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『 たんなる雑談 』
サルヴァドール・ルナフィリアaa2346hero002

『サルヴァドール・ルナフィリア(aa2346hero002)』がこの世界に顕現したとき。初めてこの世界の事を知った時。記憶のすべてを失ってはいなかったために逆に苦労があったという。
 動物は言葉を話さないし、草木は一日では背丈が変わらない。
 大気にはマナが無いし、この世界のリンゴは途轍も無く美味しかった。
 しかも一番驚いたのはリンゴのケーキを焼けるだけの道具がすでに家にそろっていて、きじをこねくり回す時間があれば作れてしまうというのが何とも。
「いや、すまなかったそれは冗談じゃ。わしが最も驚いたのはかの有名な有翼の女王の国。その国を守る一廉の英雄が、休日はソファーの上でぼけーと茶を啜っているところじゃな」
 サルヴァドールは記憶を持つと言っても断片的なものに過ぎない。
 またその記憶の断片に、時代が大きく動いたときに見た光景も含まれるため、千年程度生きたのではないかと推測された。
「一つの国が起き、栄華を誇り、衰退し、滅び。朽ち果てる。その過程だけでも500年はかかる」
 サルヴァドールは告げた。
 歴史を見てきたと。
「見てきたと言っても」
 両目はただ人よりも不自由で扱いづらい。色彩も輪郭も通常の人間のようには感じ取れない。だがそれ故に多くの事を感じ。見るよりも観ることができたのだ。
「基本的には森にすんでおったが、それだけではこの世の理はひも解けぬ。例えば魔術の触媒。例えば世界情勢、例えば流行りの病や飢餓、災害について。わしはじっとすべてを見てきた」
 ときに手をかし、時に傍観しじっと見てきたという。
「ちなみに、そやつとのつながりの記憶はない」
 告げるサルヴァドールは第一英雄をゆびさすとカカッと笑った。
「敵であったかもしれんし、味方であったかもしれん。わしが何か力を貸したかもしれんし。借りたかもしれん」 
 それでは何もわからないではないか。そう第一英雄が告げるとサルヴァドールは眉をひそめる。
「しかし、お主。知ることも恐れておろう?」
 サルヴァドールが全てを知っているとして。
 かつての、記憶を失う前の自分が銅だとか。実はこういう秘密があっただとか。
 そう言う話を聞きたい奴はすくない。
 そうサルヴァドールは思う。
 記憶が無くなる前の自分と今の自分。何かが決定的に違っていた場合。自分はどちらの自分になるのか。
 それだけではない。
「どうやら、我々の世界は等しく王の侵略をうけたようではないか」
 サルヴァドールは重々しく口を開く。
「では、我々の世界がどう王に負け。そして負けた結果どうなったかを知ることになる。と思わぬか? それが王へ挑む勇気を潰すこともあるやもしれん」
 一騎当千の勇士であった彼だからこそなおさら、そうなる可能性はあった。
「まぁ、あくまで一つのお話。過程の話。雑談として聞いてくだされ」
 そう妖艶に微笑んだサルヴァドールはグラスに手をかける。
 こちらの食べ物、飲物はやはり美味しいなと。驚きの表情を見せるのだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『サルヴァドール・ルナフィリア(aa2346hero002)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 連続でありがとうございます。鳴海でございます。
 今回はサルヴァドールさんが何気なくポツリポツリ話を始めたという設定で、日常の一コマとして作ってみました。
 気に入っていただければ幸いです。
 それではまたよろしくお願いします。
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2018年11月19日

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