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『『シルミルテの単独廃墟探索!! 〜本日のゴーストグルメ:番外編〜 』 』
シルミルテaa0340hero001


「(いた、ヤツだ)」
 その日N男(仮名)は電柱の裏側に立ち、帽子からうさ耳を生やした幼女の後をつけていた。N男(仮名)の名誉のために言っておくが、N男は決して世間から石を投げられるような性癖の持ち主ではない。
 話は三週間前に遡る。当時N男は山の中にある病院で仲間達とフィーバーしていた。病院は既に荒れ果て、草が生え、壁は崩れ、廃墟と呼ばれる代物へと変貌を遂げていたが、N男と仲間にとってはあまり関係ない事だった。いつからかは忘れたが、N男は仲間達と共にその廃病院に陣取って、歌ったり騒いだりフィーバーしたりと余生を謳歌していたのだ。
 そこに三週間前突如現れたのがあのうさ耳幼女、いやうさ耳幼女の皮を被った悪魔。ヤツは
『お邪魔しマース』
 と律儀に挨拶しながら遠慮なく玄関の扉を開け、病院に入った。N男と仲間は物陰からそれを見ていた。機械で作ったような妙な声をしているが幼女、それも結構可愛い幼女である。おいちょっとおどかしてこいよー、なんだよお前がいけよーと仲間とふざけ合っていると、当然、
『いタ』
 と声がした。
 幼女がこちらを向いていた。
 兎が描かれた可愛い眼帯、をつけたうさ耳幼女が、こっちを見ながら『にぱあっ』と満面の笑みを見せ。
 そして。
「(あああああああああ!!!)」
 N男はおそましさのあまり電柱に頭を叩きつけた。もっともN男が頭で電柱を叩こうとも、叩けず頭が電柱にずぶりと沈むだけなのだが。
 悪夢だった。こうしてまだここにいられるのは奇跡だと心底思う。あのうさ耳幼女、いや悪魔は、N男と仲間達を発見すると即座にこちらに飛び込んできた。まさに兎のごとく。
 そして仲間を捕らえるとぱくりと口に入れたのだ。口に。あの綿あめでも食べている方がぴったりだろう口に。仲間はあっという間にもしゃもしゃと食べ尽され、仲間を食べきった幼女は顔を歪めてこう言った。
『おいしクなイ』
 その後はただの蹂躙だった。逃げろと叫ぶ仲間。捕らえられる友人。襲い掛かるうさ耳幼女。病院に自分達の悲鳴と『おいしクなイ』『おいしクなイ』という悪魔の声が木霊する。
「(いやそこは嘘でも『おいしい』って言えよ! 食われた仲間に失礼だろうが!)」
 問題はそこではないし言いたい事もそこではない。とにかく何が言いたいかと言うと、N男はあの幼女に仲間を食い尽くされた。その復讐のためにはるばるここまでやってきたという事だ。長かった。幼女が何処の誰なのかまったくもって分からなかったし、っていうか怖くてしばらくの間動けなかった。
 だが仲間の仇を取らずに安穏と余生は送れない。それで電車に無賃乗車しなんやかんやあってようやく仇に巡り合ったという訳だ。まったく運がいい。二度目の人生を使い切っても見つからない可能性もあったというのに。
 さてそれでは、一体どうやって復讐を遂げてやろう。N男はそこまで大物じゃないが、むしろ山奥の廃病院で仲間とフィーバーしているザコだが、頑張ればベランダの鉢植えを落とし悪魔の頭をぱっかーんするぐらいの事は出来るだろう。
 よしそれでいこう。後悔してももう遅い。俺の仲間を奪った罪を償わせてやるぜへっへっへ
『お、いル』


『美味シいごはんガ食べタいノ!』
 と水落不動産に逆依頼を出したのが、シルミルテ(aa0340hero001)がその廃病院を訪れたきっかけだった。
 水落不動産は時々シルミルテに所有物件の「霊的」清掃を依頼して、シルミルテはそこで料理以外の「ごはん」を頂戴する、そういう関係が成り立っているが、たまにはただの「ごはん」じゃなく「美味しいごはん」が食べたい。その欲求足るや「ごはん」食べ放題の夢を見て、目が覚めてがっかりしたレベル。という訳でシルミルテは逆依頼を出してみた。
 それで山奥の廃病院を紹介されたのが三週間前。元々は白かっただろう病院は周囲の樹々に侵蝕され、中は荒れ果て薄暗く日中でもまあまあ不気味。「美しい廃墟」としてより「心霊スポット」の方で需要があるかもしれない。
 だが「ごはん」所としては眉間に皺の寄る出来だった。量はあった。食べ放題だった。でも味がダメだった。シルミルテの好みは怨み深いタイプである。歌ったり騒いだりフィーバーしたりの連中ではシルミルテのお口に合わない。まあ「ごはん」の事情など、シルミルテには知る由もないが。
 シルミルテはN男(仮名)……シルミルテにとっては「電柱の裏側に立っていた野良幽霊」をもぐもぐと食べていた。野良幽霊には災難だろうが、シルミルテにとっては鴨葱というヤツである。そこにいた自分の不運を呪って頂くより他にない。
『ウン、ウン』
 シルミルテは時折頷きもぐもぐと咀嚼する。そしてごっくんと飲み下し、聞く者の誰もいない道の真ん中で感想を告げた。
『まあマアデすネ』
 そして頭上のうさ耳を揺らし、何事もなかったようにてくてくと歩いていった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【シルミルテ(aa0340hero001)/外見性別:?/外見年齢:9/ソフィスビショップ 】
【N男/名もなき幽霊/ごはん】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。「シルミルテさんを『ごはん』側から見たら怖いだろうな」と思ったので、今回はごはん側視点でシルミルテさんを書いてみました。イメージや設定など齟齬がありました場合は、お手数ですがリテイクのご連絡お願い致します。
 この度はおまかせのご注文、誠にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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2018年12月03日

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