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『無人島奇譚・3 』
海原・みなも1252

●霧の海
 草間・武彦ともに海原・みなもが無人島の調査を始めて、予定日数は半分も過ぎていない。しかし、みなもは非常に疲労を覚えていた。
(ここにあたしたちを呼んだ存在があるなら、何をさせたいのしょうか?)
 武彦の言葉からすると、ここの霧も、猫も、夢を見せた存在も他のモノも、島の現状に影響し、二人の行動に影響を与えているという。
(外の神といってもどのようなモノかよくわかりません)
 みなもの感覚では、できれば出会いたくないモノである。武彦も同様の意見のようだった。
(猫は? 何もしてきていないです?)
 みなもが考えている間、武彦は調査した家で見つけた地図を眺めている。
「港はもう一か所あるみたいだな」
「島に一つではないのですか?」
「もしもの時、使える所を考えておかないと危険だろう? 近年は忘れられているのか、島民しか知らない可能性もある」
 みなもは地図を見る。
 港の近くに集落があり、道が伸び、別の港につながっている。
「集落はもっとあって、道もあるのですか?」
 霧が濃いとはいえ、大きめな道は歩いているため気づかないはずはない。
「住民の数に対して家が足りないわけだ。ここに夢が混じっている、つまり、邪魔や招きが……いや、科学的に考えてみよう。そうだな、意志力勝負ってことだ!」
 武彦は明るい声を出すと表情も明るくなる。
 みなもは驚いて武彦を見つめる。
「そんな顔するな!」
「あ、え? 科学的なのですか?」
「意志は現実だ! 根性だ!」
「ええっ!?」
 みなもは目を見開いた。意志は根性につながるか否かをグルグル考える。
「ふふ……あはは……草間さん、それは、ちょっとないです」
 みなもは笑った。笑い声を自身で聞いてさらに笑う。
 緊張の糸がほぐれ、胸の奥が温かくなる。
 武彦も笑っている。しばらくすると真顔に戻った。
「いや、本気だぞ? この状況を打破するには、強い意志で進んでいかないといけない。根性だ! そして、根性で封印を、いや、形あるものに対して退去を命じる!」
 みなもは霧がざわめいたように感じたため、外に目を向ける。
 白い霧はうねうねと漂っている、意思があるように。
 武彦の言葉を歓迎するもの、拒絶するもの、どちらもいるような気がした。
(これは水です……少しでも、あたしも……役に立てるかもしれません)
 意志を強く持つこと、それは重要だとみなもは受け入れた。

●海と山の神社
 武彦が行くつもりだったのは神社だ。集落の奥の山ともう一つの港の側にあるのだ。
 離れ離れにならないようにみなもが明かりを手に、武彦のポンチョの裾を持ち進むことになる。
「振り返ると違うのがいるというのがセオリーか」
「や、やめてください! あたしが危険な目に遭っていますから」
「何かあったらすぐ声をかけろ」
「はい!」
 集落の主な道を歩く。ひやりとした霧や雨がまとわりつく。
(あっち行ってください! 邪魔するならば、何もできません)
 みなもは霧に働きかける。減るかはわからない。
「前回は山にぶつかった。住民の数を考えると家が少ない。戸籍のごまかし、行方不明者のカウントだけでは説明はつかない。逃げた人も恐怖から口をつぐむ。一方で、島から離れられない人もいただろう。肉親が消えたり、あれを主導していた人間どもとかな」
「何のために別の世界の神を呼ぶんですか?」
 みなもの質問に武彦は苦笑する。
「結局、そいつらにとって都合のいい何かああったんだろう」
 世界が激変するとしても呼びたいものなのか、それが目的かとみなもは考える。
「道……道、道はあるぞ!」
 武彦がつ気合を入れるように言い、道を進む。みなもも地図からイメージした道を思い描く。
 そこには舗装されていないけれども道があった。
 そこを登っていき、途中で道を曲がり、山の神社に着いた。参道が何十メートルか続き、両脇には祠がいくつも並んでいる。様々な神様を祭っている場所である。
「これは……壮観ですね」
「まーな。で、何を祭っているのか、主神は?」
 二人は入り口から一つずつ見ていく。稲荷や地蔵と言ったオーソドックスなもの、この地域特有の物、どこの存在かわからないものまで幅広い。
 確認し終わり、海の神社に向かう。
 もう一つの港に近づくと潮の匂いが強くなる。まるで海の底にでもいるようだった。
 みなもは思わず、足元を見た。足元がうねっているような気がしたのだ。
 背後で猫が鳴く声がする。
「草間さん……」
「暗いな」
 武彦は時計を確認している。霧で視界が悪い上、夜になるのは避けたい。
「……なんか近くなった感じで……」
 夢のことは知っているため、武彦の表情に緊張が走る。急いで調査することにする。
 海の神社は本殿がある。先日見つけた神社の縁起はこちらに由来するのだろう。本殿はあるが、山の神社と作りは同じようだ。
「海だから、さすがにこっちの方が立派だな」
 みなもは「そうですね」と答える。
 みなもの脳裏に地下道のような暗い道が浮かぶ。
「みゃーん」
 遠くで猫の鳴き声がしたとき、みなもの脳裏の画像は消えた。
 猫たちの動向も気になるが、一刻も早く調査を終えたいと二人は祠の神を確認しつつ、本殿に向かう。豊かな海の恵みを願う物、海の安全を願う物など一般的だ。その中に、山の神社同様、妙な名の物もあった。
「夢の世界のための入口があるならこの社殿か?」
 武彦は柏手を打ってから、扉を開け、中に入る。中はがらんとしてご神体すら残っていなかった。
「雨宿りにはいいよな」
「そうですね」
「……それより、地下に下りる所は……」
 板は外れるが地下室があるわけではない。
「まさか、この祠のどこかに階段があったりするのか?」
 二つの神社にある祠の数を考えるとうんざりする。
 みなもは一つ気になっている祠があり、港に戻る際に近寄る。
 猫が悲鳴のように激しく鳴く。
「一旦戻ろう。ここは何の祠か覚えておけ」
 武彦は早口で言うとみなもの手を引っ張る。みなもはわけが分からないままついていく。
 港から離れるとみなもはほっとした。南方の人魚の血筋であるため海は近しいが、それでも海から離れてほっとした。
 武彦は山の神社に向かう。そこで海側の神社でみなもが気になった祠と同じ位置に当たる祠で調査を始めた。
「なんであちらでは調査しなかったんですか?」
 みなもはなんとなく自分が信用されなかったかのような苛立ちを覚えていた。
(おかしいのです、なんででしょう。草間さんが何か気づいたのだから、いいはずなのに)
 みなもはもやもやする。
「お前も俺も信用ができないんだ」
「え?」
「誰かが呼んだ何かに操られている感覚があるからな……なら、わざと外してみる……いや、それも見透かされていたら」
 武彦は頭を掻いた。こちらも苛立っている様子だ。
「すみません」
「お互い様だ。さてと、地下があるといいんだけどな」
 板をずらし、レバーのような物を武彦は引いた。何か動く音がした。
 祠の前に行くと、地下に続く階段があった。
 人が一人通れる幅の地下に続く階段。視界が利かないだけでなく、幅や高さも圧迫感があり恐怖を誘う。
 その一方で心休まるような不思議な空気をみなもは感じた。
「休もう」
「夜が来るんですね」
 拠点に足早に戻る。拠点はなぜか安心ができる場所にいなっていた。
 それも意志力なのかもしれなかった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1252/海原・みなも/女/13/女学生
A001/草間・武彦/30/草間興信所所長、探偵


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 第三弾ということで、先に進めるようになりました。
 じわじわと進みながら、みなもさんが見た物や緊張感、頑張る様子が伝われば良いと思います。
 いかがでしたでしょうか?
 ありがとうございました。
東京怪談ノベル(シングル) -
狐野径 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年11月13日

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