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『心の温かさはお金で買えない、かも 』
白市 凍土aa1725

 白市 凍土(aa1725)はスーパーのチラシを握り締めて、くっくっと笑っていた。
 そう、今日は――
「9がつく日、つまり、『肉の日』だ……」
 肉の日。
 近所のスーパーで月に3回行われる、肉が20%オフになる特売日だった。
「豚肉と鶏肉と、あとはひき肉で餃子も良いな……冷凍保存して、次の肉の日まで持たせるぜ!」
 凍土は14歳。まだ子供と言えども、家計簿と睨めっこする主夫のようなの思考の持ち主だった。
 安くて美味しいご飯は至高。凍土のような育ち盛りはよく食べる。でも食事が与える家計への負担は痛い。
 故に、自然とスーパーの特売日は覚えてしまう。
「隣町のスーパーの今日の特売は……と」
 チラシを読み込んで、凍土は衝撃を受けた。
「『冬の寒さに、鍋特集! 白菜一本が10%オフ』だと!? あー……でも、葉物は長持ちしないからな……4分の1カットで充分なんだよな……」
 でも、冬の鍋。
 おこたにあたたかーいお鍋でふうふうして。
 〆は卵を入れておじやでご馳走様。うどんも良い。
「な、鍋は……汁は数日持つし、うん、良いな。肉も入れて、そうなると豚肉と鶏肉を入れると味に深みが増して良いよな。特売の肉も使えるし、次の日は汁の残りにひき肉で作った水餃子も入れて……あー。美味しい奴だ。そうなると、台所にあるスープの素と醤油と塩でさっぱり風に。豆腐、冷蔵庫にあるし。白菜……使い切れるかな……何回かに分けるといけるか?」
 でも、ちょっと待て。
 量が多過ぎないか?
 一人鍋も美味しいけど、ちょっと豪勢過ぎないか?
「やっぱり、止めとくか……」
 温かい食卓。
 孤児院育ちの凍土には、家族で鍋を囲むだなんて、した事はないし、憧れはあるけれど。
 憧れだけの――

「で、結局買って来たんだよなぁ、オレ」
 大きな鍋が無いので、お隣さんに借りて。
 お隣さんは偶に買い物を手伝って、お小遣いをくれる足腰の弱いお婆ちゃんだった。
『爺様が亡くなってから、息子夫婦が一緒に住めと言うんだけれど、爺様との思い出もあるし、凍土ちゃんが手伝ってくれるしねぇ』
 切っている葱は、商店街の八百屋のおっさんが売って来た奴だった。
 偶に品出しとかを手伝うと、アルバイト代を出してくれる独身の20代のおっさん。
『よう、凍土! 今日もエージェントお疲れ様! 特別に葱を半額にしてやるよ、又手伝ってくれよな!』
 スープの素が切れていたので、ちょっとだけお借りしたのは上の階のお姉さん。
 年齢不詳のOLで、お勧めの料理のレシピを教えてくれる。
『凍土ちゃんがあと10歳年上だったら、お姉さんが旦那に貰うのにね。将来有望なイケメンよ』
 なんだかんだ、依頼や手伝いをこなして、子供扱いされながらも、どうにかやって行けるのはご近所のありがたみだったりする。
「……鍋、誘ったら、来てくれるかな。べ、別に作り過ぎただけだ! 参加費か持ち込みの料理持ってこないと入れてやらないし!」
 爺様に先立たれた隣のお婆ちゃんも。
 独身の八百屋のおっさんも。
 ちょっと色っぽいお姉さんも。
 兄弟みたいなあいつも。
「まあ……血の繋がりなんて無いけど、さ」
 結構、家族団欒、って、こんな感じなのかな、って。
 夕飯の準備が出来る前に連絡しようと、スマホの連絡帳を眺める。
 孤児院時代の友人も、誘おうかな、とか。

 冬の夜の、皆で囲む鍋は少しだけ、身体も心も温かい。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa1725/白市 凍土/男性/14歳】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 冬と言ったらお鍋ですよね。お鍋。最近寒いので冬にしました。
 主夫的な感じの少年と言う事で、豪勢に皆で鍋パーティーです。
 温かい冬をお過ごし下さい。
おまかせノベル -
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2018年11月21日

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