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『『苦手なのは』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 冬が近づいたある、晴天の日のこと。
 仕事の合間、公園での休憩中――。
「そういえば」
 遊具で遊ぶ子ども達の姿を見ながら、アレスディア・ヴォルフリートは隣に座るディラ・ビラジスに聞いてみた。
「子どもは苦手だ、と言っていたな。だが、嫌いだとは聞いたことがない」
 穏やかに子ども達を見守るアレスディアと違い、ディラは仕事じゃなければ子どもの方を見ようともしない。
「苦手と嫌いは同じようで少し違うのではないか」
 アレスディアの言葉に、ディラは難しそうな顔をする。
「扱いがわからない、うっかり踏み潰しそうになる、とも言っていたことがあるが、それはつまり、子ども達の身を案じてのことではないか」
 ディラの顔はますます厳しくなる。
「苦手かも知れぬが、嫌いではないのだろう?」
「……関わりたくないし、近づかれても困る……つまり、嫌(イヤ)だ」
 そう答え、だけど、とディラは付け加える。
「虐げたいとか、嫌悪してるとかそういうんじゃない」
 彼の答えに、アレスディアは少し考える。
 アレスディアが子どもになってしまった時、彼は戸惑いつつも彼女の面倒を看てくれた。ディラに何もしてあげることができない自分に、きちんと愛情を持って接してくれた。
 恐らくは、自分に近しい命ならば、大人子供関係なく大切に出来る、のだとは思う。
「嫌、か。そうだな、誰にだって嫌なもの、苦手なものはある」
 そう言うと、ディラは険しい顔つきのまま首を縦に振った。本当に嫌そうだ。
「今すぐ無理にでも子どもと触れ合わせよう、とは思っておらぬ。だが……」
 アレスディアは苦笑し、何かを考え、ディラの顔色をうかがいながらこう続けた。
「この前の、ハロウィンのときのようなことがあるかもしれぬ。機会があれば、少しずつでも慣れておくと、良いかも知れぬ、な?」
 ディラはちらっと遊具で遊ぶ子ども達に目を向け、うーんとうなり声を上げる。
「そんなに嫌か?」
「んー、説明するのは難しいんだが、ダメなんだよな……。威嚇や言葉の通じないガキは」
「そうか……」
 何らかの事情で戦いの場より退くことがあるのなら、紛争地域や途上国などの教育を受けられない子ども達に教育を、とアレスディアは考えていた。ディラにそれを打ち明けたらどう思うかと迷っていたのだが……。
「ヤンキーとか、ストリートチルドレンとかそういうの相手してる方が楽」
「……ん? ヤンキーはともかく、ストリートチルドレンは子どもだが?」
「ヤンキーは威嚇も人語も通じるし、自力で生きてるストリートチルドレンは嫌いじゃない。よーするに、俺は保護者のいる幼児が特に嫌なんだろうな」
 誰かの大切な子だから、どう扱ったらよいのか分からず、傷付けても泣かれても困るので、苦手……ということだろうかと、アレスディアは感じた。
 それならば、彼に合わせる形で、自分の考えを打ち明けたら、案外ディラはすんなりと受け入れてくれるかもしれない。
 貧しい子ども達よりも、もっと過酷な場所。
 親も家もなく、路上で暮らしている子どもたち。
 彼らに教育の場をと話を持ちかけたのなら、彼は喜んでついてくるのではないか、と。
「それと当然だけど、子ども姿のアレスのことは……可愛いと思った。凄く」
 と、ディラはアレスディアを見詰める。
 可愛いと言われたこと、そしてあの時のことを思いだして、アレスディアは少し照れてしまう。
「ううむ……子どもの頃のディラも可愛かったぞ。会ったのは夢の中だが」
「ん?」
「互いに、子どもの姿で会えたら面白いかもしれぬな」
 不可解な顔をするディラに、そう微笑みかけると、
「確かに、面白そうだ。あんな風に、無邪気に遊んでみるのもいいかもしれない」
 ディラは遊具で遊ぶ子ども達に、アレスディアと同じような穏やかな目を向けたのだった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
教育を受けられない子ども達に教育……ディラも勉強や道徳を習う立場だったり?
彼、知能は低くないと思うのですが、教養はあまりないので。
教室の後ろに待機して子ども達を見守りながら、実は自分もアレスディア先生の授業を受けている、といったディラの姿が思い浮かびました……!
東京怪談ノベル(シングル) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年11月30日

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