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『思い出が明日を創るから 』
エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001

 中途半端に記憶がある、というのも厄介なものだとエルは思う。勿論、無い者には無いが故の感情があるのだろうし、結局は本人の受け取り方と進み方次第。エルは基本的には前向きなほうだ。案ずるよりも産むが易し、という言葉があるように、物事を見て難しいかもしれないと思った時ほど予めハードルを高めに見積もっているせいもあるのだろうが、拍子抜けするくらい順調に事が運ぶ。そういう経験もあるものだ。だから今目の前にあることやこれから起きることに対して注意を払っても気負う必要はない。
 そうだった気がする、という朧げな記憶はエルに時折途方もない寂しさをもたらす。英雄と呼ばれる存在は皆そういうものだ、と頭では分かっていても、大きな感情が理性を揺らがせることもあるのだ。その漠然とした予感が大事な人を亡くした、というものだから尚更。しかしその人物がエルの家族だったのか友人だったのか、あるいは恋人か。それすら定かではなく、どれだけ時間が経ったとしてもこの思いが完全に消えて無くなる日は来ないのだろう。
 一人本棚の前に佇んでいたエルは、硝子の窪んだ取っ手に手をかけてそれを引いた。そして目線の高さに置いてある分厚い本に手を伸ばして、しばし悩んだ末に一冊目と書かれたものを取り出す。それは本ではなくアルバムだった。長い爪で傷付けてしまわないように細心の注意を払って、一ページ一ページゆっくりとめくっていく。
 そこに写っているのはエルが元いた世界の風景――では勿論なく、こちらに来て少し経った頃からエルが撮り始めたものだ。最初のほうはぶれていたりピントがずれていたりと見るに耐えないが今となってはいい思い出となる写真が多い。被写体はこの家の中にある置物などから始まり、窓から見える景色、街路樹の紅葉、家周辺の建物と活動範囲が徐々に広がっているのが分かった。任務の後に撮ったものも時折混ざっている。少年の姿が写っている写真もあった。エルが自身を撮影したものも幾つか。
 あの言葉を口にしたとき平坦な表情に明らかな苦みが浮かんだことを、エルは今でもよく憶えている。写真の少年は服装や顔の向きが違うから別の写真と分かるが、ただ口を閉じて息をしているだけ、そんな顔をしている。
「――今となっては、懐かしいものだ」
 そう呟いたエルの口元にははっきりとした笑みが刻まれている。最後まで似たり寄ったりの写真が続いた一冊目を閉じ、そのまま二冊目に手を伸ばした。数ページめくったところで変化が訪れる。
 友人やエージェントとして共に戦った者達と一緒に写っている写真が増えている。エルは自身の表情も徐々に変化していっていることに密かな驚きを覚えた。風景に大きな特徴が見られなくても、どれくらいの頃に何をしに行ったのか、少し記憶を辿れば思い出すことが出来る。さすがに戦いの直後といったような写真は撮っていないので、まるでただ平和な日常を過ごしているだけのように思えるのが、記録としては不適当かもしれないが、それもまた趣向としては良いだろう。
 そして、今のところ最後となる三冊目。どれも、思わず口元に手を添えて笑ってしまうくらい思い出に溢れた写真ばかりだ。その季節ならではのイベントを楽しんでいるものもあれば、ただ家でまったりとくつろいでいるだけのものもある。
「ここまでくると、もはや子を持ったような気分だの」
 はっきり思い出せない過去に囚われ過ぎないように。写真撮影を始めたときにはそんな思いも確かにエルの中には存在していた。前向きでいようとしても綺麗に忘れられるものではないから。しかしそれだけではなく、死人が未練だけを引きずってこの世に留まっている、そんな風に表現したくなるような姿に何とかしてやりたいと、使命感のような親心のような、何とも表現し難い感情が生まれていたのも本当だった。エルにとって写真撮影は自身の過去を振り払う道具であると同時に、痛みに塗れた心を良い方向へ動かしたいと、そんな決意の表れでもあったのだと今は思う。それを成し遂げられたのは自分一人の力ではなく、周りにいてただ友人としてあり続けてくれた者達によるところが大きいだろう。それでもあの言葉が一つの契機になっていたのならば、それだけで自分がこの世界に来た意味はあった。笑ったり怒ったり泣いたり、早く大人になりたいとまだ少し先の話を口にしたり。そんなささやかな一つ一つがエルの幸いに繋がっている。
 三冊目は三分の二を過ぎたところで終わっており、後は延々と白紙が続いていた。白紙の一枚目に写真を飾るのは今日か明日か。最後のページはいつ頃になるだろうか。無論、全部埋まったとしてもそこでやめてしまうわけではない。
「近く、共に買いにゆくか」
 四冊目はいっそ、目が痛くなるくらい明るい表紙のものがいい。そう思いながらエルは三冊目を本棚に仕舞い、部屋から出ていった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa1688hero001/エル・ル・アヴィシニア/女性/25/ドレッドノート】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
仮にも文章を書いている人間なのに語彙力がゼロになるくらい、
エルさんの立ち位置がとても好きです。魅力的だなと思います。
話の内容は最早単純に、エルさんの基礎設定をまとめた的な
感じになっちゃってますが、やっぱりどうしても書きたくて。
三つしか台詞がないですが、口調は間違ってないでしょうか。
普通の喋り言葉っぽくならないよう意識してみたつもりです。
今回は本当にありがとうございました!
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2018年11月26日

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