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『■正しい、道の踏み外し方 』
ルトガー・レイヴンルフトka1847




「俺、見たんだぜ。絶対、怪しいってよ!」
「ホントかぁ?」
「僕も聞いたことある! なんか眼帯してて怖そうなおじさんが、出入りしてるって……」
 ヒソヒソ『情報』をかわし、路地の角から3つの小さな影はじっと建物を窺う。
 やがてガラガラと古びた金属のスライド式ドアが開き、中から長身の男が現れた。
 途端に小声は止まり、角から三人は目をこらす。
 だがすぐに男はドアを閉め、左右を確認してから歩いて行った。
「中、見えた?」
「うーん、よく分かんなかった」
「今のおじさん、眼帯してたね。あの人かな……」
「どうだろ……て、おい!」
 二人が話している間に残る一人が小走りで建物に近付き、力を込めてドアを押す。
 すると重い音と共に、ドアが動いた。
「何してんだよっ」
「見ろよ、鍵をかけ忘れたみたいだ」
 小声で叫ぶ仲間に、得意顔の少年は手招きする。
 残る二人は顔を見合わせ、急いで後に続いた。

 さほど広くない倉庫か何かの壁際には、机と長椅子と様々な工具がひしめいている。
 目立つのは中央に並ぶ、布を被った四つの膨らみ。
 どれも馬ほどの大きさで、布と床の僅かな隙間から黒い車輪が覗く。
「やっぱりだぜ。ここ、秘密基地だ!」
 先に忍び込んだ少年が、よく見ようと布を少し持ち上げた。
 もう一人は半開きのドアから差し込む明かりを頼りに、室内を探索している。
「わぁ……これ、バイクってヤツだろ。こんな近くで、初めて見た」
「コッチもだ。形は違うけど」
「やめなよ、怒られるって……」
 足がすくんだのか、入り口でオロオロする三人目の少年の脇に影が伸び。

 ガラララ……ガシャンッ!!

 派手な音を立てて、勢いよくドアが閉まった。




「ひゃあっ!?」
 驚いた引っ込み思案の少年は、腰を抜かし。
「ヤベッ、逃げろ!」
「どこにだよっ」
 バイクの周りを逃げ惑う少年二人も、大股で迫る男にあっという間に追いつかれ、首根っこを掴まれた。
「はっ、放せー!」
「くっそーっ。お前が悪い奴だって、分かってんだからな!」
「あぁ? だーれが悪い奴だって?」
 ドスの効いた声に加え、氷のような青い隻眼が不法侵入者達をぎろりと睨む。
 鋭い眼光に少年らは一瞬怯んだが、すぐに負けじと騒ぎ始めた。
「どっからどー見たって、悪い奴だろ! ここが秘密基地だってのも、分かってんだからな!」
「見たことないバイクとか、何台も隠してたりしてな」
「……それで、悪い奴だって?」
 後ろを振り返ると、まだ腰が抜けた少年は無言で首を横に振る。
「放せって……ぎゃっ!」
「うわっ」
 男は捕まえた少年二人を長椅子に転がし、動けない最後の一人も引っ張ってきて同様に座らせる。
 そして自分は木の椅子を引き寄せ、向き合うように腰を下ろすと足を組んだ。
「……で?」
「でって……何だよぅ」
 先陣を切った少年は真ん中の気弱な少年を庇うように身を乗り出し、相手を睨み返すが。
「俺がその悪い奴だったら、どうする気だ? ん?」
 ふんぞり返るように椅子へ背を預けた男から見下ろされ、言葉に詰まった。
「通報するか、ハンターを呼ぶ。夜になっても俺達が帰らなきゃ、父さんや母さんが捜索を頼むぞ」
「ほぅ、そっちは頭が回りそうだな。歳は幾つだ。7つか8つか?」
「教えるもんか」
 イーだ、と顔をしかめる少年に、男はがらがらと笑った。
 そしてポケットから取り出した煙草に火をつけ、天井へ紫煙を吐く。
「そうだな。ここが俺の秘密基地だってのは、あながち間違いじゃない」
 途端に、少年達が身を強張らせる。
「だが、悪い奴ってのは違うな」
「どう違うんだよっ」
「悪い奴なら、問答無用でお前達を始末してる。違うか?」
 そう言われれば――と、唸った三人は黙り込んだ。
 すると真顔になった男は、僅かに身を乗り出し、声を落とす。
「いいか、内緒だぞ。俺はな、悪い奴らの組織に忍び込んだスパイなんだ」
「……嘘だろ」
「本当だ。捕まえたお前達を縛ってもいないし、見たいなら愛車だって見せてやる」
 まだ警戒が解けない視線に男はニッと笑い、煙草を咥えて立ち上がった。
 バサリ、と。
 覆う布が取り払われ、姿を現わしたバイクに少年達が息を飲む。
 詳細な知識などなくても、複雑な機械の塊が入念に手入れされ、磨かれた物だという事くらいは分かった。
「すっげぇ……」
「近くで見てもいいぞ。ただ危ないから、触るのはナシでな」




「それじゃな、おじさん」
「悪い奴らに気を付けてね」
 真剣な顔の少年三人は小声で別れを告げ、ガレージを出る。
「バレるから、もう近寄るんじゃねぇぞ」
 夕暮れに駆けて行った後ろ姿が見えなくなると、ルトガー・レイヴンルフト(ka1847)は煙混じりの息を大きく吐いた。
「やれやれ。ここんとこ妙な気配がするから、何かと思えば……なぁ」
 ぼしぼしと髪を掻き、苦笑しながら空を仰ぐ。
「ま、子供ってのはあんなモンか」
 そしてガレージのドアを閉めると、今度はしっかり鍵をかけた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【PCID / 名前 / 性別 / 外見年齢 / 種族 / クラス】

【ka1847/ルトガー・レイヴンルフト/男/50/人間(クリムゾンウェスト)/機導師(アルケミスト)】
おまかせノベル -
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2018年12月25日

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