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『『愛の行方〜ディラ・ビラジス〜 前編』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 街の装いがクリスマスへと変わっていた。
 今年も、綺麗なイルミネーションが夜の街を彩り、人々を楽しませてくれている。
 アレスディア・ヴォルフリートと、ディラ・ビラジスが、ここ東京を訪れてもうすぐ2年……。
「3度目のクリスマスか……」
 イルミネーションを見ながら、ディラは呟いた。
 今も変わらず彼女の側にいれることを、ディラは嬉しく思う。
「今年も、仕事か?」
 と、笑いかけるとアレスディアはすぐに頷き、それから少し考えてこう言った。
「夜は、2人で過ごすか」
 彼女のその言葉に、ディラの心臓が跳ねた。
 気付けば、ディラは彼女を狭い路地に引っ張り込み、奪うようにキスをして抱きしめていた。
「職場で、とか言うなよ」
「言わ、ない……急な、仕事が入らない限り」
 緊張したような彼女の言葉に、ディラは我にかえっていく。
「ったく、お前というやつは」
 笑いながらアレスディアを解放して、ディラは再び彼女と歩き出した。
 今年も彼女の部屋に入れてもらえるだろうか?
 彼女の手料理が食べられるのだろうか。
 泊りたいと言ったら、受け入れてもらえるだろうか。
 地方で行われるクリスマスイベントの警備の仕事を受けるのも良さそうだ。
 最終日、仕事を終えた後、クリスマスの夜は1つの部屋で……。
 と、次々に浮かんでいく妄想は彼女に求めているだけで、してあげることがないのではないかと、ディラは心の中で苦笑する。
「アレス、すぐにじゃなくてもいい。一緒に住まないか?」
 分かれ道の側で、ディラはアレスディアにそう尋ねた。
 彼女に何かしてもらいたいからでも、独占したいからでもなく。いや、その気持ちもあるのだが。
 彼女の矛であるために、双方の願い、護り護られ生きていくためにもっと側にいたいと思った。
 返答を性急に求めはせず「それじゃ、今日もお疲れ様」と、ディラは手を上げてアレスディアと別れた。

 風が随分と冷たくなっていた。
 暖房がなければ、自宅で過ごすのも辛い時期だ。
「……ヒーター壊すか」
 暖房が壊れていることを口実に、彼女の部屋に入れてもらい温かな料理、そして彼女自身に温めてもら……そんなふしだらともいえる妄想ばかりしている自分に、ディラは再び苦笑する。
 だが――彼女は『嫌じゃない』と言った。もう少し、焦ることなく先に進んでもいいはずだ。
「ディラ」
 突如呼び止める声があった。
 振り向くと、フードを被り、サングラスとマスクで顔を隠した女性の姿があった。
 この街に、自分の名を呼び捨てで呼ぶものは殆どいない。
 だけれど、聞き覚えのある声だった。
 警戒心を露に、ディラは黙って女性を見詰める。
「久しぶりね、ディラ・ビラジス。ホントにこの世界に来てたんだ」
 フードにサングラス、マスクをとって、女性はディラに顔を見せた。
 茶色のセミロングの髪、大きな目に、魅惑的な赤い唇。
 最後に会った時と随分印象が変わっているが、ディラが所属していた騎士団に所属していた女性だ。
 しかし彼女は自分より先に行方不明となり、騎士団から離れていた。
「死んでなかったのか。お互い、関わらない方がいいんじゃねーか? 俺、お前を売るかもしれないぜ」
「そうね。だから一度だけと思って、声をかけたのよ。互いの幸せのために」
 訝しげに女性を見るディラに、彼女はゆっくりと近づいた。
「私ね、あなたのことが好きだったの」
 途端、ディラは声をあげて笑う。
「なわけねーだろ。お前はあのウイルスの感染者だ。人を好きになる感情なんて、持っていない」
「……そうよ」
 女性の目が、鋭く暗くなっていく。
「だから、あなたが持つ抗体が欲しいの。内通してる仲間から聞いたわ。あなたが抗体を持っているって」
 ウイルスの抗体を持っていたのは、アレスディアだ。
 ただ、彼女の血の提供を受け、ウイルスを退けたディラの体内にも今は抗体があるはずだった。
「無駄だ。お前は既にその感情を失っている。今更体内から除去しても、何も変わらない」
「言ったでしょ。私あなたのことが好き『だった』って。それはウイルスに侵される前のこと。あなたの鋭く強い、誰も寄せ付けない目がゾクゾクするくらい好きだった。淡く儚い恋だったし、どんな感情だったか思い出せもしないけれど、好きだったことは間違いない」
「それで」
「試したいのよ。あなたの抗体を私の中に満たし、私が好きだった頃のあなたを見ることで、当時の感情を取り戻すことができないか。今は好きという感情はないけど、あなたに会えて嬉しいって感情は私にもあるのよ」
 ――ねえ、数日付き合って。
 あの頃のあなたを、私に見せて。
 艶かしくそう迫る彼女に、ディラは嫌悪するかのように、険しい顔で首を横に振った。
「あなたが拒否するのなら、他の方法を試すわよ。あなたに抗体を提供した人の血肉を貰うわ」
 残忍な目で、女性は微笑む。
 ディラは息をのみ、苦悩した。
 アレスディアの存在も、知られてしまっている。
「俺が飲んだら、彼女には一切手を出さないか?」
「勿論。私に必要なのは、抗体だけじゃない。あなたの事が好きだった過去の心だから」
 女性がディラに腕を絡めてきた。反射的に、ディラは彼女の腕を振りほどく。
「……わかった。準備をする。俺を連れて行け」
 吐き捨てるように言い、ディラは自室へと向かった。
 着替えをし、刃物を数本忍ばせて……それから、考えながらメモ帳に乱暴に文字を書いた。
「必ず、戻る……」
 書き終えたメモを破って床に落し、部屋を出た。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
ディラ視点のノベルのご依頼もありがとうございました。
次回もディラ視点のノベルをご依頼いただける場合、こちらのプレイング欄にもアレスディアさんのお気持ち、方針等書いていただいても構いません。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
東京怪談ウェブゲーム(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年11月21日

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