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『香蘭と和菓子 』
ミィリアka2689

「んー! このお団子美味しいっ! ……あ、ござる」
 東方の茶屋で団子を食べているミィリア(ka2689)。
 餅にあんこが乗ったシンプルな団子であるが、あんこその物が美味しい。
 おそらく西方にある砂糖ではなく、別の甘味が使われているのだろう。
「褒めて貰えるなんて、ありがたいね」
 店員がサービスのお茶を長椅子に座るミィリアの傍らにそっと置く。
 ミィリアの食べっぷりに店員もそっと微笑みを浮かべる。
 食べっぷりの良さは見る物を安心させるものだ。
「お姉さん、もう一つ!」
 さっと皿をお姉さんに差し出すミィリア。
 甘い物とアルコールが大好きなだけあって、ミィリアは次々と団子を平らげている。
「良い食べっぷりで。本当にお団子が好きなんですねぇ。それなら、香蘭へ行ってみるといいかもしれないね」
「香蘭?」
 初めて聞く名前にミィリアはお団子を食べる手を止めた。
 心なしか、ミィリアの冒険心をくすぐる何かを感じる。
「ああ。東方でも有名なお菓子の産地だよ。そのあんこの豆だって、香蘭から取り寄せたんだから」
 店員の言葉にミィリアは瞳孔を開いた。
 先程まで褒め称えていたあんこの産地が、まさに店員のいう香蘭から送られたものだという。
 こしあんの中にしっかりと生きる豆。
 そして、深みのある甘味。
 このあずきの産地なら、他にどのようなお菓子があるというのだろうか。
「ねぇねぇ! その香蘭でどこにあるの? 教えて教えて!」
 興奮して『ござる』を付け忘れるミィリア。
 勢いに圧され、少々困惑気味の店員は急かされながらも頬に手を付けて思い出す。
「え、ええと……この街道を南にずっと行った場所よ。行けばきっと道標があるはず……」
「店員さん、ありがとうっ!」
 ミィリアは団子とお茶の代金を置いて街道を南へと走り出す。
 この先に素晴らしい甘味がある。
 そう考えるだけでじっとしている事等できなかった。


「わあっ! 凄いっ! ……でござる」
 ミィリアの前に広がるのは、東方由来の和菓子専門の店が建ち並ぶ通りだ。
 馬車を乗り継いで数日後に香蘭へ到着したのだが、圧倒的な和菓子店の数に圧倒された。
 香蘭に到着して気付いたのだが、香蘭は商売で栄えた街だ。特に海運の拠点とされていただけあり、和菓子以外の店も多い。しかし、南の地方で作られた黒糖と香蘭周辺で栽培されている小豆が香蘭を和菓子の街として有名にしたようだ。
「なるほどね〜。あの小豆の甘さは黒糖だったんだ」
「おや、あんたはん。ようご存じでんな」
 ミィリアの言葉に反応して一人の男が声をかけてきた。
 天然パーマに着物に身を包んだ、明らかに遊び人のような青年。髭で青々とした顎と珍妙な言葉遣いがミィリアの目を惹いた。
「そうだよ。龍尾城近くの茶屋で食べたからね」
「おや。それはまた遠い所からようおいでなすったなぁ。
 せやったら、この街は初めてでっしゃろ?」
「そうだね。この街の事を知ったのは最近でござるからねぇ」
「ほんなら、わてが案内して差し上げましょか?」
 男は突然、ミィリアへ街の案内をすると言い出した。
 扇子を片手に仰ぎながらもミィリアの様子を窺う男。
 正直、怪しさ満点だ。だが、ハンターであるミィリアに奇妙な男が力で太刀打ちできるとは思えない。
 警戒しながらも、ミィリアは答える。
「い、いいよでござるよ」
「よっしゃ! ほんならわてがビシッと案内させていただきますわ!
 ……あ、わての事は若旦那って呼んでもらえれば構いませんで」
 意気揚々とミィリアの前を歩き出す若旦那。
 しかし、この若旦那がミィリアに厄介な願い事すると知るのは街を案内された後であった。


「ええっ!? まだミィリアが試食するの? でござる」
「頼んます! 是非、その肥えた舌でわての店を助けたって下さいな」
 既に満腹に近い状態のミィリア。
 その前で若旦那が必死に拝んでいる。
 実は若旦那も和菓子の店なのだが、売上に苦戦。そこで新商品の開発をするつもりなのだが、生憎と和菓子の試食をしてくれる人もいない。
 そんな折、初めて香蘭に来たミィリアを発見。
 恩着せがましく案内させた上、若旦那の店で新商品の試食をさせているのだが――。
「甘いのは好きだけど、こんなに続くと辛いよでござる……」
「ま、そないな事をいわんで。ささ、次を食べておくれやす。
 今度のは菊の花を象ったお菓子ですえ」
 既にミィリアは幾つもの和菓子を平らげてきた。
 若旦那曰く、あんこに入った黒糖の分量を変えているらしいが、幾つも食べたミィリアにはその些細な違いが分かるはずもない。
「街を案内したったやないですか。ささ、これもお願いしますわ」
「ちょ、ちょっと休ませて……」
 今までこれ程甘いものを食べた記憶はないが、しばらく和菓子はいらないと考えるミィリアであった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka2689/ミィリア/女性/12/闘狩人(エンフォーサー)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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近藤豊でございます。
この度はノベルの発注ありがとうございます。
今回は東方で隙があればリリースしたいな、と考えていた和菓子と海運の街『香蘭』を舞台に描かせていただきました。ちょっとアレンジを加えて黒糖を使っていますが、本来は普通の砂糖も使った東方一のお菓子の街を舞台に事件をできれば、なんて考えておりました。
もし、機会がございましたらそちらの方も描かせていただければ幸いです。
おまかせノベル -
近藤豊 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年11月26日

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