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『A piece of cake 』
ルトガー・レイヴンルフトka1847

 晴れ渡る空の青さが、秋の深まりを感じさせる。
 ルトガーはそこに雲をかけるかのように、白い煙を吐き出した。
「仕事の後の一服は格別だな」
 月並みな台詞だ、と我ながら思いつつ、足の向くままに歩き出す。
 依頼を受けて赴いたこの村は、サルヴァトーレ・ロッソからの移民が多く住んでいた。
 ふと、村の住民たちが一か所に集まっているのに気付いた。
「どうした」
「ああ、ルトガーさん」
 顔見知りの村の代表が機械油の付いた顔を上げた。
「いや、ちょっとろ過装置の調子が悪くて」
「ろ過装置?」
「ええ。温泉水を川に流す前に通しているのですが、フィルターが詰まっているのか、配管が傷んだのか……やっぱり分解するしかないかな」
 最後は独り言だ。
 が、その言葉を聞いたルトガーの目に光が宿る。
「分解するのか」
 どこか威厳を感じさせる落ち着いた声はいつも通りだったが、煙草をもみ消す手は何やら落ち着かない。
「そうですね、一度クリーニングもしておきたいですし」
「手伝おうか」
 代表は慌てて手を振る。
「いや、大丈夫ですよ! そこまでハンターさんにお願いするには」
「構わん。追加サービスだ」
 そう言いながら、ルトガーはもう機械の傍に片膝をついていた。
「で、どこから始めるんだ」

 この村には、ロッソからリアルブルー産の機械が色々と持ち込まれている。
 機導師のルトガーは、以前から異界の機械が気になっていたのだ。
 かといってむやみと触らせろと言うのも、少々気が引ける。
 それにこれまでは依頼をこなすのに忙しく、仕事を終えるとすぐに村を発っていた。
 今回は次の予定もないので村に逗留していたのだが、まさに天の導きか精霊のお恵みか。
 太いパイプ、大きなタンクと計量装置、無数のバルブという、見るからにそそる機械の分解に立ち会えることになったのだ。
「じゃあまずはフィルターから確認しましょう」
 代表はドライバドリルを使っていくつかのビスを外す。
「……少し貸してもらえるか」
「え?」
 ルトガーはいかつい顔のまま、目だけは少年のようにキラキラと輝かせて手を出した。

 それからは実に楽しい時間だった。
 見たこともない工具を使い、見たことのない機械を分解し、組み立て直す。
 一つ一つをもっとじっくり見られたら良かったのだが、そこは一応我慢した。
「ルトガーさんは手先が器用なんですね。工具の使い方も僕より随分うまい」
「そういうお前さんも、ただの植物オタクじゃなかったんだな」
「ははは。元々ロッソでも何でも自分でやらないと、人手もなかったですからね。今はもっとです」
 こんな話をしているうちに、分解清掃の作業は終わり、ろ過装置は快調に動き始めた。
「やっぱりフィルターだったな。だが配管もそのうちだめになるだろうし、部品の調達を考えておいたほうがいい」
 ルトガーは名残惜しそうに工具を置いて立ち上がる。すでに日は傾き始めていた。
「とにかく今日はありがとうございました。あちらでお茶でも如何ですか」
「そうだな。お言葉に甘えよう」
 それから暫く、村にある機械の話などをしつつお茶の時間を楽しく過ごした。

 そこに泣きそうな顔をした10歳ぐらいの女の子が現れ、ルトガー達を見渡す。
「お願い。ミチーノを助けて」
「ミチーノ?」
「鳴いてるの。こっち」
 袖を引っ張られるようにして連れて行かれた先は、ついさっき組み立て終えたばかりのろ過装置だった。
「ここ。鳴いてるの。出られなくなったみたい」
 耳を澄ませると、確かに赤ん坊の泣き声のような声と、何かをひっかくような音が聞こえてくる。
 猫が入り込んだらしい。
「また分解ですか……」
 力なくつぶやいた代表の肩を叩いて、ルトガーはどこか嬉しそうに工具を手に取った。

 今度はルトガーが主導して、手際よく部品をばらしていく。
 装置の中は暗く、温泉水が通る配管は程よく温かく、猫にとって最高の昼寝場所だ。
 今までも入り込んでいたのだろうが、分解した際にちょっとした配管の位置ずれが起き、出口が分からなくなってしまったのだろう。
「可哀そうだが、侵入防止に金網を張っておいた方がいいだろうな」
「そうしましょう。出られなくなるほうが可哀そうですから」
 猫を抱いた女の子が、ルトガーを見上げた。
「ありがとう、おじさん」
 ルトガーは女の子に向かって、茶目っ気たっぷりに両手を広げて見せた。
「何、ケーキを一切れ食うぐらいの簡単なことって奴だ」
 それから女の子の腕の中の猫を、ちょいちょいと撫でた。
(今度俺が来たときには、別の機械の中で昼寝するんだぞ)
 猫は彼の心の声を知ってか知らずか、ゴロゴロと喉を鳴らすのだった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka1847 / ルトガー・レイヴンルフト / 男性 / 50 / 人間(クリムゾンウェスト) / 機導師 】

 登場NPC / 依頼で滞在した村の代表、村の少女、少女の猫ミチーノ

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はノベルのご依頼でルトガーさんにお会いできて、大変光栄です。
おまかせノベルということで何を書こうか大いに迷ったのですが、OMCのイラストなどを拝見してイメージを膨らませました。
お気に召しましたら幸いです。
ご依頼、誠にありがとうございました。
おまかせノベル -
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ファナティックブラッド
2018年11月12日

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