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『平穏なる一時 』
彩咲 姫乃aa0941

「うえーい、さみー」
 突き刺すような冷たい風が身に染みる朝の八時。
 学校に登校する姫乃はやっぱりタイツをはいてくればよかったと後悔していた。
 最悪共鳴すれば寒さは何とかなるが、こうひと目が多いところで共鳴するのは、何かをひけらかしている感じがしてあまり乗り気になれない。
 そんな姫乃は短めのスカートが風で持ちあがるのを感じる。
「ひうっ」
 そうお尻を押さえる姫乃は頬を赤くしたまま振りかえる。するとそこには少女が立っていた。
「おっす、ミヤ」
「おはよう、ひめちゃん」
 彼女は姫乃の古い友人である。
 駄目な中学デビューをした姫乃にも変わらずに接し続けた善人。クラスでも人気が出そうな才色兼備。ただ、姫乃には甘々なのである。
「今日は大人っぽいのはいてるね」
「すぱっつだから、誤解を招くようなことは言わないで」
 そう姫乃は口をとがらせて告げる。
 衣服の変化とは怖いもので、姫乃は制服に袖を通すと口調や仕草が女の子になってしまう。
 それでも根本のダウナーな性格は抜けないので。
「ねみー」
 そう教室につくなり机に突っ伏したのだった。
「ねむたーい」
 机にたどり着くころに女子校生が板についたようで声音からして完全に女子、昨日まで王子様をやっていた姫乃にとってそれはトンでもない落差である。
「糖分足りてる?」
 自分の机に荷物を片付けた幼馴染がそうチョコレートをさしだしてきた。
「食べさせて〜」
「え〜」
「あらあら、そんなことでどうするのさ。今日部活あるのに」
 そう振り返って声をかけてきたのは中学に入ると同時に仲良くなった少女。
 ちなみに本名が男っぽいので仇名で呼ばせているという経緯がある。
「まぁ、放課後には血圧も上がってるんじゃない? 心配しなくてもボコボコにしてあげる」
 最近発売された格闘ゲームを学校に持ちこんで遊ぶ算段をつけていた一行。
 ちなみに姫乃が所属している部活は漫画ゲーム同好会である。
 漫画やアニメを見てグータラすることもあれば、ゲームやTRPGに白熱することもある。
「放課後ね……」
 そう姫乃がチョコを口の中で溶かしながら眠りつこうとしたとき。
「あ、あいつが今日弁当作ってきたって」
 そう彼が告げるものだから姫乃は飛び降りた。
「あのこ のおべんとう?」
 目を輝かせた姫乃はむふふと昼休みに思いをはせる。
 お昼になると中庭で待っていると告げた少女の元に三人で向かう姫乃。 
 見れば姫乃とおなじくらいの背丈で、大人しそうな少女がマットをひいてこちらを手招きした。
 ちなみにこの学校の中庭はガラスの温室になっており寒くない。
「昨日はなに? おしごとだったの?」
 そう幼馴染の膝枕で横になる姫乃は少女お手製のお弁当をあーんしてもらう。
「いや、違う、昨日は……」
「あ! そうだテレビで見たよ、特番のあれでしょ? 新米アイドルメインの」
 直後姫乃は卵焼きを吹きだした。
「きちゃな」
「くそ! 何でそれを」
 一瞬素に戻る姫乃だが、少女はニコニコと春巻きをさしだして姫乃の口をだまらせた。
「だって、テレビ回してたらそう言えばロミジュリだったなぁって」
「なになに? 何の話?」
 その言葉に幼馴染が経緯を話し始めてしまう。
「ひめちゃんってば、可愛い女の子とアイドル始めたんだよ」
「姫乃がアイドル?」
「しかも王子様なんだよ」
「王子様? 姫なのに?」
「あああああ、もうやめてーーー」
 そう姫乃は恥ずかしさを解消するために一人でから揚げを口にいっぱい詰め込む。
「それ! 私の分!」
「沢山あるから食べても大丈夫だよ」
「で? 姫乃どうだった?」
「どうってどういうこと?」
 苦笑いでから揚げを飲み下した姫乃は冷や汗をうかべて後ずさる。
「相方の女の子可愛いか?」
「え? ひかり? うん、まぁ人気は有るけど」
 まぁ姫乃としてはひかりは可愛くてかわいくて仕方がないわけではあるが。そんなの口が裂けても言えない。
「リンカーとしての仕事も続けながら、アイドルもやるの? すごいよねぇ、ひめちゃんは」
 そう幼馴染が頷くと姫乃は首を振る。
「そんなことないって、もっとすごい人もいるし」
「あ! あの人でしょ、知ってる、旅館の女将もやってる人。ねぇ会わせてよ」
 そうお弁当の御重を鞄から取り出す少女が姫乃に懇願した。
「それは、えっと、まぁ、また今度」
 誰もかれも忙しそうだから早々合わせられないとは思うけど。そう頭の中で思う姫乃。
「でも私は危ない仕事を減らして、アイドルしててくれた方がいいな」
 告げるのは幼馴染。箸をおいて姫乃の瞳をじっと見つめる。
「一時期、すごく元気なかったよね。でもまた笑ってくれるようになってくれてよかった」
 姫乃の瞳に一瞬陰りがさす、けれどすぐに心配をかけていた申し訳なさと、自分の事を心配してくれている嬉しさでいっぱいになった。
「ごめんな、みんな、でももういろいろ決着ついたからさ、前みたいな危ないこともうしないと思う」 
 そう項垂れてもう一度全員を観る、すると姫乃は言った。
「ごめんね、みんな」
 そんな姫乃の頭をスパーンと友人が叩いた。
「マナ……」
「しみったれた空気なんて似合わない。あんたが私達を心配にさせるのはいつものこと。だからそんな悲しい顔しないの」
「うん、そうだね」
 告げると姫乃は元気よくお弁当を食べ始めた。これなら午後の授業も部活も乗り切れそうである。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『彩咲 姫乃(aa0941@WTZERO)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております鳴海でございます。
 今回は日常の一コマということで、和気あいあいとしつつ姫乃さんが友人間でどんな存在なのかかければいいなぁと思ってかいてみました。
 気に入っていただければ幸いです。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
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2018年12月13日

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