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『詩天鍛冶体験記 』
ソフィア =リリィホルムka2383

 ソフィア =リリィホルム(ka2383)が辺境ドワーフの地下城『ヴェドル』にある工房『ド・ウェルク』で工房を見学してから数週間後。
 知り合ったドワーフからある情報を入手する事ができた。
 何でも東方――エトファリカ連邦国に知り合いの刀鍛冶がいるらしく、訪ねてくれれば案内してくれるという。
 ドワーフと東方の刀鍛冶が交流を持っている事は一部の報告書で伝えられていたが、ソフィアがその事実に関わる事は、初めての近い。

「いんやー、ようお出でなすったなぁ」
 東方――詩天の若峰に着いたばかりのソフィアを出迎えたのは、見るからにみすぼらしい男だ。
 麻布を貼り合わせたような服にボロボロの草履。無精髭が生え放題で、腰には手ぬぐいを巻いている。
 そんな男を前にしてもソフィアは敢えて礼儀を弁えた。
「今日は招待してくれてありがとう」
「おんや? オラにそんな例はいらねぇだよ。なんで、そったら例ばすっとか?」
「姿形だけで刀は打てませんから」
 ソフィアは、断言する。
 何故なら、男の腕には細かい火傷が数多く刻まれていたからだ。
 刀鍛冶にとって火傷は付き物。炎で熱した刀を自らの魂を封じ込めるように鎚を叩く。そこで腕に刻まれる傷は、刀鍛冶にとって勲章だ。
 それは同じ刀鍛冶であるソフィアにも理解できる。
 男はソフィアの答えに満足そうな笑みを浮かべる。
「オラは三吉。これでも腕にはちったぁ自身があるべ」


「詩天では有名な符術士がいっぱい出てるが、刀もそれに負けてねぇだよ」
 これは三吉の弁であるが、ソフィアも工房にある道具をみれば一目で分かる。
 手入れの行き届いた工房。
 大槌も小槌も金床も仕事が始まるのを今か今かと待ち望んでいる。
「へぇ、こりゃ本当にいい感じだ。小小槌も使い込まれてる」
「なるほどなぁ。『どわーふ』達が言ってた通りだべ。確かに腕の立つ鍛冶屋みてぇだな。早速刀を……と行きたいんだが、ちょっと急ぎ仕事さ入っとってな」
「仕事?」
 腕を組んで悩む三吉。刀鍛冶の仕事で悩むのであれば、ソフィアの興味を引く話かもしれない。
 ソフィアは思わず前のめりで聞いてしまう。
「仕事?」
「ああ。ちょっと見て見るか?」
 そう言って三吉が奥から出してきたのは東方製の鎧の一部だ。
 作られた年代はかなり古そうに見える。
「これは肩当てかな? でも、変わった作りをしているなぁ」
 ソフィアは肩当てに触れてみる。
 金属製の板と動物の皮をニカワで固めた板が交互に張り合わされている。繋いでいる紐は犬の皮だろうか。
「そんだ。こりゃもうかなり古い鎧だ。偉い武士の方が先祖から伝わった鎧らしくてなぁ。何とかしてこいつを直してぇて持ち込んできたんだ」
 三吉によれば、誤って息子が槍で肩当てを突いてしまったようだ。
 その話を聞いてソフィアは肩当ての傷を興味深く観察する。
 おそらくこの製法であれば刀の一撃は途中で止められる。力が分散するからだ。だが、槍は違う。一点で付かれる事で札同士の間を貫通する。古い製法という事は戦場で刀が主力だった時代の甲冑だろうか。
「鉄の札はオラが何とかできんだけんど、この革細工はなぁ。古いもんだで材料集めから苦労するべ」
 詩天でこうした甲冑も減っている事から職人の数も減ってしまったのだろう。
 だが、ソフィアとしても技術が廃れる事は悲しい事。創造はゼロから生み出すばかりじゃない。後世へ技術を継承する事も明日の創造へ繋がる。
 そう考えたソフィアは、思わず言ってしまった。
「あのさ。わたしが革の札を作ろっか?」


「おおおお! 見事だべっ!」
 数日後、三吉の手には修復された肩当てがあった。
 ソフィアは三吉の話を聞いた上で、肩当ての材料をチェック。革の材料が鹿の革と分かった段階で近くの山へ鹿狩りに出かけた。また周辺の山村に出向いて鹿の革を買い取って回る。
 そうして集めた革を煮詰め、ニカワなどで固めて板状に加工する。本物もあるのだから、作るのはそう難しい事じゃない。
 あとは着色した後に三吉の作った鉄の札と交互に重ね合わせて、紐状にした犬の皮で止めれば良い。少々時間はかかったが、何とか形にする事はできた。
「いんや、鍛冶として良い腕って聞いてたが、革の細工もできたんか」
「好きだからね。これでも木工や彫金もやるよ」
「へぇ〜! おめぇさん、てぇしたもんだなや」
 三吉は驚いた。
 ソフィアもハンターとして褒められる事はあるが、鍛冶や革細工で褒められる事は多くはない。それも同業者に褒められるのはちょっと嬉しい。
「褒めても何にもでねぇぞ」
「お礼になるかはわかんねぇが、オラの仕事場で刀鍛冶をみていくといいべ!」
 ご満悦の三吉。これでソフィアも思う存分、東方の刀について学ぶ事ができそうだ。
 が、ここで三吉は気になる一言を口にする。
「さすがに東方一って訳にはいかねぇども、ばっちしみてってくれ」
「東方一? じゃあ、どこが東方一なの?」
「そらおめぇ……北にある『天目』に決まってるべ」


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2383/ソフィア =リリィホルム/女性/14/機導師(アルケミスト)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はノベルの発注ありがとうございます。
今回は詩天で刀鍛冶について紹介を受けたお話を描かせていただきました。といっても、ノベル中では革細工について触れさせていただきました。ちょっと鍛冶とは違いますが、東方の重要な技術を学べたと考えていただければ幸いです。
次は何処へいくか、ちょっと楽しみ……って、もう書いてますね。
また次の機会がございましたら、宜しくお願い致します。
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近藤豊 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年11月15日

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