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『 ただ一人となっても 』
石井 菊次郎aa0866
 
 たった一人の女性を追っている。
 そう言ってしまえば聞こえはいい。
 だが実際に彼が追っているのは愚神で。そして彼女はすべてを奪った者だ。
 その手がかりを菊次郎は発見した。
 とある戦場でまみえた、獣。その獣の瞳にひどい既視感を覚えた。
 その色、十字の瞳孔。忘れる物か、毎日鏡で見る瞳だ。
 『石井 菊次郎(aa0866@WTZERO)』は思わず癖で確認してしまった瞳に衝撃を受ける。
「待ってください、少し気になることが」
 ここは戦場。菊次郎が静止するのは今回共に愚神討伐に赴いたリンカー九名。
 場所は荒野、相対するのはローブで身を隠した女性型の愚神そしてその眷属二体だった。
「待っていられるか、ここは戦場だ」
 その四つん這いの獣の瞳が狂気にらんらんと輝き、十字の瞳孔が小さく縮まった。
 その獣たちに切りかかっていくリンカーたちの背を見送って菊次郎は考えた。
 たまたま同じ瞳? いやありえない。だとしたら、あのローブの女は。
 にやりと笑う愚神の口元がみえ。それが見えるといてもたってもいられなくなった。
 あのローブをはぎ取って素顔を拝むまで、きっとこの焦燥は消えないだろう。
 菊次郎はスタッフを握り直す。
 他のリンカー達は獣につきっきりだ。そのうち一体をブルームフレアで吹き飛ばすと、道を遮るように身を躍らせた獣の遠吠えをきいた。
「その瞳、よく見せてください」
 次いで菊次郎が足を踏み鳴らすとディープフリーズ。
 動きを止めた従魔に歩み寄ると菊次郎は告げた。
「間違いがないか確認する必要がありますから」
 その言葉と同時に両手の親指を獣の眼窩に突っ込んだ。獣の悲鳴。
 のた打ち回るそれを別のリンカーにまかせて菊次郎は歩みゆく。愚神へと一歩また一歩と歩みを進める。
「この瞳に、覚えは?」
 そう、獣から抜き出した目玉と自分の目玉を並べて見せる菊次郎。だが愚神はにたにた笑うばかり。
「答えられないのならば、私は自身で答えを見つけるまで」
 次いで放たれたのはサンダーランス。その砲撃を愚神はいとも簡単に受け止めて見せた。
 ばたばたとフードがなびきその素顔が垣間見える。柔らかなはだ、紫色の髪の毛、そして十字の瞳。
 その愚神は菊次郎の発した霊力を自分の力と変え、反射するようにあたりにばらまいた。
 その攻撃で従魔も、リンカーたちも血霧へと変わっていく。その攻撃の隙に菊次郎は確かに見たのだ。
 どう猛に笑う笑みが張り付いた愚神の顔に彼女の面影を見るが。菊次郎は確信する。
 違う。
 彼女ではない。
 けれど、彼女と同じ瞳を持つものだ。
「詳しくお話をきかせていただきます」
 告げると菊次郎はスタッフを振りかざす。愚神との一騎打ちが始まる。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『石井 菊次郎(aa0866@WTZERO)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お久しぶりでございます。
鳴海でございます。
今回は戦闘風景を一つ仕立ててみました。
気に入っていただければ幸いです。
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2018年11月19日

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