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『何度雪が溶けたとしても 』
片薙 蓮司aa0636hero002)&伊集院 翼aa3674hero001)&伊集院 コトノハaa0636hero001)&片薙 渚aa3674hero002

「翼! すごいっすよ、一面の雪!」
 バスの窓から外を眺めていた片薙 渚は、視界に入ってきた白で覆われた世界に瞳を輝かせた。渚の隣に座っている幼馴染の伊集院 翼も、外の景色を見て笑みを浮かべる。
「翼はスキーにするんすよね? 自分はスノボにしようか、まだ悩んでるっす」
「ああ。スキーは久しぶりだし、いっぱい楽しみたいものだ」
 そう呟く翼は、いつになく張り切った様子だ。何せ、久しぶりなのはスキーをする事だけではない。二人が向かう先ですでに待っているであろう愛しい者の姿を思い浮かべ、少女達は笑みを深めた。
 待ち合わせをしている相手にもうすぐ到着する事を伝えるために、翼は携帯端末を取り出す。画面に表示されている日付は、十二月二十五日を示していた。……クリスマスだ。
 だが、今日彼女達が最も耳にするのはクリスマスソングでも鈴の音でもなく、愛しい人の笑い声だろう。
 渚達は、一泊二日を予定しているWデートの待ち合わせ場所に向かう最中なのだ。バスの目的地であるスキー場は、もうすぐそこだった。

 ◆

 スキー場の入口前に立っていた片薙 蓮司は、ふと遠くに二つの影が見えて緊張したように肩を強張らせた。まだ少し距離はあるが、それでもそれが渚達である事が彼には分かったのだ。
 慌てて自分の格好を確認してから、蓮司は隣にいる伊集院 コトノハの方を見やり相談し始める。
「俺、変じゃないよな?」
 この距離では女性陣には聞こえないと分かってはいるものの、つい声を潜めてしまった。
「変じゃないよ」
 そんな彼のいじらしい様子に、コトノハは優しげな声音でそう言い、ゆったりと首を横へと振る。そうこう話している内に、女子二人も蓮司達に気付いたらしい。あと少しの距離すら惜しいとでも言うように、彼女達は歩くペースを早めた。
 男達の前で、待ち合わせ相手……二人のそれぞれの妻が足を止める。片薙蓮司と片薙渚。伊集院コトノハと伊集院翼。今日のWデートの主役は、片薙夫妻と伊集院夫妻という二組の夫婦なのだ。
「つーちゃん!」
「コトノハ、久しぶりだ」
 翼の伊達メガネ越しの表情が、コトノハを捉えた瞬間に笑みに変わる。十二月の風は冷たく、スキーウェアを着ていても寒いくらいなのに、コトノハの顔を見た瞬間から胸のあたりから徐々に温かくなっていくように彼女は感じた。何だか照れくさくて、顔にいたってはむしろ熱いくらいだ。別居していたコトノハにこうしてまた会えた事を、彼女は光栄に思った。
 蓮司とコトノハは、今南アフリカで暮らしている。愛しい相手と会うのは、四人にとってひどく久しぶりの事であった。
 離れて暮らしている間も一日も忘れた事のなかった愛しい人が、手を伸ばせば届く範囲にいる。蓮司は思わず、渚の身体を抱きしめた。
「わっ、急になんっすか? 困るっす」
 言葉ではツンとした態度をとりつつも、渚は嬉しそうな表情を隠せずにいる。自然と、その手は蓮司の背中へと回っていた。
 懐かしい、何よりも安心する互いの体温に二人は身を預ける。そしてふと、微笑ましそうにこちらを見ているいくつもの視線に気付いて、ようやくここが人前だという事を思い出した。
 恥ずかしそうに、蓮司と渚はパッと身体を離す。照れくさそうに笑い合った二人は、周囲の注目を集めぬように気をつけながら、こっそりと手を繋ぐのだった。

 ◆

 四人はそれぞれ、ウィンタースポーツに興じるための支度を済ませる事にした。
 一番最初に支度を終えたのは、コトノハだ。今日の彼が身にまとっているのは、可愛らしさに少年の格好良さがプラスされたスキーウェア。手にはポールを握り、スキー板を足にはめている。コトノハは、スキーをチョイスしたのだ。危なげない滑りで集合場所に着いたコトノハは、他の三人が来るのを待ち始めた。
「お待たせっす」
 次にやってきたのは、渚だ。彼女の腕には、猫の柄が入ったスノーボードが抱えられていた。
「なっちゃんはスノボにしたんだ?」
「うん、ギリギリまで悩んだっすけど……なんとなく、こっちがいいと思って」
 答えながらも渚は、ついはにかんでしまう。スノーボードを選んだ理由は、蓮司がそちらにすると言っていたからだ。
「蓮ちゃんとおそろいだね」
「べ、別にそういう理由でスノボにしたわけじゃないっすけど」
「えー? すてきな理由だと思うよ、おそろい」
 図星をつかれ頬を真っ赤に染めた渚を、コトノハは微笑ましそうに見つめる。
 ちょうど支度が終わったらしい二つの影を見つけたコトノハはそちらに向かい滑って行き、スキー板を足にはめた翼の隣に並ぶと「ほら、僕もつーちゃんとおそろいだよー」と笑った。コトノハの明るく素直なその言葉に、慌ててしまっていた渚もつい和んでしまい、笑みを返す。
 リフトは、夫婦ごとに分かれて二人ずつ乗る事にした。宙の上で、彼らはしばし夫婦水入らずの時間を楽しむ。
「スキー楽しみだねー」
「ああ」
 コトノハと翼も、もちろん二人で並んでリフトへと腰をかけた。仲の良い夫婦である二人の会話は、自然と弾んでいった。会えていなかった長い時間の寂しさが、それを上回る楽しさでたちまち塗り替えられていく。スキーも楽しみだったが、こうして相手と会話をする事も彼らは楽しみにしていたのだ。顔を見て相手と話せる時間は、彼らにとってまるで幸福を詰め合わせたかのように充足した時間であった。
 渚と蓮司も、リフトへと乗る。前後のリフトとの距離は、思ったよりも遠い。横でコースを滑っている人達もみんな夢中で楽しんでいて、リフトに乗っている者をいちいち見ている暇などなさそうだ。
 そっと、蓮司達はどちらともなく肩を寄せ合った。先程離れがたく思った愛しい温度が、触れた肩から伝わってきてどきりとする。夫婦になってからも、ドキドキとした胸の高鳴りは落ち着く事はなかった。
 蓮司は渚の方を向く。当然のように、彼女はこちらを見ていた。ツンツンとした態度を取る事すら今は惜しいのか、その視線が逸らされる事はない。互いへの想いを確かめ合うように、二人は繋いでいる手に込める力を強めた。

 ゲレンデに、夫婦達の楽しげな声が響く。
 蓮司と渚が選んだのは、上級者向けのコースだ。経験者である二人は、難しいコースも難なく滑っていく。息もぴったりな二人の滑りは、まるでお手本のように綺麗なものだった。
 コトノハのスキーの腕前もまた、なかなかのものだ。華麗に滑る彼とスキーを楽しみながらも、翼は周囲に気をつける事を忘れない。翼がスキーを選んだのは、安全を重視してコトノハを守りたいという思いがあったからなのだ。
「あまり無茶はするんじゃないぞ、コトノハ」
「大丈夫だよー。ほら、つーちゃん、あっちまで一緒に滑ろー!」
 楽しそうに返事をしたコトノハに、翼の表情もつい柔らかいものになってしまう。
 四人の夫婦の笑顔は絶えない。久しぶりのデートを、彼らは満喫するのだった。

 ◆

 楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。夢中で滑っている内に、あたりはすっかり暗くなってしまっていた。
 名残惜しく思いつつも、四人は宿泊予定の高級ホテルへと向かう。チェックインを済ませた彼らを待っていたのは、広々とした豪華な一室だ。妻達のために、蓮司とコトノハが予約しておいてくれたスイートルームだった。
 食事とお風呂を済ませ、四人はゆったりと部屋でくつろぎ始める。「メリークリスマス!」という言葉と共に、グラスとグラスが合わさる小気味の良い音が室内に響いた。
 何しろ、久しぶりの再会だ。積もる話は尽きない。話したい事、相手に聞きたい事……全てを口にするには、時間はいくらあっても足りないに違いなかった。
 口に運ぶ酒やお菓子の味がいつもよりも美味しく感じるのは、向かいの席に愛しい人が座っているからという理由も大きいだろう。

 夢中で話している間に、すっかり遅い時間になってしまった。ふわぁ、と渚の口からあくびが一つ。こくりこくりと船を漕ぎ始めた彼女は、蓮司が優しく横たえてやるとすぐに眠りに落ちてしまった。
 コトノハもいつの間にか寝入っており、残された片割れ達はその微笑ましさに顔を見合わせ笑みをこぼす。
 二人を起こさぬように気をつけながら、蓮司と翼は会話の声量を落とし、静かに酒に口をつけた。
「最近は、どうなんだ……?」
 いくつかの談笑の後、話題はお互いの今の暮らしへと移った。グラスを煽り、蓮司はまずは自分達について話し始める。
「地元で、能力者と一緒にカフェを営んでいる……」
 次いでいくつかの近況を語った蓮司に、翼は「我々の方は相変わらずだ」と言葉を紡いだ。
「バンドの生活もそれなりに頑張っている。エージェントとしての活動も、まだ続けているぞ。何をやっても結果に繋がっているとは言えないのが、もどかしいが」
 翼はそう言って苦笑した後、「そういえば、蓮司は少し雰囲気が変わったな」と指摘した。恐らく、髪型の事だろう。前よりも長く伸びた髪を、蓮司は下の方でゆるく結っていた。
「……コトも変わっただろ?」
 髪が伸びた心境について語ってから、蓮司は隣に座るコトノハを横目で見やる。コトノハも、まるで童話に出てくる少女のように長く伸びていた髪をバッサリと切り、今は爽やかなショートカットにしていた。もちろん、今日一日コトノハの事をずっと見ていた翼がその事に気付かないはずもない。彼女は小さく、頷きを返した。
 髪型の変化は、互いが離れて暮らしていた月日を無言で語ってもいた。今この時も時は進み、季節は巡っている。雪が溶け桜が咲くように、時間が経つつれ変わっていくものは多い。
 けれど、変わらないものもある。気持ち良さそうにすやすやと寝ている配偶者の事を、二人は愛しげに見つめた。相手を想うこの気持ちは、決して変わらないものの内の一つであった。

 ◆

 ホテルの朝食を食べ終え、四人は帰りのバスへと乗り込んだ。しばらくは談笑していたが、昨日の疲れもあるのだろう。穏やかなバスの振動に誘われるように、いつの間にか翼は眠りに落ちていた。
 その寝顔を、コトノハは携帯で写真におさめる。普段はクールな翼がこのような無防備な表情を見せる相手は少ないが、夫であるコトノハは無論心を許されているので何度も見た事がある。けれど、彼女の寝顔は彼にとっていくら見ても見飽きないものであった。
 不意に、翼が寝言で何かを呟いた。まるで宝物を口ずさむように、呟かれた四文字。人の名前だ。それが誰の名前かなんて、わざわざ聞き返さなくとも分かりきっている。
「うん、つーちゃん。僕はここにいるよ」
 コトノハは、彼女の手に自分の手を優しく重ねた。

 蓮司の隣に座っている渚も、昨日の疲れが出たのかうつらうつらしている。その小さな頭が、こてんとこちらに倒れてきたので、蓮司は彼女が楽な体勢になるように位置を調整した。
 楽しいWデートだったが、久しぶりに会えた夫婦にとって時間はいくらあっても足りないものだ。まだもう少し相手と一緒にいたいという気持ちが尽きる事は、恐らくこの先、一生ないであろう。
「今度は、俺らがいる場所に連れてってやる……」
 すっかり夢の世界へと旅立ってしまった愛しい伴侶を起こさぬように、蓮司は小さな声で呟いた。心地の良いまどろみの中で、渚はまるで彼の言葉に返事をするかのように、幸せそうな笑みを浮かべるのだった。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0636hero002/片薙 蓮司/男性/25/ベストキッチンスタッフ】
【aa3674hero002/片薙 渚/女性/20/思い出を胸に】
【aa0636hero001/伊集院 コトノハ/?/17/エージェント】
【aa3674hero001/伊集院 翼/女性/20/歪んだ狂気を砕きし刃】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご発注ありがとうございました! ライターのしまだです。
クリスマスのWデート、このようなお話になりましたがいかがでしたでしょうか。
ご夫妻がたのお気に召すお話に出来ていましたら、幸いです。何か不備等ございましたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
それでは、このたびはご依頼ありがとうございました。またいつか機会がありましたら、その時はよろしくお願いいたします。
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リンクブレイブ
2018年12月19日

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