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『Ex.snapshot 001 麻生 遊夜 × ユフォアリーヤ 』
麻生 遊夜aa0452)&ユフォアリーヤaa0452hero001





 ずっとずっと、ずぅっと、一緒。

 絶対に、家族を守る。子供たちみんな、守ってみせる。

 俺の手で。
 ボクの…手で。

 ――――――『絶対』に。











 出逢えたのは、殆ど奇蹟みたいな事だったのだと思う。
 済まないとは思っているが、出逢った当時の細かい事は何も憶えていない。ただ、何もかも無くしたところで見付けた運命の相手、だった事だけは言い切れる相手。
 リーヤ――ユフォアリーヤ。
 何より大切な、守らなければならない、とまず思った――ひとりめの新しい家族。

 ただ。

 当時、英雄≪リライヴァー≫である半人半獣のリーヤと共に敵を討ちはしたけれど、激闘の末こちらも瀕死の重体となっていたらしい、と言う漠然とした情報以上は――自分は、リーヤと出逢ったその時の記憶を持ち合わせていない。機械化を受け入れアイアンパンクになった事や、H.O.P.E.に志願して能力者≪ライヴスリンカー≫となった辺りが、今の自分の始まりの記憶になる。
 …何と言うか、リーヤと初めに出逢ったその時の事を憶えていないのは今でもちょっと悔しかったりする(これではまるでリーヤだけを辛い目に遭わせてしまったようでもあるし)。勿論、共に戦った以上は誓約――になるだろう事はしたのだろうし、その内容や意味も心に刻まれたままなのだろうとは思う。
 つまり記憶が無くとも同じ。何も、変わってはいない――いや、リーヤと共に歩むと誓い直した際の誓約と出逢った当初の想いはそれなりに変わって来ている可能性もあるか。ただ、もし変わっていたのだとしてもより互いの絆が深まる方向に変わった、のであろうと確信はある。…記憶が無い以上、はっきりとした根拠は無いのだが。
 なら失った記憶を取り戻そう、とは思わないのかと言われれば、どうにも躊躇いを覚えるとしか言えない。今現在記憶を失っていると言う時点で、失っていた方がいい、と自分の頭が判断している事にもなるだろうし、リーヤの態度や微妙な空気からしても――いや、言い訳か。過去の記憶について考えようとすると、どうしようもない喪失感を伴う不安に駆られる。だから、失わないよう守らなければと改めて強く思う。
 …つまりは自分が思い出したくないだけだ。
 そしてその、必要も無い。

 今ここに、かけがえのない日常、があるのだから。
 過去に何があったとしても今、リーヤとの絆は、深まっていくばかりな訳だから。
 だから、今のまま――このまま進み続けて、いいのだろう、と思う。

 群れを失ったのだと言う、一匹の――愛しい愛しい黒い狼が。
 俺を選んで、来てくれた。
 それ以外に何が必要だ?

 俺が必要だと、俺に全てを捧げて――愛情を注いでくれる大切な相方。
 年の差がとか種族が違うだとか、拘るのも莫迦らしいくらいに、いつでも真っ直ぐ俺を求めて来る。
 俺の方でも受け入れるだけの度量がなければ、格好が付かないし、情けないじゃないか。

 孤独な者同士の傷の舐め合い? 上等だろう。
 リーヤが求めるなら、望むところだ。
 リーヤを想う気持ちには、嘘の一欠片もありはしない。
 傷の舐め合いでもあるだろうし、誰憚る事無く言い切れる愛情でもある。
 それが両立しないなんて誰が決めた?

 リーヤは何より大切な、ひとりめの新しい家族。
 ああ、今はもう家族はひとりどころじゃない。
 あれから、二十八人も子供が出来た。…孤児院に居るみんなが全員、俺たちの守るべき、俺たちの子供。

 ………………それに、リーヤが。
 待ち望んでいた新しい家族を、ふたりも俺に逢わせてくれたんだ。











 たったひとりの相方を見付けて、新しい群れが作れた。

 全部全部…ユーヤのおかげ。
 ユーヤが居たから…ユーヤと居られるから、出来た事。
 記憶が無くなったって、ずっと傍に居させてくれたから。
 ずっとずっと一緒に、戦ってくれたから。
 ボクの事をリーヤって呼んで…ちゃんと愛してくれたから。
 ボクの事…全部、受け止めてくれたから。
 だから絶対に…今度こそ失ったり、しない。

 ユーヤの為なら何でもする。
 ボクが居て…今のユーヤが幸せなら、ユーヤを守れるなら、何でもいい。

 新しく出来た群れの子たちの事だって…いっぱいいっぱい…面倒見てあげるんだ。
 ボクに出来る事…何でも…してあげるんだ。

 何をしたら…いいだろう…。

 ユーヤと…一緒に。
 ボクの名前の中にだって、ユーヤの名前が含まれてる。ボクとユーヤは名前だってお揃いで、一緒なんだから。
 だから、ユーヤに…釣り合うように。
 頑張らなくちゃ…って、思うから。
 …うん。群れの子たちになら…家族になら…触られたって…大丈夫なようになったし。
 ごはんだってつくるし。御掃除とか御洗濯とか…そういう色々な事、子供たちに御手伝いもしてもらったりして…一緒に色々…たくさんするんだ。そうやって…群れの中で…生きてくのに必要な事、いっぱい、教えてあげるんだ。
 勿論…遊んでだってあげるし。
 おかーさん、って言ってもらえると…気持ちがふわふわあったかくなる。
 やんちゃな子もやさしい子もおっとりな子もみんなみんな…ずっと見守っててあげたくなる。

 ユーヤがみんなのおとーさんで。
 ボクは…みんなのおかーさんになったんだから。…おかーさんに、なれたんだから。

 ユーヤの赤ちゃんだって、産めたんだから。
 まだまだ…出来る事…たくさん…ある。

 もっといっぱい…ユーヤと一緒に…ユーヤに何してあげられる…?







 じー、と黒く濡れ――ているだろう気だるげな視線がぐっさり突き刺さる。
 夜の帳もそろそろ下りる頃。手が空いたところを見計らい、パソコンに向かって孤児院の収支と格闘している麻生遊夜の背中。…予期せぬ出費さえ無ければ今月はまぁ何とかなりそうか、と思いつつ、遊夜は自分に突き刺さるその視線をちょっと不思議に思う。自分を見ているその『視線の主』と自分との間が――何故か珍しく離れているのが不思議に思う理由の最たるもの。そして「そうしている間」がやけに長いから余計に不思議、と言う面もある。取り敢えず、その視線の主が誰であるかだけは遊夜は完全にわかっているのだけれど。

 リーヤ――つまり相方のユフォアリーヤ、である。

 内心首を傾げつつ振り返り、視線の主であるリーヤを見――ようとした時、リーヤは今度こそとりゃっとばかりに遊夜の首っ玉に抱き付いて来た。…その時点で遊夜は少しほっとする。
 これなら、いつも通りだから。
 でも。

「どうしたんだ? 何かあったのか?」
 リーヤ。
「…ん…いつもの…事」
 麻生遊夜の――ユーヤの事を見てるのは。
「ああ、まぁそれはそうだろうが…見てる『だけ』だったのがどうしてかなと」
 いつもなら見てるだけじゃなく、すぐくっついて来るだろう? 今はそうするまでに随分間があったから。そう続けたら――ふにゃんと笑い、リーヤはこちらを見上げて来る。
「ん…ユーヤの背中、見てた」
 とってもとっても…大きな、背中。
「ん? いや…」
 大きいか? と俄かに疑問が浮かぶ。…皆までは言わない。リーヤの言う事を否定する気は毛頭無いが…遊夜にしてみれば自分は小柄で軽い方――唯一身長だけはリーヤより高く、体格差としては辛うじて釣り合う程度で居られている、と言う厳然たる事実がある訳なので。つまり、体格の面だけで見るなら決して大きい方…では無いような気がする。勿論これも口には出さないが。
 が――そんな遊夜に、リーヤはふるふると首を横に振る。…遊夜が何を言い淀んだのかわかったらしく、先回り。
「大きい、よ。とっても頼れる…おとーさんの背中」
「…リーヤ」
「大好き」
 そのままリーヤは、ぐりぐりと遊夜の首筋に顔を埋めてくる。遊夜はその頭を、よしよし、とばかりに撫でて応えた。撫でられたリーヤも気持ち良さそうに目を細め、黒い狼耳を伏せている――ふさふさの尻尾もゆるやかに振られている。じんわりとした幸せな時間が暫し続く。
 互いの感触を堪能してから、あ、そうだごはん出来たから冷めない内にってユーヤ呼びに来たんだった、とぱちくり目を瞬かせ顔を上げるリーヤ。お、だったら早いとこ頂かないとな、と遊夜もすぐに受ける。そしてそれまで向かっていたパソコンの方に切りを付け――ようとした時。

 うあああああん、と、とっても賑やかな二重奏が響き渡った。
 新しい家族の、男の子と女の子の双子になる――赤ちゃんの泣き声が仲良くふたり分。
 おちちだろうかおむつだろうか、はたまたひとりでおとーさんのところに行ってしまったおかーさんを呼んでいるのか。「呼ばれた」時点で、リーヤも遊夜も意識が一気にそちらに向く。
 優先すべきは自分たちよりまずそちら。
 大事な大事な、子供たち。

 これは二人の邪魔じゃなくって、二人の新しいよろこびの形。
 たくさんの感情を、関係を、笑顔をくれる家族が増えた証だから。







 だから。

 ――――――『絶対』に。

 たくさんのよろこびを、しあわせをくれる子供たちと居られるこの日常を、ずっとずっと、守り通す。
 何も無かったところから一歩一歩二人で歩み、作り上げたこの新しい『家族』は、絶対に、絶対に手放さない。

 俺たちの手で。
 ボクたち…の手で。

 子供たちと居られる今のこの日常を、ずっとずっと、守って行くんだ。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0452/麻生 遊夜/男/34歳/アイアンパンク/命中適性】
【aa0452hero001/ユフォアリーヤ/女/16歳/ジャックポット】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 麻生遊夜様、ユフォアリーヤ様には初めまして。
 今回はおまかせノベルの発注有難う御座いました。果たして初めましての当方で本当に良かったのかと思いつつ。
 そして初めましてから大変お待たせしております。…当方こんな感じで毎度の如く作成期間を長く頂いてしまう輩なのですが、宜しければお見知り置き下さいませ。

 内容ですが、おまかせ…となるとキャラクター情報やら過去作品やらからして「こういう事あるんじゃないかな」と考えてみたキャラ紹介的な日常、がまず思い付くところなのですが、今回何となく双方の独白が書きたくなり、こんな形になりました。
 初めてお預かりするのにいきなり独白(内面描写)と言う無茶やらかしておりますが、致命的な読み違え等無ければ良いのですが…もし「こんな事考えないしこんな口調だったり態度じゃない」等あったら申し訳ありません(汗)

 如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、またの機会が頂ける時がありましたら、その時は。

 深海残月 拝
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2018年12月14日

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