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『光の味 』
海峰aa5148hero002

 縁というものはいつどこで出来上がるものなのか分からないな、と海峰は思う。
 次いで、そっと手を合わせてから彼は一時祈りを捧げた。その眼前にあるのは、蒸しあがったばかりのふっくらとした中華まんであった。

 小籠包が美味しいと評判の中華料理屋に何度か通っている内に、店主と顔見知りになったのが今回の件のきっかけだった。食べ歩きを趣味としている海峰の舌をどうやら店主は信頼しているらしく、新作の中華まんの味見を頼んできたのである。
 急かす店主に促され、海峰は中華まんを手に取った。口に入れた瞬間に、ふっくらとした感触を唇に残し肉汁と共に溢れ出た具材の味が口内を満たす。
「美味だ。食べた事がない組み合わせで、新鮮に感じる」
 味の感想を聞かれ、しばらく真剣に考えた後彼は一つ一つ丁寧に言葉にしていった。布で目を覆い隠しどこかぶっきらぼうな態度の彼は、他者から見ると少し感情が分かりにくい。だが、表情こそさして普段と変わらないものの紡がれる言葉は好意的なものばかりで、店主は安堵したようにホッと息を吐いた。
「む? 何か気分を害したか?」
 その仕草を落胆の溜息だと思ったのか、心配そうにそう尋ねる彼に店主は首を横に振り笑う。
 真面目だが少し世間知らずのところがある彼の言う言葉に、嘘はないだろう。この中華まんは流行るに違いない、と確信した店主は、すでに食べ終わった海峰にサービスだともうもう一つ中華まんを差し出すのだった。

 ◆

 それからいくつか飲食店を回り、休暇を満喫した海峰は帰路へとつく。通り道の公園からは、楽しげにはしゃぐ子供達の声が聞こえてきた。
 かつての記憶は朧気で、海峰が元の世界に関して思い出せる事は少ない。だが、この場所程明るく穏やかな時間は流れていなかった事は確かだ。当たり前のように自由な日常を過ごす者達の姿が、海峰の心に安らぎをもたらす。
 ふと、自身の人よりも鋭敏な鼻孔をくすぐった炊きたての米の香りに、海峰は思わず柔らかな表情を浮かべた。
 海峰が世話になっている家は、もうすぐそこだ。向かう足の迷いのなさが、相手と共に過ごしてきた年月を物語る。
 今では毎日のように口にするようになった米の味は、いまや海峰にとってすっかり慣れ親しんだ味となっていた。毎日食べていても、その美味しさに飽きる事はないのだから不思議なものである。
 もし光に味があるとしたら、炊きたての米と似た味がしてもおかしくはないだろう。真面目な顔で、そんな事を考えてしまう程だ。

 そういえば、この世界にきてから初めて口にした食事も、まるで光のように温かく柔らかな味だった事を海峰は思い出す。
 怪我のせいで満足に動かぬ身体で、突然見知らぬ異世界へと放り出され行き場を失っていたあの日の自分。
 確かにあの日、海峰に光は差したのだろう。自分を発見してくれた恩人が、差し伸べてくれた善意の手。その手がなかったら、今の海峰は恐らく存在していない。
(そろそろ、次の依頼を受ける頃合いか。帰宅次第提案してみよう)
 だから海峰は『英雄』となり、あの日恩人の手を掴んだ手を、今度は別の者へと差し伸べるのだ。
 海峰が人を救うために手を伸ばす事。それは、あの日彼に救いの手を差し伸べてくれた者に対する、最大の報いとなるのだから。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa5148hero002/海峰/男性/20/バトルメディック】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご発注ありがとうございました! ライターのしまだです。
食べ歩きがご趣味とプロフィールにあったので、ご飯に関する一場面を綴らせていただきました。海峰さんのお口に合うお話になっていましたら幸いです。
何か不備等ございましたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
それでは、このたびはご発注誠にありがとうございました。またいつか機会がございましたら、その時はよろしくお願いいたします!
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2018年12月03日

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