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『戦禍の花 』
ユメリアka7010


 ユメリアが今回訪れているのは、雑魔による襲撃から復興しつつあるとある村だった。
「あー。おうたのおねえさんだー」
「ちがうよぉ。おはなしのおねーさんだよぅ」
 大人たちはユメリアの姿を見ると、顔を綻ばせた。
 何故なら、復興に忙しい大人たちはなかなか子供を構ってやれない。
 辛く寂しい思いをしているだろう子供たちは、健気にそれを口にはしないけれど。
 夜になると泣き出してしまう子も多いそうだ。
 ユメリアは時折この村のような復興途中の場所へ赴き、子供へと物語を語り、伝承を弾き語ることがあるのだ。
「皆さん、良い子で過ごしていましたか?」
「はーい!」
「そうですか。それじゃあ、そんな良い子の皆に、今日は素敵な絵本を持ってきましたよ」
 そう言って彼女が取り出したのは、1冊の絵本。
 主役はデフォルメされた灰色のオオカミだ。
 今回は少しだけ自己流に。作者の描いた雰囲気を壊さぬよう、小さな音を奏でつつ。
 歌うように、ユメリアは紡ぎ出す。

 どうしてこんなにも世界は悲しいのだろう。
 種族が違うから諍いが起こり、立場が違うからいがみ合う。
 そして、根本が違うから争い傷つけ合い命を奪い合う。
 ここにいる子供に、村人に、一体どんな罪があったというのだろう。
 ただ普通に幸せに生活していただけなのに。

「おねーちゃん、だいじょうぶー?」
 物語が終わり、ふと思考の海に沈んでいたユメリアを引き上げてくれたのは、幼い手だった。
「えぇ、大丈夫ですよ。今日のお話はどうでしたか?」
「うん!すごくたのしかったよ。みんなも、えほんのどうぶつみたいに、なかよくできればいいのにね!」
 あぁ、そうだ。大丈夫だ。ユメリアは伏し目がちの瞳に僅か涙を浮かべつつ頷く。
「そうですね。皆、仲良く出来る日が、来るといいですね……?」
 戦うことは苦手だ。自分や他人が傷つくこと、悲しむことは嫌いだ。
 何度、戦場で心折れそうになったか分からない。
 それでも彼女が戦っている、その理由。
 それはいつだってそこにあったのだ。

 笑顔を守りたい。
 沢山の人を癒したい。
 人々の悩みを減らしたい。
 だから私は、戦うのだ。
 たとえ怖くとも、恐ろしくとも。

「はい!これあげるから、げんきだして、おねえちゃん」
 一人の少女が差し出したのは、ユメリアの青銀色の髪に映える小さな白い花が数本束ねられたもの。
「あのね、こんどおねえちゃんがきたら、あげようっておもってたの」
 その花は決して観賞用の花ではない。ユメリアも、それは知っている。
 だけどこの花はとても強い。森の貴婦人とも呼ばれるこの花は、雑木林でも野山でもどこでも咲けるのだ。
「……ありがとうございます。押し花にして、大切にしますね」
 その花の強さと、村を復興しようとする人々の強さに、ユメリアもまた強さをもらったような気がしたのだった。


(了)
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【ka7010/ユメリア/女性/20歳/聖導士】
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2018年11月21日

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