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『とある日の執事二人 』
Ezraaa4913hero001)&Bradleyaa4913hero002


『いいですか、まず紅茶の淹れ方の基本は』
 Ezra(aa4913hero001)の振るう熱弁を、Bradley(aa4913hero002)は『面倒クセェ』と顔に描きながら聞いていた。今二人がいるのは自宅である。自宅と言っても正確には二人が誓約している能力者……ごーいんぐ・まい・うぇい、明日は明日の風が吹く、歌って踊れる魔女っ娘アイドル目指して驀進中のとある美少女の自宅だが、EzraもBradleyも住んではいるので、「自宅」と表した所で差し支えはないだろう。
 その一軒家の台所で二人は紅茶を淹れていた。とは言っても淹れているのはEzraであって、Bradleyは頭の後ろで両手を組み、ものすごく面倒そうに話を聞いているだけなのだが……「聞いている」というのは語弊があるかもしれない。『面倒クセェ』と思っているだけで聞いてはいないかもしれない。ともかくも、EzraがBradley相手に熱弁を振るいつつ、紅茶を淹れているという事だけは確かだった。
『まず水は汲みたてのものを。紅茶には軟水がベターです。もっともこの国は軟水に恵まれているので、そのあたりはあまり気にしなくてもいいですが、汲みたてで空気を多く含んでいるものが紅茶向きです。お湯は沸騰直後のもの。ぬるかったり沸騰しすぎたお湯では紅茶の香りがよく出ません。温度的には100度ですね。見た目的には5円玉くらいの泡がボコボコ出ている状態を』
『へー』
『次はポット。鉄分の含まれたものは避けて。紅茶に含まれるタンニンと鉄分がくっついて香りを損なってしまいます。それに色も黒っぽくなる。なので陶磁器か銀製のティーポット、あるいはガラス製のティーサーバーがいいですね。緑茶用の急須を使っても構いません』
『はー』
『カップは内側が白いものを。紅茶は色と香りが大事です。色を楽しむために内側は白く、香りが広がりやすい浅い形のものを』
『ほー』
『Bradleyさん、聞いてます?』
『はいはい、聞いてる聞いてる』
『それじゃあ私の言った事、復唱して頂けますか?』
 EzraはBradleyをじっと見た。Bradleyはそっぽを向いた。『やっぱり聞いていないじゃないですか』と、Ezraは肩を落として深く長く息を吐いた。


 EzraもBradleyも共に英雄……異世界からこの世界に召喚された者である。Ezraに過去の記憶はなく、Bradleyも同様である。二人とも同じ世界からの来訪者かもしれないし、まったく別の世界からの異邦人かもしれない。いずれにしろ、今の二人にそれを確かめる術はない。
 そんな二人がこうして同じ家に住み、紅茶の淹れ方云々で台所に立っているのは、同じ能力者と誓約を交わした、ただその一点だけである。それ以外に共通点はほとんどないし、どころか真逆と言っていい。Ezraは物静かでNOと言えないタイプの性格。Bradleyは面倒臭がりなマイペースで、思った事は顔にも口にも出すタイプ。他に共通点があるとすれば二人とも身長が182cmである事と、能力者から執事役を命じられている事だろうか。
『つってもあくまで「役」だから。別にマジで執事になる必要ねえから』
『もう、Bradleyさん真面目にやって下さいよ!』
 とEzraに言われながらも、Bradleyは椅子に座って全力でだれていた。先にも述べたがBradleyは面倒臭がりなマイペースで、「イケオジ執事もイイかも!?」と言われ、拒否するのも面倒なのでOKしただけなのだ。本格的に執事を努める気などまったくないし、適当に、好き勝手にやっていこうというのが全面に出まくっている。
 一方のEzraはポットを片手におこぷんしていた。この世界に来た当初はもっとおどおどしていたが(なんせ「執事っぽいよね?」と言われ、NOと言えなくて執事役をこなす事になったクチだ)、色々あって大分鍛えられたようである。BradleyはEzraをちらりと見、『はあー』と息を吐いた後面倒臭そうに呟いた。
『お前だって、そこまで真面目に執事役をする必要はねえんじゃねえか?』
 含みや嫌味の類ではなく、Bradleyは思った事をただそのまま口にした。Bradleyがここに来たのはEzraよりも後である。だから自分がいなかった時のEzraと能力者のやり取り全てを知っている訳ではない。
 だが、Ezraが元々執事という人種ではない事や、同じく能力者に命じられて執事役をしている事、流されるままにその役目をこなしている事は知っている。こんな風に熱心に紅茶の淹れ方をレクチャーする必要はないし、そもそもEzra自身、ここまで本格的に紅茶の淹れ方を学ぶ必要はなかったはずだ。
 EzraはBradleyの言を受け、ぽかんという顔をした。顎に指を当てしばし考え。
『Bradleyさん、もう一度最初から言いますよ』
『は?』
 何を、とは言わぬまま、Ezraはやかんに水を注ぎ始めた。そして火にかける前にBradleyを振り返る。
『今は覚えなくていいので、とりあえず説明を聞いて頂いてもよろしいですか』


『まずやかんに汲みたての水を入れ、火にかけて沸騰させます。5円玉くらいの泡がボコボコと出てくるまで。
 紅茶を入れる前に、ポットとカップにお湯を注いで全体を温めます。温めたポットに、ティースプーン1杯を1人分として人数分の茶葉を入れます。この茶葉は細かいので中盛が目安です』
 Ezraは説明を添えながらてきぱきと紅茶を淹れていった。
『沸騰したてのお湯を人数分注ぎ、すぐに蓋をして蒸らして下さい。この時、沸騰したお湯を勢いよく注ぐのがコツですよ』
 『覚えなくていい』と言われたので完全に聞き流しているが、そんなBradleyに構わずにEzraは作業を進めていく。
『1杯分のお湯の量は150から160ml。蒸らす時間は細かい茶葉なので2分半から3分程。ミルクティーの時はやや長めにお願いします。おいしい紅茶を淹れるポイントはお湯の温度を下げない事。ポットにティーコジーやティーマットを使うとさらに保温効果が上がります。
 ポットの中をスプーンで軽くひとまぜして、茶こしで茶ガラをこしながら、濃さが均一になるようにまわし注ぎします。"ベスト・ドロップ"と呼ばれる最後の一滴まできちんと忘れず注いで下さい』
 淹れたての紅茶をテーブルに置き、Ezraは優雅に『どうぞ』と言った。そして自分の紅茶も置き、Bradleyの向かいに座る。
『どうしてでしょうね』
『うん?』
『さっきのBradleyさんの質問ですよ。仰る通り、ここまでする必要はないような気もします。アイドルのお仕事を探してくるよう言われた事はありますが、紅茶の淹れ方は私がネットで自主的に調べたものですし……もっとも、お嬢様に「執事なら紅茶ぐらい淹れられなくちゃ!」とは言われましたけど』
 Ezraは困ったように笑った。だがその顔は、手のかかる妹で困っている、というような顔だった。困っていると評するには、あまりにも柔らかい笑み。
『でも、そうですね。ここまでしてしまうのは、もしかしたら私が楽しいからかもしれません。少なくともお嬢様が私の淹れた紅茶を飲んで、おいしいと言ってくれたら、嬉しいなとは思いますよ』
 とは言えお嬢様はミルクとはちみつたっぷりでないと飲みませんけど、とEzraは付け足した。Bradleyが能力者に向ける感情は少し違う。騒がしいペットに纏わりつかれている、例えるならそんな心境だ。
 だが、この前の依頼で。灰色に沈んだ町。それを見て言葉を失っていたいつもは笑顔の能力者。それでも気丈に振る舞おうとする彼女の髪を、Bradleyはくしゃっと撫でた。
『嬉しい、ねえ』
 その時の気持ちを思い出し、Bradleyは透き通った紅色を一口飲んだ。拘って淹れただけあって確かにいい香りである。お子様が味わうにはちと早い気もするが。
『美味いな』
 短いが素直な賛辞の言葉にEzraが向かいで微笑んだ。その笑みは嬉しそうでもあったし、どこか得意げでもあった。
『それではお褒めに預かった所で、Bradleyさんにも美味しい紅茶の淹れ方を覚えて頂くとしましょうか』
 そう言われてBradleyは『あ』という顔をした。そう言えばそういう話をしていた事を思い出す。Bradleyは残っていた紅茶を一気にぐいっと煽り、それからにっと笑みを浮かべる。
『いや、あんまり美味いから、紅茶係はお前に譲るぜ』
『え?』
『お前は真面目な執事枠。俺はマイペースな執事枠って事で役割分担といこうじゃねえか』
『いやいや、それ私にだけ負担大じゃないですか! Bradleyさんも仕事して下さいよ!』
『お前さっき楽しいって言ってたじゃねえか』
『それとこれとは話が別です!』
 Ezraはきゃんきゃんと吠え立てた。きゃんきゃんとは失礼かもしれないが、獣耳なのも相まって非常に犬っぽく見える。Bradleyはテーブルの上のティーカップを指で差す。
『まあまあ、紅茶でも飲んで落ち着け』
 対しEzraは拳を握り、今日一番の大声を張り上げた。
『それは、私が自分で淹れた紅茶です!』

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【Ezra(aa4913hero001) /外見性別:男性/外見年齢:27/ソフィスビショップ】
【Bradley(aa4913hero002) /外見性別:男性/外見年齢:62/ブラックボックス】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。EzraさんがBradleyさんに紅茶の淹れ方をレクチャーされているイラストを拝見しまして、それを元にお話を書かせて頂きました。台詞やイメージ、設定など齟齬がございましたら、お手数ですがリテイクのご連絡よろしくお願い致します。
 この度はおまかせのご注文、誠にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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2018年11月20日

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