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『『夢の中のクリスマス』 』
アレスディア・ヴォルフリート8879

 クリスマスが近づいたある日。
 大人の2人が見た、子どもの姿の夢――。

 丘の上にある孤児院では、子どもたちが中心となりお部屋の飾り付けをしていた。
 今晩、この大きなホールで施設の大人と子ども全員でクリスマスパーティを行うのだ。
 大人たちは料理を作ってくれていて、いい匂いが部屋に流れてきている。
「おほしさま、つけたい〜」
 小さな女の子が、ツリーの上につける大きな星のオーナメントを持って、ツリーを見上げている。
「うえのほうに、ゆきもつけたいよね」
 白い綿の雪を持って、男の子も背伸びをして上の方に綿をつけようとするのだが、なかなかうまくいかない。
「とどかないのか? それならわたしがやろう」
 と言って、小さな女の子から星を受け取ったのはアレスディア・ヴォルフリート……2人と同じ身長くらいの綺麗な黒髪の女の子だった。
 アレスディアはエイッとジャンプして、星をセットしようとする。
「むぅ、まがってしまったな」
 何度かチャレンジして、どうにか天辺に置いたのだが、曲がってしまっている。
「ははは、ヘタクソ」
 嘲笑が耳に入り、アレスディアはむっとした表情で振り向く。
 床に座ってつまらなそうにしているのは、ディラ・ビラジスというアレスディアと同じ年くらいの男の子だ。
 その子は既にアレスディアの方を見てはいない。彼は全く飾り付けを手伝おうとはしなかった。
「ディラならうまくできるのか? ならやってくれ」
「やだね。けど、きれいにするほうほうはあるだろ」
「どうするんだ? イスはダメだぞ」
 椅子や脚立を使えば良いのだが、大人がいない時に椅子に乗ったり脚立を使ったらダメだと言われているのだ。
 ディラはめんどくさそうに立ちあがると、誰とも目を合せず、アレスディアに近づいた。
 そして突然彼女をぐっと抱きしめて持ち上げる。
「これでできるだろ」
 2人の身長は同じくらい、ほんの少し高くなっただけだけれど、アレスディアは曲がった星を直すことができた。
「アレスちゃん、これもおねがい」
 男の子が綿の雪を渡してきた。
「ディラ、だいじょうぶか?」
「へいき……けど、はやくしろよ」
 ディラは真っ赤になっている。結構辛そうだ。
「すぐやるからな!」
 アレスディアは急いで、綿をツリーの上の方に散らばせた。
「よし、おわったぞ」
 途端、すとんとディラはアレスディアを落とすと、すたすたとまた部屋の隅に歩いていき、1人で窓の外を眺め始める。
「ディラ、みんなといっしょにかざりつけしないか?」
 アレスディアが近づいてそう尋ねると、ディラは首を左右に振る。
「俺、パーティ出ないし。ほんものの星や雪のほうがきれいなんだぜ」
 そう言うと、彼は外に出て行ってしまった。
「アレスちゃん、つぎはこっちにかざりつけよ〜」
「そうだな、はやくやらないとパーティにまにあわなくなってしまう」
 ディラのことが気になりながらも、アレスディアは友達と一緒に飾り付けを続ける。

 そして、夜。
 子どもたちが賑やかに飾り付けた部屋に、大人たちが作った料理が運ばれてきた。
 メリークリスマス、いただきます! と大きな声で言って、子どもたちは賑やかにパーティを楽しんでいく。
 そこにディラの姿はなかったが、大人たちも彼のことはよく解っていて、彼の分の料理とケーキを、皿に取り分けていた。
 アレスディアは少しの間皆とパーティを楽しんでから「ディラのところにいく」と院長に話して、彼の分の料理とフォークもらい、彼と自分の分のケーキを入れたバスケットを抱えて、会場から外へと出た。
 ……彼の居場所は大体わかっている。
 孤児院の裏にある大きな木の側に、いることが多い。
「やっぱり、ここにいたな」
 月の光も当たらず、とても暗かったけれど、その場所に人がいることがわかった。
「たべものもってきたぞ。いっしょにたべよう!」
 そう言って、アレスディアが近づくと、ディラは自分の隣を指差した。
 抱えていたバスケットを渡して、アレスディアは地面にお尻をついてディラの隣に座った。
「うまいか? ……ケーキ、わたしのぶんもたべるか?」
 料理をパクパク食べだしたディラに尋ねる。そういえば、自分の分のフォークは持ってきてなかった。
「自分の分は自分で食べろよ。食べたそうな顔してるくせに」
 ディラは自分のケーキを手づかみして、使っていたフォークをアレスディアに渡す。
「た、たべたそうな顔なんかしてないぞ。おいしいのなら、わたしのぶんもたべてもよかったんだぞ」
 そう言いながらも、アレスディアはディラからフォークを受けとり、生クリームたっぷりのショートケーキを口に入れた。
 とっても甘くて、凄く美味しい。アレスディアの顔にぱあっと笑みが広がる。
 ディラも僅かに笑みを浮かべながら、空を指差した。
「雪はふってないけど、星はきれいだ」
「そうだな。小さいけど、たくさんだ」
「それじゃ、それ食い終わったら、のぼろうぜ。上からだとじゃまがなくてよく見れるんだ」
 ディラの指が木に向けられる。
「わかった」
 ケーキを食べ終えて、容器を地面に置くと、2人は立ち上がって木登りを始める。
「きょうそうするか?」
「まけないぞ!」
「俺だって負けるもんか!」
 2人は反対側から上の方の大きな枝まで競争をする。
「おちるなよ」
「そっちこそ、ケガするなよ」
 競争しながら、互いのことも心配しつつ、2人は揃って枝まで到着をして。
 まず、アレスディアが枝に座り、続いてディラが枝の上に立って、2人で空を見上げた。
 有るのは満天の星空。綺麗な三日月と小さくてもきらきら光を放つ星々。
 それから、すぐ側にいる互いの姿。
 他に視界に入るものはなく、2人は「きれいだな」と言い合いながら、星々を見詰めていた。
 そして、どちらからともなく互いに目を向けて。
「メリークリスマス!」
 小さな沢山の光を浴びながら、小さな2人は顔を合わせて笑い合った。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/外見年齢/職業】
【8879/アレスディア・ヴォルフリート/女/21/フリーランサー】

NPC
【5500/ディラ・ビラジス/男/21/剣士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターの川岸満里亜です。
かわいいクリスマスノベルのご依頼、ありがとうございました!
必要以上口を開かないディラも、気になる子(アレスちゃん)だけは特別という感じで書きました。
それではまた何かございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
イベントノベル(パーティ) -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
東京怪談
2018年12月21日

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