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『切れた縁の続き 』
ジャンクka4072

 ジャンク(ka4072)の記憶は戦いと共にあった。
 最初の記憶くらいしかまともな生活はなかったかもしれない。
 しかし、辺境……赤き大地に生まれし者は戦いは必須。
 各地の戦いを傭兵として駆け巡った。
 戦場で目と足をやられ、粗悪品の義肢は彼のトレードマーク。
 傭兵隊もいくつも巡る。いい奴、悪い奴もいた。忘れた奴もいるかもしれない。
 部下への武器、食料を疎かにし、自身の命を愛護しようとしていた上司を利用することもあった。
 散った命、生き残った同業者との別れの後、ジャンクはハンターとなっていた。

 とある依頼を受けたジャンクは要塞都市に姿を現していた。
 いつもながら賑やかな街だ。
 依頼人とは明日、顔を合わせる予定だ。暇を持て余したジャンクは前乗りで街に現れていた。
 今日はどこで飲もうかなと思いながら歩いていたが、まだお天道様は青空にいる。
 昼酒をして早々に寝てしまえばいいとも考えていた。
「ジャンク!」
 自分の名前を呼ばれ、ジャンクは足を止める。
 声からして自分と同年代。
 よく覚えている。
 ゆっくり、ゆっくりとジャンクは振り向くと、自分の後方に見覚えのある顔があった。
 やっぱりだ……。
「あんた……!」
 目をこれ以上開かないといわんばかりにジャンクは驚きの表情を見せた。
「おいおい。これ以上目をかっ開くと、目ン玉こぼれっちまうぜ!」
 豪快に笑う男は元同業者。
「そりゃ、驚くだろう! 生きてたのか!」
「一応生きてたぜ!」
「折角会ったんだから、一杯飲もうぜ」
 再会を祝うには酒は不可欠だ。
 昼から飲める店へ二人は入っていった。

 乾杯をした二人は互いの命があることを喜んだ。
「あのあと、どうしたんだ?」
 何気なく同業者が尋ねると、ジャンクは思い出しながら当時の話をしていた。
 あれからも暫くは傭兵業をしていた事。
 それからハンターになった事。
「ハンターか。今はリアルブルーからの移転者が溢れてるって聞いたな」
「ああ、連中の技術で今はかなり動ける」
 リアルブルーの技術はクリムゾンウェストにはないものが多い。医療技術でジャンクの身体がかなり自由になったのだ。
「利用価値を失った故障品じゃなくなったが、はったりが効くしな」
 ぱっと、手を広げておどけるジャンクの様子に同業者は「変わらずだな」と笑った。
 ジャンクが記憶している同業者を最後に見たのは、ある作戦で当時彼らの上司が絶望的状況を鑑み、部下を見捨て、食料や金銭を持って逃亡を企てていたことに気づいた時だ。
 たった一人の人間の我儘で数十人の人間が命を失いかねないことは誰にでもわかること。
 無能な上司だとジャンクは判断した。
 そして、同じく気づいていた同業者の男と共に同僚の命を一人でも生かせる為、二人は知恵を働かせる。
 上司を出し抜き、仲間が逃げていった時、ジャンクは上司と対峙することになった。
 その時は崖の上であり、もし取っ組み合いになれば、崖下に落ちていたのかもしれない。
 殺されると思ってもジャンクは逃げる術を考えていた。
 だが、あっけなく彼は生きた。
 その代わり、上官と目の前の男が崖下に落ちて。
「あん時、あんたが俺を助けてくれた……崖の下は底が見えないほどの高さだ。生きているかもわからなかったし、歪虚の攻撃もあって、逃げるしかなかった」
「なんだ、気にしてるのか。俺ァ、お前に生きろと言ったじゃねぇか」
 あっけらかんと笑う男は全く気にしてなく、何とか生き延びて、助けてくれた辺境部族の女と夫婦になった話をした。
「そこの部族も帝国に帰依しててな、今はここで住んでいるんだ。娘もいて、孫が生まれたんだ」
「孫!」
 マジかよと叫ぶような声をジャンクが上げる。
「おぅおぅ、可愛いぜぇ」
 デレデレ笑う同業者は本当に幸せそうだ。
「飲もうぜ!」
「おう!」
 今度会いに来いなどと言いながら、二人はどんどん飲んでいった。
 それから数時間後、ジャンクは酔い潰れて寝てしまい、店員に「店じまい」と言われて起こされる。
「酔い潰れるなんてひっさしぶりだな……」
 提示された請求金額は一人前。
 同業者の姿はなかった。
 なんだよ、奢ったのに……と思いながらジャンクは金を払って店を出た。
 夜空に浮かぶ星がとても綺麗だと彼は思う。


 翌朝、ジャンクは他のハンターと共に依頼人の家に行った。
 赤ん坊を抱く若い女性。旦那は働きに出てるようだ。
 依頼人はジャンクを見て目を見張る。
「すみません、父の友人に似てて……」
 依頼人の父親は元傭兵で、ジャンクという戦友の話をしていたと言う。特徴もジャンクが昨日再会した友人と似ている。
「その親爺さんは……」
「……先月、死にました。彼が幸せにしているか心配しながら」
 きっと、心配して会いに来てくれたのだろうとジャンクは思う。
「楽しくはやってるさ」
 そう言ってジャンクは人懐っこい笑みを浮かべた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ジャンク/ka4072/男性/53歳/猟撃士】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご発注ありがとうございます。
何を書いていいのかドキドキワクワク狼狽えてました。
過去があるオジサマなので、こんなこともあったのでは……と思いながら書かせていただきました。
おまかせノベル -
鷹羽柊架 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年11月30日

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