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『無ければ自分で作ればいい! 』
aa2518hero001

 能力者と第二英雄が任務に出ている時第一英雄は何をしているのか。  
 想像してみたことは有るだろうか。
 幻想蝶の中にいるかもしれないし、自宅に残されているかもしれない。
 たとえば自宅で雑誌のスイーツ特集など読みながら暇を持て余しているかもしれない
『禮(aa2518hero001@WTZEROHERO)』もそんな状態だった。
 ソファーに寝そべってひじ掛けを枕にする。少し沈み込んで雑誌を胸の上におくと、ふーっとため息をついた。
「ケーキ……」
 話は突然であるが現在、禮はケーキ欠乏症に陥っていた。
「タルトでもパンケーキでもダメなんですよね。ケーキが食べたいんです」
 ふわふわのスポンジ、乗せられた生クリーム、宝石のようなフルーツの数々。そんなケーキを禮はもう六日ほど口にしていない。
「はぁ、まさかあんなに早くなくなるなんて思いませんでしたから」
 禮は恨めしそうに冷蔵庫を見た。
 事の発端はこうだった。能力者が一週間の長期任務に赴くとなったとき任務の内容から第二英雄を選択した。問題は誓約にもなっているケーキだった。
 一週間に一度の誓約がある限り能力者は禮にケーキを食べさせなければならない。だが自分はいない。だったら作り置きしておけばいいではないか。
 そうホールでケーキを焼いて行ってくれたのだが。
「はぅ、美味しかった」
 ざんねん、それはお留守番初日に禮の胃袋に消えてしまった。
「お店のケーキも美味しいのですが、なんとなく違うのですよね」
 そううつぶせになって足をパタパタさせながら肘掛にほっぺをこすり付ける禮である。
「それに暇でもあります」
 一応能力者たちは本日中に帰宅する予定にはなっていたが、暇とケーキへの愛が重なっていても立ってもいられない様子の禮。
 そんな禮が雑誌の中にとある特集を見つけた。
『大切な人におくろう手作り特集』
「こ、これは」
 思わず起き上がった禮。非番なので寝て起きてそのままの髪の毛がみょんっと跳ねた。
「これはよい案です」 
 禮が反応したのは、大切な人におくろうの部分ではなく『手作り』の文字。
「無ければ作ればいいんです。なぜ思いつかなかったのでしょうか」
 そう立ち上がると能力者お気に入りのレシピ本を手に取る。
 先ずは材料の確認から。
「あ……牛乳」
 昨日禮が飲み干してしまった。割と好きなのだ。牛乳。
「買い物は必須みたいですね」
 必要な物をメモしていざ買い出しへ赴く禮。
 スーパーでたいていのものはそろう。ただ禮の小柄な体に大量の荷物は重たかった。
「やっとつきました」
 家に帰ると台所に材料を並べる。
「えーっと、卵、砂糖。バター、牛乳。生クリーム」
 次に機材をそろえる。
 材料がそろったらいよいよ作成である。まずは材料を計算して皿に分け。生地を作る。唸るミキサー
「これは意外と簡単にできそうですね」
 そう鼻歌交じりに足台をトントンとつま先で叩くと、十分空気を含んだ生地からミキサーを離そうとするが。
「ふわっ」
 電動ミキサーに絡め捕られるように生地が舞いあがり禮の顔にかかった。幸い髪の毛にべったりくっつくくらいなので作業に支障はない。
「ミキサーの電源を切ってから持ち上げないとダメですね。わかりました」
 頷く禮は生地を型に流し込んでいく。
「あれ? 生地が足りませんか?」
 欲張って大きな金型を用意したのだが半分も満ちてない。
「追加しますか」
 また記事を作り始める禮。同じ作業なので考える余裕もでてきたのだろう。
「ホイップクリームはチョコレート味のものも用意しましょう」
 そう思いながら型に流し込んだ生地をオーブンに突っ込む禮。このご家庭にはどんなサイズのケーキでも焼けるように結構いいオーブンが存在するのだ。
 オーブンの中から漏れる赤い光をうんうんと頷いて見送り、禮は買い足したチョコレートをさっそく砕いていく禮。
「湯銭? 温度? とりあえず溶ければいいのでは」
 電子レンジにかけようとする禮。
「あ。焦げ臭いですねやめましょう」
 電子レンジからチョコレートを取り出そうとする禮。しかし今まさにつかもうとしているチョコレートの取り皿は熱く熱せられている。
「あつい!」
 すぐに水道の水で指を冷やす禮。
「うう、お菓子作りも大変です」
 そうホイップクリームを泡立てようと電動ミキサーを突っ込む禮。
「きゃーーー、またクリームが爆発して」
 同じミスを繰り返し今度は顔にホイップクリームをぬるのだった。
 そんなこんなで記事が焼き上がり。それを取り出し冷まし、クリームを塗るとなんとなくケーキらしいそれが出来上がる。
「おお!」
 言い知れぬ達成感に酔う禮である。思わず自分に自分で拍手した。
「あとは味なんですが」
 自分の顔のサイズよりはるかに大きいケーキに直接フォークをさす禮。大きく切り取り口に運び、もっちゃもっちゃと咀嚼する。
 次の瞬間首をかしげる。
「やっぱり何かがちがいます」
 その時玄関で扉の開く音がした。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『禮(aa2518hero001@WTZEROHERO)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております。
鳴海でございます。
今回はケーキが好きな禮さんのエピソードを可愛くかけたらいいなぁと思ってこんなお話にしてみました。
おまかせノベルは難しいですね。特に文字数が……。
短いお話ですが日常を補完するエピソードとして気に入っていただけたら幸いです。
それではまた機会がありましたらよろしくお願いします。

おまかせノベル -
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2018年11月16日

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