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『灯籠アパートの1015号室の螺子巻きドール 』
レナード=クークka6613


 君は知っとるかなぁ?
 この世界で目を覚ましたかったら、こ……怖くても一度、お墓に入らなきゃならへんのやで。

 ……ぼぼ、僕は別に怖がりちゃうからね!!!
 おん! そやねぇ、皆がいれば怖くない――やんね。



**



 僕はふかしたお芋の様なほくほくさで、ベルトポーチから抜いた音符の鍵を鍵穴に挿した。

 〜〜♪♪♪

 えへへー、何度聞いてもええメロディやんね。
 鍵を開けた時のこの音と、楽譜の彫刻が施されたドアノブレバーは、僕のお気に入り。

 街から帰宅した僕は空色のスリッパを足に引っ掛けて、それをぱたぱたと弾ませながらリビングへ入った。真っ白な天井さんが僕の気配を感知して、魔女さんの釜を掻き混ぜる様なくるくるさで、ゆーっくりと群青の星空を浮かべていく。ふふ、天井さん、今日はしっとりとした気分なんかなぁ? 映る空の色は天井さんの気紛れなんやけど、僕はそれが毎回楽しみだったりするやんね。

「よいしょっと」

 僕は腕に抱えてた紙袋をキッチンのカウンターに下ろした。えへへ……僕の心は浮ついておって、意識せんでも喉の奥から鼻歌が流れてきてしもた、やんね。

「ふふふー、お菓子ぎょうさん買ってこれたでー。これはジンジャークッキー通りのお店で買うたお化けのスイートポテト。髑髏のマシュマロに、目玉の白玉……んわ、どこ見ても目が合うやんねー……」

 僕は目玉……やなくて! 白玉を、そっ、と、マシュマロの後ろへ置いた。べべ、別に怖かったんちゃうで! ――んっ、んんっ!(咳払い)

「えっと、このカップケーキは魔女さんの茶房で買うたやつやね。これは鶯さんのワゴンショップで見つけた空色の鳥さんの水飴と……青薔薇の水飴、やねぇ」

 僕は紙袋から水飴を取り出すと、棒を摘まんで星空に……ゆうても天井なんやけど、その色濃い光に水飴を翳した。わあ……思った通りやわぁ。とっても綺麗やんね。

 星の煌めきに向かって羽ばたく鳥さん。
 ……。
 青薔薇は朝露を含んどるように、ほんまに色美しい。

「鳥さんを見上げる青薔薇は……何を想うんやろか」

 僕は鳥さんと青薔薇の棒を揃えると、水飴が壊れんよう慎重にカウンターへ置いた。……はっ、せや!

「明日はレッスンの日やし、これ、彼にプレゼントしよかなぁ。買うてきたこのお菓子も、分けあいっこ出来たら嬉し――、っ!?」

 Σほあ……!?

「あ、あかん……」

 ううう、またやってしもた。背中の螺子、巻いてもらうん忘れてたやんねー……。さっき烏天狗さんと擦れ違うた時にお願いしとけばよかったで……。僕は螺子巻き人形やから、これ忘れるの一番あかんのに……う、うう……。

 ……また……彼に、馬鹿にされてまう……なぁ……、……。…………。





 ………………。





「――あんた馬鹿なの?」

 目覚ましは、耳に慣れた透明な声やった。開けた視界と取り戻した身動きが、止まってしもうてた僕の時間を進める。

「何度同じことやってんの、ほんと」

 隣から、呆れたような――えっと、ちゃうなぁ。ほんまに呆れとるんやと思う……ううう。

「ご、ごめんなぁ、ついうっかりしてしもて……」
「……他に言うことは?」
「ほあ……? ……あ! えっと、おおきにやんね!」
「ん」

 彼は滅多に……ちゅうか、僕は一度も見たことないんやけど、笑顔を浮かべたりはせぇへん。せやけど、僕の言葉に彼が満足そうな目許で頷いたんはわかった。

 ……あれ?

「どうして、此処におるん?」

 僕はそこで漸く気が付いた。

「……今日、レッスンの日でしょ。時間になっても部屋に来ないから電話したけど出ないし。わざわざ様子見に来てあげたらあんた止まってるし」
「め、面目ないやんね……。でも、鍵はどうしたん?」
「開いてたよ。不用心すぎ」

 ううう……。

「まあ、もう慣れてるけどね」
「あはは……手の掛かる住人で申し訳ないやんね……」
「……」
「……? あっ、何時もおおきになぁ」
「……それ、なに?」

 彼の目線を辿ると、カウンターにはお菓子の山。僕が昨晩、紙袋から取り出したままやったんやね。……んん? 僕、カップケーキの前に白玉置いたんやっけ? ……あれ?

「どうかした?」
「あっ、ううん。何でもないやんね。えっと、よかったら一緒に食べへん? 螺子のお礼もしたいやんし」
「後でね。レッスンしてから。今日はもうココでやるから、早く仕度して」
「えっ!? あ、わ、わかったやんねー!」

 彼に促されて、僕は慌ただしくスリッパを鳴かせながら洗面台へ向かった。先ずは顔洗うてしゃっきりせんとね!

 ……えへへ。
 歌のレッスンが終わったら、彼――天邪鬼君にあの水飴をあげよう。確か、青薔薇は“夢叶う”お花、なんやんねぇ。ふふ、夢叶う、かぁ。





 僕の夢も、天邪鬼君に教えてもろたお歌に乗って、何時か届くとええなぁ。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka6613 / レナード=クーク / 男性 / 外見年齢:17歳 / 空鳥螺子巻きドール】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの愁水です。
空鳥様のほのぼの奇譚(になっているといいのですが)、お届け致します。

当初、空鳥様は螺子巻きドールではなく、フランケンシュタインでした……( ですが、書いていてどうもしっくりこず、と言いますか全くしっくりこず、漸く螺子巻き人形で落ち着いた次第です。
灯籠アパートの「モンスター」とは少々毛色が違うかもしれませんが、書いていてとても楽しかったです。
青薔薇の君は最後の最後まで天邪鬼にするかセイレーンにするか迷いました。

白玉や空鳥様の夢など、幾つか謎を残すノベルとなりましたが、少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
此度のご依頼、誠にありがとうございました!
おまかせノベル -
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ファナティックブラッド
2018年11月19日

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