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『『愛の行方 前編』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 街の装いがクリスマスへと変わっていた。
 今年も、綺麗なイルミネーションが夜の街を彩り、人々を楽しませてくれている。
 アレスディア・ヴォルフリートと、ディラ・ビラジスが、ここ東京を訪れてもうすぐ2年……。
「3度目のクリスマスか……」
 イルミネーションを見ながら、ディラが呟き、アレスディアが彼に顔を向ける。
 警備の仕事の帰り道。それぞれの住処に向かう分かれ道まであと数百メートル。
「今年も、仕事か?」
 穏やかにアレスディアに問いかけるディラ。
 アレスディアは頷きながら思い起こす――2年ほど前の彼の言葉を。
『この世界のクリスマスっていうのは、家族とか、恋人とか――好きな人と過ごすもんなんだよ』
 そういえばその年のクリスマス、彼はアレスディアと一緒にいた。
『出来なくもなかったさ、俺は』
 2年前のイブの彼の言葉が、今頃になって解った気がした。
 ディラはあの頃既に、自分に好意を抱いていた。共に歩いたイブの少しの時間に幸せを感じていた。
 2年目のアレスディアの自室で過ごしたクリスマスは更に……そして、今年は。
「夜は、2人で過ごすか」
 アレスディアがそう言うと、突然ディラが彼女の腕を引っ張り狭い路地へと連れ込んだ。
 そのまま彼はアレスディアを引き寄せて、キスをして、抱きしめた。
「職場で、とか言うなよ」
 耳元に唇を寄せた囁き声に、アレスディアの身体が熱くなっていく。
「言わ、ない……急な、仕事が入らない限り」
「ったく、お前というやつは」
 笑いながらディラはアレスディアを解放し、2人は通りへと戻る。
「アレス、すぐにじゃなくてもいい。一緒に住まないか?」
 彼のその言葉に、アレスディアは曖昧な返事だけを返した。
 突然の彼の奪うようなキスに、アレスディアの鼓動が苦しい程に高鳴り、思考が混乱し、言葉が詰まって出にくくなっていた。
「それじゃ、今日もお疲れ様」
 分かれ道で、ディラは軽く手を上げて、アレスディアに背を向けた。
「ああ、また明日」
 アレスディアはイルミネーションの光の中に消えていく彼の背を見ていた。
 彼が暮らす部屋は遠くはないのだが、声が届くほど近くはない。
 もっと側にいたら、いてくれたらと思うのは、アレスディアも一緒だった。
 そっと、胸に手を当てた。
 胸を満たす熱、苦しかった鼓動も、今は心地良く感じる。
 この熱と鼓動を……ディラと共有したい。
 彼の後姿が視界から消えた途端、アレスディアは頭を左右に振った。
「私は一体何を惚けたことを考えているのか……」
 大きく息をつき、夜風で熱を冷ましながら、アレスディアは自分の部屋へと帰っていった。

 翌日、アレスディアは女性限定の要人警護の仕事に就いた。
 ディラはその間、資格習得のための講座に出席しているはずだった。
 夜は一緒に食事をしようと約束をしていたのだが、ディラからアレスディアに連絡が届くことはなく、仕事を終えたアレスディアは自室に帰る前にディラの部屋に寄ってみようと道を急いでいた。
 彼女が街灯の少ない、大きな公園の側を通りかかったその時――。
「すみません、助けていただきたいのですが」
 彼女の後ろを歩いていた男が、彼女の前へと回り込んできた。
「どうかされたか?」
 アレスディアは立ち止まり、男の姿を確認する。
 黒髪、黒目のスーツを纏った中年男性だった。
「貴女が……抗体をお持ちだと聞きまして」
 男の言葉に、アレスディアの身体に緊張が走る。
「貴女と同じ世界から、この世界に逃げてきた私達を助けていただきたいのです」
「私達、とは?」
「とある組織のウイルスにより、愛の感情を失った私達、およそ100人」
 男の言葉にアレスディアの顔が強張っていく。
「血を……いや、血だけではなく。体液でも、体の一部でも、肉片一つでも活きた細胞であるなら。試させてくれ」
 手を伸ばしてきた男から、逃れるようにアレスディアは足を後ろに引いていた。
 ディラの姿と、彼と交わした約束が、アレスディアの脳裏をかすめる。
「助けられるのなら、助けたいとは思う。だが、すまないが……己の命を犠牲にするつもりは、ない」
「それなら、彼の身体で試すしかないな。女の方が美味そうだと思ったのだが」
 男は残忍な笑みを浮かべながら、アレスディアに一枚の紙を差し出した。
「我々は明後日にはこの地を発つ。身を差し出すというのなら明日、地図の場所に1人で来い」
 そう言い残し、男は去っていった。
 街灯の下に行き、アレスディアは渡された地図を確認した。
 地図が示す場所は、歓楽街にある大きなビルの地下だった。

 アレスディアはディラを探した。
 彼の部屋のドアをノックしても反応がなく、大家に話して鍵を開けてもらうが、部屋に彼の姿はなかった。
 ただ床に一枚、乱雑に書かれたメモが落ちていた。

 アレスディア様
 依頼で遠出する。
 心配はいらない。
 定期的に連絡をする。
 留守は頼んだ。

 酷く汚い字だが、確かに見慣れた彼の字だった。
 行の最初の一文字だけ、少しだけ綺麗に書かれていた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、ライターの川岸満里亜です。
危険レベルAのご選択ありがとうございます。先にアレスディアさん視点のノベルをお届けいたします。
こちらのノベルですが、前中後編の全3回で描かせていただければと思います。
アレスディアさんがどう感じ、どのように動くのかをプレイングで教えていただけましたら幸いです。
2人の連絡方法ですが、通話や通信のできる端末を持っているとしても大丈夫です。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
東京怪談ウェブゲーム(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年11月20日

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