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『狩って刈って勝って! 』
海原・みなも1252

 秋も深まってくるにつれ、だんだんと寒くなってきた。
 特に朝は冷える。朝日に照らされている落ち葉をニクキュウで踏みしめ、澄んだ水を舌先で舐めた。喉が渇いていたせいか、ほのかに甘みを感じる。
 ――ビュウ、と風が木々を通り過ぎて。
 あたしは赤茶色の毛をフワフワと震わせた。
「コンコン!(凄い! 寒くない!)」
 ……うん。おかしいぞ!


 思い出せば、あの会話から妙だった。
 数日前、アルバイト先から掛かってきた電話。
「秋と言えば、キツネ狩りよね」
「えっ」
「みなもちゃんは狩る側と狩られる側どっちがしたい? キツネって凄いのよ。どちらも出来るの……クスクス」
「いえ、あの、秋と言えばですよね? 他にありますよね? 紅葉とか、柿とか、芸術の秋って言葉も……」
「芸術の秋! その言葉を待っていたの! 次はキツネと芸術の組み合わせでいきましょうね!」
 プツ、ツーツーツー。
「い、嫌な予感しかしない……」


 そして一週間後、学校帰りに意識を失って、今は森の中にいると。
 じたばたしても仕方ない。短い人生ながら、順応性は高い方だ。
(もう毎回心臓が止まるくらい驚いていたら、命がいくつあっても足りないもん)
 今までの経験を基に考えると、あたしはキツネにされて“キツネ狩り”とやらに参加させられている可能性が高い。
 最初にあたしが取った行動は、現状確認。
(自分の姿を確認しなくちゃ)
 二足歩行だったあたしの身体。
 今は犬のように四本足で歩いている。お尻に垂れさがっているフワフワのカタマリが、あたしの足にねこじゃらしのように当たって「お前は獣なのだから、二足歩行などさせぬ」とばかりに揺れているのだ。
 これ、絶対尻尾だと思うけど、どうかするとこのフワフワが視界に入ってきて、物凄く追いかけたい衝動に駆られる……。
 四本の足にはニクキュウがついている。室内で飼われている儚げな子猫のぷにぷにニクキュウと違って、野生的な硬いニクキュウである。土の上に落ちている小枝くらいなら、踏んでもちっとも痛くない便利な相棒だ。
 ……ちなみに小枝はあちこちに転がっていて、ポキポキと踏んで歩くと少し楽しい。
 朝日が昇る方に森を進んで行くと、小さな湖がある。あたしにとっては姿を映す鏡のようなものだ。

 映っているのは、赤茶色のキツネだった。
(やっぱり!)
 顔の横にある筈のあたしの元々の耳は、現在獣毛に覆われている。代わりに、頭の上にシャキンと尖った耳がくっついている。耳の中は黒くて、一色ではない。四本の足も黒色をしていて、なかなかカッコいい。さながら小柄な狩人と言ったところ。

 ――そう、狩人。

 あたしは湖から離れ、木々の間に身を隠した。
 水場は生き物にとって生きていくのに必要不可欠な場所。
 水分補給の場であり、体温を下げる場所であり、憩いの場であり、狩りの場である。
(って、テレビで観たことある!)
「みなもちゃんは狩る側と狩られる側どっちがしたい? キツネって凄いのよ。どちらも出来るの……クスクス」
 不穏極まりないこの発言、つまりあたしは襲う側でもあり、襲われる側でもあるということ。
(一瞬でも気を抜けば、命取りに…………ん?)
 頭についている耳が、聞き覚えのある声を拾った。多分集音機が中に入っていて、隠れている本当の耳に伝わるシステムなんだろう。
 ちなみに、声はするけど、匂いは分からない。嗅覚は変わっていないみたいだ。
「みなもちゃーん! みんなー! 集まれー!」
「ケーン……?」
 ちょっと迷ったものの、声のする方にポトポト歩いていくことにした。
(緊張感どころか、歌のおねえさんみたいなノリだけど……)


 人間のお姉さんの周りには、牛やヤギ、羊、シマウマやオオカミ、ヒョウやライオン、あたしたちキツネなど様々な動物たちがいた。
 この森では、大きく分けて三分類の生き物がいる。「運営(家畜系)」と「狩る側(肉食獣系)」「狩られる側(草食獣系)」だ。キツネは狩る側でもあり、狩られる側でもある。
「今の時期にピッタリ! 秋の大運動会ならぬ、秋の大狩り祭りよ!」
「みんなそれぞれ、動物に応じた能力を一部授けているわ。上手く活かして、全力で狩りをしてね。期間は明日の朝からスタートして、夕刻まで」
「今日は自分たちの暮らしに慣れて。明日から狩られる側は逃げ切って、狩る側はたくさん捕まえてね。成績によって報酬もプラスするからね!」
 あたしは子供の頃にやったドロケイを思い出した。刑事役と泥棒役があって、逃げたり、捕まえたりするあのゲーム。キツネの場合は、両方の役を入れ替えながら行うのだろう。
「コンコン?(捕まったらどうなるんですか?)」
「クスクス。言葉は分からないけど、ニュアンスは伝わるわね。勿論、狩られたからといって本当に食べられたりしないわ。捕まっちゃったコには、罰ゲーム! 狩られる代わりに刈られます!」
 お姉さんの手にはバリカンが無機質に光っていた。
「めえええええええええええええ」
「メエ、メエ、メエエエエエ!」
 羊たちの哀れな鳴き声が響き渡った。モコモコの毛を大いに震わせている。
 想像するだに恐ろしいのだろう。
 あたしも自分の暖かい毛を刈られると思ったら、ゾッとした。
(あたしたちの毛を何だと思ってるの! これだから人間は!)
「残念ながらネズミやウサギのような小さな生き物はいないの。だから草食動物全般を狩られる側とします。家畜でも野生でもね。身体を上から押さえることが出来たら狩り完了。平和でしょう?」
「モオオオオオォ、オオ!(私たち牛の短い毛まで刈る癖に、平和だなんてヌケヌケと!)」
 温厚っぽい牛まで女性らしいアルトの声で怒っている。
 動物同士だからか、何となく言っていることが分かるのだ。
(……ちょっと、楽しいかも)
 でも負ける訳にいかない!

 かくして動物ドロケイ、もとい、秋の大狩り祭りがスタートしたのだった。



 つづく……かもしれない?




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
【1252/海原・みなも/女/13/女学生】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お久しぶりです。
 ご依頼いただいた時に「ドロケイみたいだなあ」と思い、子供の頃のワクワク感を思い出しながら書かせていただきました。
 おまけノベルもお楽しみいただけたらと思います。
 ご依頼ありがとうございました。
東京怪談ノベル(シングル) -
佐野麻雪 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年11月12日

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