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『一日の始まり 』
オルソン・ルースター8809

「さて、今日はどれにするか?」
 オルソン・ルースター(8809)はクローゼットを開けずらっと並ぶシャツの中から白いワイシャツと折り目のついた黒のパンツを取り出した。
「まあ、これでなくてもいいんだがね」
 もう癖の様なものだな、と独り言ち笑う。
 もう少しカジュアルな服も持ってはいるのだが、それらが袖を通されることはほとんどない。
 ついかっちりした服装を好んでしまうのは世界を駆けまわっていた事業家時代の名残だろう。
「さて……ん?」
 いつも使っているマグカップを出し、珈琲をいれようと缶を開けるが中の豆は底をついていた。
 いや、正確には今飲む分はあるのだが、それでおしまいといった感じだ。
 最後の豆を挽き、珈琲をいれながら、オルソンはどこで買った豆だったかと考える。
「これは通販だったか……いや……」
 この間、街を散策していた時に見つけたコーヒーショップで買った豆だったと思い出す。
 なかなかに美味しい豆だったし、どうしようかと思いながらつけたラジオから流れてきたのは天気予報。
『……地方は快晴。風も穏やかでお出かけ日和になるでしょう』
「行ってみるか」
 特に予定があるわけではないし、珈琲ショップの近くに新しいデリの店も出来たとどこかで聞いたな。とオルソンは思う。

 丁寧にドリップしたコーヒーを片手に英字新聞を手に取る。
「世の中は暗いニュースばかりだな」
 それらがオルソンに何か大きな影響を与えることは少ないが、そう言うニュースばかりを目にするのは少しばかり気が滅入る。
「このところのんびり街を散策していなかったし、気分転換にはちょうどいいだろう」
 1週間も経てば街は変わる。
 古い店が消え、新しい店ができ、そうでない店にも新しい商品が入荷され、季節に合わせたキャンペーンが始まる。
 そう言う移り変わりを見るのがオルソンは嫌いではなかった。
 事業を展開していた頃は、市場調査の一環としてしか見れなかったが仕事を離れて見てみれば、案外楽しいものだと気が付いた。
「我が社の売れ行きも見てみたいしな」
 新しい自社製品が発売されたのは数日前のことだったはず。
 隠居した身とはいえ、自分が一から興した会社の製品だ。
 気にならないと言ったら嘘になる。
「……朝食ははあそこで取るか」
 豆を買った時に立ち寄ったカフェがモーニングもやっていた事を思い出し、用意し始めていた食器を片付ける。
 身の回りのことは基本的に自分でこなす彼にも苦手なことは一つだけあった。
 料理である。
 人並み以上の料理を作れるので苦手と言うと語弊があるかもしれないが、自分の料理では彼自身の肥えた舌を満足させられない。
 飲み終えたマグカップを洗い時計を見る。
 これから準備をして出かければ丁度いい時間だ。
「いい日になりそうだ」
 そう呟いてオルソンは口元に笑みを浮かべた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 8809 / オルソン・ルースター / 男性 / 43歳 / 悠々自適な日々 】
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年11月29日

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