるなら、建造物にも何らかの意図があるはずだ。
 そう考えた雨を告げる鳥は六本の柱を見て回る。
 火、水、風、土と古代文明の文字で書かれている。
(私は確認する。残る二本には、光と闇……)
 柱には属性が刻まれている。
 そして、部屋の一番奥にある古代文明の言葉――。

『光と闇に揺れ動くは人の定め。真実は、その中央にある。掲げよ、導きしものを』

(私は推理する。……光と闇の間は、柱の間。中間地点には……)
 雨を告げる鳥は二本の柱の中間地点に立つ。
 中間地点の天井には太陽を象った印が刻まれている。ここで間違いないようだ。
 雨を告げる鳥は、さらに思考を深めていく。
(……導きしもの……終末を考えれば導かれる対象は人。そして、導く者もまた人……)
 雨を告げる鳥は、手にしていた霊杖「アルス・マギカ」を掲げる。
 刹那、太陽から一瞬の光。
 同時に雨を告げる鳥の意識も遠退いていく。


「……っ! …………うっ!」
 雨を告げる鳥の意識が徐々に戻っていく。
 しかし、その瞳に映るのは異様な光景であった。
 何処かの山間に立てられた幕。
 周囲には負傷者が多数。瀕死で今にも死にそうな者もいる。
 腰に刀を差している所を見れば、東方の一部だろうか。
 映像にしてはあまりにもリアル過ぎる。
「聞いてたのか、齋藤!」
 雨を告げる鳥は急に両手で肩を掴まれる。
 眼前に迫る男。
 見覚えはない。
 帝国の制服に似ているが、形状は異なるようだ。
「私は問う。ここは?」
「何馬鹿な事を言ってるんだ。ここは仙台の林香院だ。
 ぼーっとしていると置いていっちまうぞ」
「おいて、いく?」
 首を傾げる雨を告げる鳥。
 その様子に男はため息をつく。
「おいおい、大丈夫か? 俺達はこの仙台から撤退する。蝦夷地へ行く。
 まだ幕府の軍艦が残っているんだ。それに薩長が錦の御旗を掲げられようと、俺達には誠の旗があるんだ。負けねぇよ」
 蝦夷? 薩長?
 何を言っている。
 雨を告げる鳥にはまったく理解できない。
 誰かの追体験だとするなら、手足の自由が利く意味が分からない。
 思い悩む雨を告げる鳥の後方から別の兵士が走り込んできた。
「土方さん! 官軍だ! もうすぐ迫ってる!」
「なんだと!? 齋藤、行けるか? おい!」
 土方と呼ばれた男が、雨を告げる鳥へ呼び掛ける。
 その最中、雨を告げる鳥の意識は再び遠のいていく――。


『今のは終末の一端だ』
 今度は暗闇の中から声だけが聞こえる。
「私は問う。あなたは?」
 だが、答えはない。
 どうやら音声が記録されているだけのようだ。
『クリムゾンウェスト、リアルブルー、エバーグリーン。
 三つの世界はこの地で出会い、共に手を取り合った。最初は苦難もあったが、今は生活圏は拡大して不自由はない。
 永遠に続くと思われる繁栄。だが、そうではなかった』
 雨を告げる鳥には分かる。
 これは古代人からのメッセージだ。
 そして、その内容が終末の正体を明かすものだと。
『永久機関の建造。これが完成すれば、慢性的なエネルギー不足も解決する。しかし、これが良くなかった。永久機関の暴走により人々の意識を異世界へ飛ばす効果が現れ始めた。それも時空を越えて』
 どうやら雨を告げる鳥が先程体験したのは、意識だけを別世界へ飛ばされた結果のようだ。
『人々は困惑した。意識が飛ばされて戻れなくなる。必死に足掻くが、戻る術を誰も知らない。永久機関を止めようにも意識は異世界。我々の文明は、文字通り自滅したのだ。
 これを聞く者がいるとすれば、再び永久機関が動き出そうとしている』
 チュプ大神殿の地下にそのような物が?
 雨を告げる鳥が思案する中、メッセージはこのように締めくくられていた。
『頼む……永久機関を壊してくれ……。あれは……動かしてはいけないものだ』

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6258/雨を告げる鳥/女性/14歳/魔術師】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はおまかせノベルの発注をありがとうございます。
終末について描かせていただきました。意識だけが異世界に飛ばされるという状況であり、雨を告げる鳥さんは幕末の仙台に飛ばされていたようです。この後どうなるか。意識だけが異世界から来ていたとすれば、その後の過去が変わる可能性も考えられます。
もしあのままだったら……ちょっと怖い気がしますね。
それではまたの機会がございましたら、宜しくお願い致します。
おまかせノベル -
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ファナティックブラッド
2018年11月12日

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