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『クリスマス作戦! 』
ピピ・ストレッロaa0778hero002


「いってらっしゃーい!」
 手をぶんぶんと振るピピ・ストレッロ。赤毛の青年が笑顔で手を振り返し、黒髪の青年は柘榴のような瞳をこちらへ向ける。それらは扉で見えなくなり──ガチャン、と閉まる音がやけに大きく響いた気がした。
 鍵を閉め、たたたとリビングへ戻るピピ。しかしまた廊下に出て玄関を伺う。耳を澄ます。
 足音は聞こえない。忘れ物で帰ってくる、なんて様子も──ない。
 よし、と気合を入れたピピはリビングに置かれていた段ボールを開けた。中にぎっしりと、しかし綺麗に詰め込まれているのはクリスマスのオーナメントやガーランド。
「ふふふ、帰って来た2人をびっくりさせるんだよ♪」
 クリスマスドッキリ作戦、開始である!


 クリスマスが近いことに気付いた──いや、思い出したというべきか。そのタイミングはつい先日だった。
 すっかり忘れていたのは『王』も現れ、H.O.P.E.やエージェントたちが多忙を極めていたためだろうか。なにせ忙しさというものは時間の流れを早める。
 だがエージェントたちも人間。日々の営みや季節のイベントを過ごすことも重要だ。
(ツリーは2人が帰ってきたら一緒にやろうって言うんだー♪)
 身長の関係もあり、壁の高いところに設置する飾りも今はやらない。危ないことはしてはいけないのである。
 クリスマスのガーランドを取り出すと、ピピは周りをきょろきょろ。廊下に続く扉に視線を留める。飾ったところを想像して──。
「よし、これはあそこだね!」
 必要な分のテープを切り、腕にペタペタと貼ってから扉の前で小さく背伸びをする。
「……うん、良い感じ♪」
 両端を貼って満足げなピピ。すぐに次の飾りへ取り掛かる。
「次はー……これ!」
 じゃん、と取り出したのはピピの顔ほどの大きさをしたリース。これを飾る場所は決まっている──1番に足を踏み入れる場所、玄関だ。
 リースは紐で吊り下げることもあり、扉より高い所から固定しなければいけないだろう。去年も確か、第1英雄が高めの場所から吊り下げていたような気がする。
 ピピは廊下への扉を開けるとリビングの椅子を移動。やや距離が長いものの、途中で休みながらまたよいしょと運んでいく。玄関に椅子を下ろすと、ピピは「ふー……」と息を吐きだした。
 ほんのちょこっと、休憩をしたいところ。だが、ここで休んでいたらあっという間に2人が帰ってきてしまうかもしれない。
「もうちょっと頑張るんだよ!」
 自らを鼓舞し、テープでリースの紐を留めにかかるピピ。しかし──。
「あれ?」
 テープではリースの重さを支えられないようだ。
 昨年はどうやって飾っていただろうか。ちょっと考えたピピ、壁に画びょうを刺して引っ掛けていたことを思いだす。
 ピピはリビングに戻ると「ここかな?」と適当な引き出しを開けた。視線を滑らせれば、奥の方に画びょうの入ったケースが見つかる。
「当たりなんだよ♪」
 すぐ見つかってホッとするも、ケースを開けたピピは慎重に1つを持ち上げた。
 尖った先はとても痛そうだ。転んだりしないよう、そーっと玄関まで持ち運ぶ。これまた慎重に椅子へ登ると、ピピは壁に画びょうの先を当てた。
「うーんと……この辺、かな?」
 ぐ、と力一杯壁へ画びょうを押し付ける。ぷるぷると腕が震えるもののどうにか画びょうを刺すと、リースの紐を引っ掛けた。
「できたー……!」
 安堵の声が漏れ、後から自慢したい気持ちがやってくる。
(2人とも、ビックリするといいなー♪)
 にこにこと椅子を降りたピピはリビングに向かおうとして──「あっ!」と声を上げた。
「こっちだと飾りが見えないんだよ!」
 そう、この扉の裏にはガーランドを飾った。だがしかし、扉が開いてなければそれを見る事は叶わない。
 ピピは一旦椅子をリビングに戻すと、小さなリースとテープを手に廊下へ逆戻り。
「……んしょ。こんな感じかな?」
 ちょん、と指で突けばリースが揺れる。これで玄関からリビングまでがクリスマスらしくなった。
 リビングに戻ったピピは段ボールからスノードームを取り出した。
「ちょっときゅーけー……ふふー、綺麗なんだよ♪」
 椅子に腰かけ、スノードームを逆さにした後テーブルに置く。キラキラとドームの中に雪が舞い落ちて、中の雪だるまはニッコリ顔。
 それを眺めていれば、また頑張ろうと言う気持ちにもなるもので。
「作戦再開ー! まだまだ飾るんだよ! 次はこれっ」
 段ボールからじゃーん、と取り出し当たりを見回す。ここだ! と言う場所が見つかればテープと一緒にそこへ。家の中が徐々にクリスマスのオーナメントで飾られていく。

 そうしてすっかり日も暮れたころ、鍵の開く音にピピは玄関へ飛んでいって──満面の笑顔で出迎えるのだ。
「──おかえりなさい!」

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa0778hero002 / ピピ・ストレッロ / ? / 9歳 / 優しさを知る子 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。ピピ・ストレッロさんのお留守番シーンをお届けします。
 時期的にギリギリでしたが、クリスマスなお話にさせて頂きました。時系列的には只今お待たせしております依頼の間です。イメージに添えていましたら幸いです。
 リテイク等ございましたら、お気軽にお申し付け下さい。
 この度はご発注、ありがとうございました!
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2018年12月21日

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