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『狩の時 』
麻生 遊夜aa0452

 遊夜が自分として自分を認識したときすでに遊夜は一つの生命体として完成していた。
 たとえば社会常識、例えば生活の知識、そう言った生きていくのに必要な情報というのもそうだが、もう一つは生きていくうえで必要な体の記憶もそうである。
 遊夜は狩猟の記憶をその身に宿していた。
「足音、遠いな。2〜300M先か?」
 前の記憶の持ちぬし、もはや自分と別人とも言いたいその人物は優雅に狩が趣味だったのだろうか、それは分からないが、照準の取り方、敵の動き、弾丸の選び方。罠のはり方。
 そして敵の追い方まで体に染みつくほど狩をしていたらしい。
「今だ」
 遊夜はけもの道もない山の中を疾走する。時に岩を、時に木の幹を足場にして殺気を感じて逃げた獣の足を追う。
「草より背が低い、この足音、イノシシか?」
 暗い森の中だが木々が日を遮っているだけである。
 遊夜は銃声を鳴らしながらそのイノシシをより明るい場所、遮蔽物の少ない場所に煽っていく。
 やがて遊夜は地面をかける加速度そのままに前に飛び、木の枝に手をかけてイノシシの上空をとった、そのまま拳銃を構えて撃つ。三発放った弾丸の一発は命中したらしい。
 開けた草原にイノシシが出ると片足を引きずりながらもまた森の中目指して走って行こうとする。
「すまんな、悪く思わないでくれ」
 そう遊夜は背後から歩みよってナイフを首の一番太い血管に突き立てた。
 横倒しになるイノシシ、自分の育てている子供らと同じくらいの大きさがある。
「っと、のんびりしてられんぞ」
 野生動物の肉のうま味は下ごしらえにかかっている。
 先ずは心臓が動いている間に血を抜く必要がある。
 そうしながら遊夜は優れた耳で川の位置を大まかに探る。
「リーヤの影響か? どんどん耳がよくなってる気がするな」
 そしてイノシシを川まで運び、川の流れにそうようにイノシシを仰向けに設置。
 ここから解体ショーが始まる。
 先ず遊夜は腹部をナイフで裂いた、このナイフの柄には遊夜のイニシャルが掘られているが娘の贈り物である。黒塗りのナイフは合金がAIボディーと同じもので作られていた。
 切れ味は抜群で紙の袋を鋏で切るように喉から股下まで皮が裂かれる、あふれ出る血を川の水で一気に洗い流した。
 遊夜は手が赤くなって感覚が無くなるのも構わずそのまま手を突っ込み内臓を水洗い。
 銃弾をこの時取り出す。いや内臓を傷つけているわけではないらしい。イノシシの内臓は美味しいし漢方にもなる。これだけで数万の稼ぎである。設けたと遊夜は少し笑った。
 そのまま股のあたりの骨を斧でおるように切っていく。関節をはずし。皮の一部に切れ込みを入れると皮がするりと剥がれた。ピンク色の肉が露わになる。
 遊夜はその時点でやっと袋やタッパーを取り出す。
 素早く部位を判別切り分けていった。
 これで、骨や食べられない部分をわければ十分にしょっていける重さになる。
 そう遊夜が顔をあげるとすでに夜が近かった。
 太陽はその身を隠し始め、寝床を準備するには少し遅い時間だ。
 食料はいまとったイノシシを食べるとして、帰りはどうしようか。
 さい先もいい、夜になれば活発になる動物たちも多いだろう、もう一頭かっていくか。
 そう算段をつけ始めた矢先である。スマートフォンが震える。
 相手は嫁だ。何かあったのだろうか。そう電話に出てみると受話器の向こうから子供たちの賑やかな声が聞こえてくる。
 彼女曰く、娘が遊びに来たそうだ。
 こうしてはいられない。イノシシの皮を見せてびっくりさせてやらなければ。
 そう帰り支度を整える遊夜であった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『麻生 遊夜(aa0452@WTZERO)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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いつもお世話になっております、鳴海でございます。
今回は遊夜さんが非番だったら何してるのかなぁって想像して書いてみました。
嫁も子供たちもいない、遊夜さんの大人な時間を一つ演出できていればいいなぁと思います。
それではまたお会いしましょう、鳴海でした、ありがとうございました。
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2018年11月28日

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