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『 色づくのは…… 』
エステル・クレティエka3783

 飴色の木枠、古い厚ぼったいガラスの波に似た歪みを通った陽光は柔らかい。
 とある雑貨店の壁際で店主と客のやり取りを眺めていたエステルは外へと視線を向ける。
「兄様、ちゃんと誘ったかな?」
 窓にこつんと額を当てた。
「聖輝節は1年に1度だけなんだから」
 語尾に溜息が混じったのは無意識のうちに自分に向けた言葉だったからだろうか。
 梁から下げられたドライフラワー、棚に並ぶアロマキャンドルや手書きラベルの茶葉の缶。幼い頃から見慣れた風景――仕入れに出かけた彼がいないのは良かったのか、残念なのか……自分でもわからない。
「恋の悩みかい?」
 接客を終えた店主に溜息を冗談めかされエステルは慌てて首を振って持ってきた籠を渡した。
「ホットワイン用の香辛料は最近風邪が流行っているのでジンジャーとシナモンを多めにしたとのことです」
 薬草師である母が調合した茶葉やエステルが作った防虫効果もあるポプリなど時々店に卸している。
「聖輝節っぽい包装もできる?」
 ひーふー……品物を数えていた店主がレースに包まれたポプリを手に取る。
 可愛らしい小物が好きなエステルの発案で店に卸す品にはレースやリボンでおめかしを施していた。
 これが客――主に若い女性に好評で聖輝節のプレゼントにしたいという要望が多いらしい。
「じゃあ次はそうしてみますね」
 誰かに喜ばれたり必要とされるのは純粋に嬉しい。いずれ母のように薬草師や魔術師として頼られるようにもなりたいが。
 去り際店主がエステルに投げて寄こした淡い薔薇色の小さな石。
「恋のお守りだって」
「おば様、だからちが……」
「うん、うん」
 みなまで言うな、としたり顔。頑張れ、若人!と背中に送られるエール。

 雑貨店から通り一つ向こうの手芸店へ。切り盛りしている老女はエステルが幼い頃から揺り椅子が似合うお婆ちゃんだ。
 ワゴンに積まれた端切れから包装に使えそうなものを探す。
 それからボタンの入ったカップを覗く。雪の結晶や柊、この時期ならではモチーフが多い。値段は――。
「むむむ」
 聖輝節だもの奮発してもいいよね――素敵な思い出を作る手助けになりますようにと願いを込めて一つずつ選んでいく。

 森近くの自宅へ続く道の左右に広がる葡萄畑。
 なだらかな丘陵一面の葡萄畑は光を受けて黄金の海のようだ。
 夕暮れまでまだ時間があるからと家に立ち寄り横笛を持ち森へと向かう。
 軽やかに落ち葉を踏んで木々の合間を進み、小さな陽だまりへ出た。
 目を閉じて空を仰ぐ。
 色づいた葉を通して落ちる光。
 木々を渡る風。
 それらを肌で感じて。
 己が感じたものを奏でる友人。
 自分が感じたことを即興で――横笛に宛がう唇。
 落葉を踏む足音から。

 じゃあ、こんなのはどうかな?

 親友のリュートの音が聞こえたような気がした。

 兄の背を押したり、ちょっとダメな所を叱ったり……。

 ずっと私の役目だったけど……。

 ほんの本当にほんのちょっとだけ寂しい気もする。でもそれ以上に親友と兄が幸せいっぱいに笑ってくれる方が嬉しい。
 だって自分は兄の妹であり彼女の親友であることはずっと変わらないのだから。勿論どんな結果になっても。

 なら……私は?

 兄のおかげで収穫祭で踊ることはできた。
 来年の約束だって自分でできた。
 そこから先は。そもそも今年の聖輝節は――

「あ〜もぅ」

 横笛を抱いてエステルは落葉に倒れ込む。

「……」

 帰ろう、冷たくなってきた風に起き上がる。

 森から自宅の裏庭に回り、母の薬草園に立ち寄る。
 薬草園を囲む生垣は裏庭で遊ぶ子供たちが誤って踏み荒らしたりしないように。だが逆に子供にとってその生垣のトンネルを抜けて薬草園に入ることがちょっとした探検になっていた。
「いけるかな?」
 自分とトンネルを見比べる。
 摘んだ薬草を入れた籠と横笛は切り揃えられた生垣の上に置いて。いざトンネルへ――。
「っ、たたた」
 あっちこっち枝に引っ掻かれ、なんとかトンネルを抜けた矢先。
「探検ごっこ?」
 掛けられた声にエステルが停止した。
「ど、ど……」
 どうしてここに――言葉が続かず、その青年を見上げて瞬きを繰り返すばかり。
 薬用の小瓶の仕入れをお願いしていたことなど頭からすっぽりだ。
「懐かしいなぁ」
 青年は「ちょっとごめんね」と手を伸ばし、エステルの髪から枯葉をさらう。
「……ありが、とうございます」
 指先が髪に触れたような。言葉は出たが今度はまともに顔を見られない。
 顔赤くないかな、子供っぽいって思われた?――立ち上がれないエステルの前に手が差し伸べられる。
「どうぞ王子様?」
 懐かしい収穫祭の即興劇。
「まったく恰好つかないね」
 これ幸いに芝居がかった台詞と仕草で揺れる感情を隠す。
 手を振る青年を見送ったエステルの手は無意識のうちに髪へ――。

「風が……気持ちいいな……」

 晩秋の冷たい風が火照った頬を撫でていく。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka3783 / エステル・クレティエ 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございます。桐崎です。

設定で拝見してからどうしても頭から離れなかったことを今回形にさせていただきました。
とても楽しく書かせて頂きました。
そしてかなり好き放題しております。
ですので気になる点がありましたら、お気軽にお問合せ下さいませ。

それでは失礼させて頂きます(礼)。
おまかせノベル -
桐崎ふみお クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2018年12月12日

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