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『この愛すべき夜に 』
ヴァージル・チェンバレンka1989

 空が青から黒に変わるころ、地上の裏街も姿を変える。
 薄汚れた街並みは黒く塗りつぶされ、無数の明かりを灯し、さながら星空のようだ。
 その中の一軒の店から、どよめきが漏れる。
「今夜は勝負の女神が俺にウィンクしているようだな。そろそろ諦めたらどうだ?」
 ヴァージルはカードの横に積み上げたコインを指で弄びながら、向かいに座る男に微笑む。
「いや……もう一勝負だ」
 どうやら脳まで筋肉が占めていそうな男が唸った。
 テーブルを囲む他の客は面白がって、男をはやし立てる。
 ヴァージルはしょうがない、という表情を作って、慣れた手つきでカードをシャッフル、カットして山を男の前に。
 男は疑わしそうな目つきでカードの山を見比べ、決まった方法で入れ替えると指で叩く。
 ふたりはしばらく無言のまま、チップとカードをやり取りする。
 やがて男は喉仏を苦しそうに上下させたかと思うと、カードをテーブルに叩きつけた。
「くそっ! 覚えてろよ!!」
 拍手とため息、はやし声と笑い声。
 ヴァージルは周りの祝福に、人好きのする笑顔でこたえた。
 そこにこの店の女主人がやってきて、ヴァージルの肩から首に白い指を滑らせると、耳元に唇を寄せる。
「ちょっと勝ちすぎたわね。裏口から帰んなさい」
「店には迷惑をかけないようにするさ」
 頬に口づけを返すついでにそう囁くと、女主人は魅惑的な微笑を浮かべて離れていった。

 賑やかな店の中を縫うように歩き、裏口から通りに出る。
 すると小さな影が近づいてきた。
「おじさん、お花を買ってくれませんか」
 窓から漏れる明かりを見ると、10歳にもならない少女が花籠を抱えているのが分かった。
 ヴァージルは軽く肩をすくめると、小銭を握らせる。
「もう遅い。花もしおれるだろう。今日はこれで勘弁してもらえ」
 そこまで言ったところで、背後に殺気を感じて身をひねる。
 少女を庇うため、動きが制限された。ヴァージルの耳元ギリギリを光る刃が掠め、切れた髪が数本、宙を舞った。
「とことん野暮な奴だな。だから勝負の女神に嫌われるんだぞ」
 バックステップで戸口から距離を取る。
 相手は3人。そのうちのひとりは、さっきヴァージルにカードで散々な敗北を喫した男に違いない。
 初撃こそなかなかの踏み込みだったが、どう見てもただのチンピラだ。
 ヴァージルの軽口には何も答えず、取り囲むように位置どる。
「さて、軽い運動で酔い覚ましぐらいにはなるか?」
 闇を切り取るように射す店の明かりが、ヴァージルの顔に浮かぶ冷たい笑みを浮かび上がらせる。
 カードの時とは全く違う微笑。
 突っ込んできた男を足払いで転がし、別の男の鼻っ柱に拳を見舞う。男は吹き飛び、別の男にぶつかった。
 非は相手にある。それは明確だ。
 だがヴァージルは「反撃」を愉しんでいた。
 酒も、女も、賭け事も、拳に籠る熱さを拭えない。
 勝負はあっという間に決した。
「どうした? もう終わりか」
 不満そうなヴァージルの呟きも終わらぬうちに、襲撃者たちはそれぞれ転がりそうに逃げていった。

「酔い覚ましにもならんな」
 軽く肩を回し、ヴァージルは斜め後ろに向かって僅かに顔を振り向ける。
「なんだ、逃げなかったのか」
「ひっ!」
 さっきの花売りの少女だ。
 はした金とでも引き換えに、裏口から出てきたヴァージルに声をかけるように命令されたのだろう。
 涙を浮かべながら震える少女に、ヴァージルは屈みこんで顔を近づける。
「俺をひっかけるとは、悪い女だな。今夜はこれ以上商売できないようにしてやろうか」
 そう言いながら、胸元から取り出した紙幣を少女の手元に押し付ける。
「あるだけの花をもらおう。それで今日は店じまいだ」
 ごめんなさい、ありがとう。
 そんなことを言いながら、少女はあるだけの花をヴァージルに押し付けて走り去った。
 その背中が角を曲がって消えるのを見送り、ヴァージルはまた店に戻る。
 あきれ顔で出迎える女主人に、少女から買った花を恭しく差し出した。
「命の恩人にお礼だ」
「何言ってんだか。こんな時間に花なんて、もうしおれちまってるじゃないの」
 ヴァージルは微笑むと、花束から1本の薔薇を抜き出して女主人の髪に飾る。
「じゃあこの花は美人の傍で最期を迎えられるってわけだ」

 善と悪、光と闇。美と醜、夢と現実。
 ここには全てがある。ここにあるもので人生は彩られる。
 人は、どちらかだけでは生きられないのだ。
 愛すべき夜に、愛すべき街に、乾杯を。
 ヴァージルはグラスを掲げ、一息に飲み干した。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka1989 / ヴァージル・チェンバレン / 男性 / 45 / 人間(クリムゾンウェスト) / 闘狩人 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度のご依頼、誠にありがとうございます。
おまかせノベルということで、あまりゲームのほうでは触れることができない、大人の世界(?)の日常を書いてみました。
ヴァージル様のイメージから大きく逸れていないようでしたら幸いです。
おまかせノベル -
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2018年11月13日

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