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『Ex.snapshot 002 春月 × レイオン 』
春月aa4200)&レイオンaa4200hero001

 好きか嫌いかで問われれば、間違いなく好きである。
 が、それが恋愛感情かと問われれば、首を傾げてしまう。
 勿論、魅力的な女性である。
 だから自分も、気が付いたら目を奪われていたのだろうから。

 彼女の――春月の、踊る姿に。

 伸びやかに躍動する肢体に、遅れて付いてくる黒髪と服の裾の流れ。心の赴くままでいるのだろう、晴々しい笑顔。キレのあるステップ、関節や手足の制動の掛け方。そんな中――きらきら光る黒瞳がこちらの姿を認識したかと思うと、不意に見せ付けるようにしてくるりとターン。その動きに伴い、風を孕んでふわりと膨らむ服の布地――それらがストンと落ち着くのはキメポーズの後。いぇい、とばかりに得意そうにピースサインを突き出して来る。

 そんな風にされてしまった「少年」の方としては、もう、踊り手を賞賛するしかない訳である。

 踊り…と一言で言っても今春月がやっていたこういった――所謂ストリートダンスの類には全く詳しくないので、どう感想を言ったらいいのかわからない。ただ、とにかく目を奪われた――心惹かれた事だけは言える。
 明らかにこちらを観客と見做しての行動を取られてしまったので、正直にそう伝えたら――嬉しそうかつ悪戯っぽい笑みを浮かべて、おや、全然構わないよーそもそもうちもあんまりよくわかってないからねー、とあっけらかんと返された。それより「目を奪われた」って事自体が、つまり「理屈抜きで自分の踊りが全くの他人を惹き付けられた」事自体の方が余程重要で、とても嬉しかった…との事。
 曰く、その時の「ストリートダンス」は――何と言うか、春月自身がカッコイイと思った動きをジャンル問わずで好きに繋げてみたものだったらしい。どれもこれもが独学で、その時踊っていたのはちょっとした気晴らし――曰く現在、高校卒業後の、施設を出た後の――彼女は身寄りが無く施設育ちだったらしい――進路について悩みを抱えていたところだったそうだ。
 …そんな悩んでいるところでの踊りだったと聞いて、正直驚いた。そんな背景があるなどとは思えないくらいに堂々として見えたのだが――その事を続けて伝えたら、何だか照れまくりつつもまた喜ばれた。

 その「少年」と出逢った事で、春月の中では何か心が決まった――のかもしれない。



 で。

 実は英雄≪リライヴァー≫だったその観客の「少年」――レイオンは、そんなこんなとあって(そんなこんなでは理由になってない気もするが)この春月と誓約する事になった訳なのだが。
 誓約したら何故か春月を通り越した年頃にまで成長してしまった事には、さすがに本人もちょっと驚いた。

 その時、春月は高校卒業間近でつまりだいたい十八歳だったのだが、レイオンの方の見た目は二十代後半――二十七歳辺り、と言ったところになっていただろう。
 子供だったところから「これ」と言う時点で、なんだいホントに人間じゃなかったんだねぇ、と春月はしみじみ。但しそれだけで――だからどうしたとかはない。受け入れるのが早いのか、元々そう言った存在を知っていたのか、はたまたそれがレイオンと言う四文字の名を持つ自分の誓約相手だったからかは不明だが態度も特に変わらず――それより、レイオンと誓約した自分なら可能な、能力者≪ライヴスリンカー≫として働けば、すぐ自立して生活出来る目処が立ちそうだ、と言う事の方が余程重要に感じたらしかった。

 出来るなら、踊りで身を立てたい。
 そうは思っていても施設育ちの身じゃ贅沢かな、とか色々ぐるぐるしていたところでの、降って湧いたようなこのチャンス。
 俄かにこの夢が現実味を帯びて来た。
 …ならばそのチャンスを掴まない訳が無い!

 そんな感じで、トントン拍子に話が進む。
 ちょうどいいから施設を早めに出て、H.O.P.E.に所属し自立した生活を目指す。そして能力者として稼いだお金を貯めつつ、ダンスを本格的に学ぶ事にした。本格的に学べれば、漠然とした夢の状態よりは遙かに将来への道が拓けると言うものである。
 勿論、最終的には本人次第――そして運次第でもあるだろうけれど。

 そこについては春月はあまり心配していない。



 …春月が心配していない理由として、初めて出逢った時の僕を自分の踊りで惹き付けられた事、が自信に繋がったからもあるんだとか。
 まぁ、恐らくただの楽観論の割合の方が多いだろうけれど、春月の場合はそれでいい。
 ただでさえ大変な目に合わせてしまっている訳なのだから、将来の夢については楽観的で居るくらいがちょうどバランスも取れているだろう。…何より、その方が春月らしいし。

 大変な目と言うのは――つまり、能力者としての仕事そのもの。
 有態に言えば、能力犯罪者≪ヴィラン≫や愚神≪グライヴァー≫との「戦い」の事になる。
 それは僕がバトルメディックである以上、直接白兵を行うような立場では無くあくまで仲間の支援を行うのがメインな立ち位置にはなるけれど、それでも最前線の戦場に行かざるを得ない事には変わりない。
 …戦闘などとは縁遠い平和の中で育った者が、そんな立ち位置に居る事自体、大変で、とても怖い筈。

 自分と誓約をしたせいで、春月をそんな世界に巻き込んでしまった訳だから…そこは、ずっと気になっているし、それこそ心配でもある。…自分が傷つくのはともかく人を傷つけるかもしれない事が怖い――そんな優しい春月にあまり無理はさせたくないけれど、そもそも「戦い」に赴く事自体が無理に近い事になるし…難しい。
 気力でカバーするにも限界はあるだろうし、僕で何かの助けになれれば、とは常々思っているのだけれど。

 せめて、と言う事で、ささやかな事だけど、僕の普段の生活費は別に自分で稼いでいる。
 春月の心配の種になりそうな事は、例えほんの少しずつでも、一つ一つ、取り除いて行きたいから。



 心配な事と言えば、まだある。

 春月は魅力的な女性である――が、同時に色々と雑である。
 それはもう、見ているこちらが気が気でなくなる程に。
 普段の江戸弁混じりな威勢の良い口調からして想像も付くだろうが、あまり男性の目を気にして女性らしく云々、と言った気の遣い方をする様子は全く見受けられない。年頃の女性なのに、所謂女子力云々…と言った世界からは、かなり縁遠いだろうと思われる。
 元気溌剌と行動力もある辺りは健康的でいいだろうし、身寄りが無く各地を転々とした後に施設に入った…と言う身の上であっても、出逢って来た人々に恵まれていたのかすくすくと真っ直ぐに育っている、と言う美点もある事はある。と言うかこの辺りは彼女の魅力を語る上では、かなり推すべき部分である。
 が――やはり、心配になってしまうのである。

 今後の事を考えると、春月は本当にこのままでいいのだろうか――と言う意味で。
 勿論、彼女の事を信じていない訳でも無いし、彼女が今後選ぶだろう道を、ずっと応援するつもりでいる。

 つまり、自分が抱いているのは恋愛感情と言うより――完全に保護者感情だろうなあ、と思う。
 ああ、だから誓約したら春月より年上な、大人の姿になったのかもしれない。

「…ちょいと。おーい。れーいーおーんー」
「…。…えぇと。ひょっとしてずっと呼ばせちゃってた…かな」
 僕の事。
「そーだよ。なんっか上の空だからさぁ。いつもみたいなツッコミも来ないし」
「何かツッコミされるような事してたの?」
「うっ…いや、マグロをイメージした振り付けちょっと考えてみたのをやって見せてただけだけど、良かったらレイオンも一緒にどーかなーって…」
 踊るの。
「…」
「ダメ?」
「ごめん、ちょっと考え事してて見てなかった」
「う…じゃあもっかいやるからねっ、今度はちゃーんと目ん玉かっぽじってよーく見てなっ」
「はいはい。ところで目ん玉じゃなくて耳の穴じゃないかなその言い回し」
 目ん玉かっぽじったら却って見えなくなりそうだよ?
「うああ、それもそうかも…! って言うかそれ想像したら痛い痛い!」
「いや、わざわざ想像しなくていいから。振り付け、見せてくれるんじゃなかったの?」
「おおっと、その通り! 本題から逸れてくとこだったっ」

 んじゃあ、と春月は妙な構えを取る。ヨガのような――いや、ヨガと言ったらヨガに失礼なような、恐らくマグロの姿をイメージし象っているのだろうポーズをスタート地点として、珍妙な振り付けを披露し始める。

 ああ、と自分が上の空だった理由がすぐにわかった。
 このマグロをイメージしたと言う振り付けで踊る春月を見ていたら、「あの時」の印象の強いダンスをつい思い出してしまっていたのだ。
 むしろ「あの時」のきびきびとしたしなやかさの方が、背に流れる長い黒髪も相俟ってそれこそマグロがびちびち撥ねてるみたいなイメージと言えば言えたかもしれない。例えが変なのは重々承知だけれど、春月の方で今こんな事を言い出している以上は――この事を伝えたらむしろ喜ぶかも。
 そんな気がしたので、実行してみた。

「…わざわざマグロをイメージした変な振り付け作らなくても、春月はマグロみたいに踊れてる事あったと思うけど?」
「…へ? …。…えええええ!?」
「…春月?」
「う、うちじゃなくてレイオンが変な事言ってる…!」
「今のが変な事言ってるってわかるんだね?」
「いや、だって、えっと…そういうのはだいたいうちの役割で…」
「役割とか決まってないから」
「で、でも…どうしよう、何か天変地異の前触れかも」
「…ごめんね。春月に合わせてみようとしたら却って心配させてしまったね」
「う。なんだか地味にきつい言い回し…! でもうちはへこたれないんだっ…!」
「そうそう、その意気」

 春月は春月らしく、元気一杯で居るのが一番だから。
 僕はずっと春月の傍で、春月の事を応援しているよ。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa4200/春月/女/18歳/人間/生命適性】
【aa4200hero001/レイオン/男/27歳/バトルメディック】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 春月様、レイオン様には初めまして。
 今回はおまかせノベルの発注有難う御座いました。果たして初めましての当方で本当に良かったのかと思いつつ。
 そして初めましてから大変お待たせしてしまっております。…当方こんな感じで毎度の如く作成期間を長く頂いてしまう輩なのですが、宜しければお見知り置き下さいませ。

 内容ですが、おまかせ…となるとキャラクター情報やら過去作品やらからして「こういう事あるんじゃないかな」と考えてみたキャラ紹介的な日常、がまず思い付くところなのですが、今回何となく保護者として見守っているレイオン様視点で春月様を語っているような形…が大部分な感じになりました(途中で視点違うところとか最後に二人の直接やりとり部分とかもありますが)
 そしてマイページやアイコンやらの方から、何となくマグロのネタを変な形で弄ってしまったり…(遠い目)

 初めてお預かりするのにいきなり内面描写、と言う無茶やらかしておりますが、致命的な読み違え等無ければ良いのですが…もし「こんな事考えないしこんな口調だったり態度じゃない」等あったら申し訳ありません(汗)

 如何だったでしょうか。
 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。

 では、またの機会が頂ける時がありましたら、その時は。

 深海残月 拝








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2018年12月21日

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