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『ボールと変な動物 』
夢路 まよいka1328

 夢路 まよいは変な夢を見た――ような気がした。
「まさか、昨日食べたキノコのせい!?」
 と思ってみたが、すぐに違うと理解した。
「あれだよね、ハロウィンシーズンだから、仮装した夢を見たんだ、たぶん」
 もぞもぞも宿屋のベッドから下り、着替える。そして、朝食を取って帰路につこうと考えた。
「町を見てみてもいいのかな?」
 ということで一晩止まってみたものの、夜、こじゃれたお店でご飯食べたくらいで、特に何もなかった。
 グラズヘイム王国にある、何の変哲もない平和な街。それはいいが見物するところがなければ観光客も来ない。
 宿を後にしてオフィスに向かう。
 子どもたちが集団で移動しているのが見えた。
「なんか、学校に通うって感じだよね」
 まよいはそれを目で追っていると、側にママチャリが止まる。
「おはようございます」
「あれ? ルゥル? おはよう」
 昨日、会った魔術師の弟子ルゥルである。
「そういえば聞いてくださいです。変な夢を見たのです」
 そして、ルゥルはテニスボールらしいものを荷物から取り出した。
「そ、それは! この私を捕まえるための……!?」
「そうなのです」
 まよいは反応し、ルゥルはボールを投げようと構える。まよいは反射的に魔法の発動体である杖を構える。
「……」
「……」
 しばらく道のど真ん中で対峙する。
 朝、人が多い中、このような対決は許されるのだろうか? そもそも、むやみに魔法を街中で放つことはできない。
 しばらく対峙してから二人はふと我に返る。
「邪魔だよね」
「そうなのです」
 二人は道の端に寄った。
「まよいさん、どうして、私が見た夢を知っているのです!?」
「いや、それは、私のセリフだよ! なんか、そんな夢見た気がするんだよね、ボールで変な動物を捕まるって夢」
「そうなのです! でも、捕まえられなかったのです」
「そういえば、私は変な動物枠で登場していたんだけど、捕まらなかったわね。魔術師としての腕だと思っていたんだけど?」
「そ、それは……ありうるかもしれません」
 ルゥルは納得したという顔でまよいを見ている。
「じゃあ、実際に捕まえられるか試してみる?」
「これは、ただのボールです。領主さんのお子さんが試しているです」
「何をしたのかって聞いていいかな」
 まよいは目を輝かせた。
「それが、夢の話を聞いた後、領主さんのお子さんが、お姉さんからもらったボールをいろんな人や犬にぶつけたりしたのです。そして、怒られました」
 まよいは納得したと笑い、ルゥルは溜息を洩らした。
「ルゥルは試したの?」
「試しません。皆さんと同じ、ただのボールです」
「本当に?」
「え?」
「だって、本当にそういうボールがあって、たまたまマテリアルに反応して不思議なボールになっているかもしれないよね? お子さんたちは覚醒者じゃないんだよね?」
「そ、そうです」
 まよいはにこりと笑う。
「なら、試してみよう!」
「みぎゃ!?」
「昨日の林の回りなら、人通りもないし」
 なんだかんだで実験をしに二人は出掛けた。見通しが良く、通行人の邪魔にならないところへ。
 到着するとまよいはカパッと猫耳カチューシャをつける。
「さあ、私が変な動物代わりよ!」
「でも、閉じ込められて出られなくなったら大変なのです」
「大丈夫だよ。だって、まず、入らないから」
 まよいはあっさり実験結果予想を言い、ルゥルは同意する。
 まよいは覚醒状態になる。
「ルゥル、覚醒しないと駄目だよ!」
「あ、そうなのでした」
 ルゥルは魔法を使うように集中し、ボールを構えた。
「来るにゃ」
 まよいは手を丸め、猫の手のようにした。ルゥルに襲い掛かるように近寄る。
「みぎゃああああああああ」
 ルゥルが気合とともにボールを投げた。
「甘い!」
 まよいは避けた。
 二人は立ち止まり、沈黙する。
「つい、抵抗してしまったわ」
「なのです」
 ルゥルはボールを拾いに行く。
「うん、ほら、エイッてやっちゃて」
「投げやりなのです」
「さあ、来るにゃ」
 まよいは一応なんとなく構え、ルゥルはボールを投げた。
 ボールは弧を描き、まよいの頭上に落ちた。
「不意打ちっ! え?」
 まよいは驚いた。謎の金色の光に包まれ、周囲の景色が大きくなる。
「ええっ!?」
 驚いている間にボールの中に入ってしまった。
 ボールの中は生活するのに程よい広さの部屋であった。
「まさかの居心地よさげな部屋!」
 一部ガラス張りで窓のようになっている。つまり、先ほどまでいたところは窓の外の景色となっていた。
 ルゥルはボールを拾うと、振った。
 ボールの中はシャッフルされた。家具は動かないが、まよいは跳ねる。
「ちょっとおおおおお!」

 ガン。

 まよいは目を覚ました、ベッドのヘッドに頭を強打して。
「……変な夢見たような……」
 まよいは宿を引き払って帰路につくことにしたのだった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
ka1328/夢路 まよい/女性/15/魔術師(マギステル)
kz0210/ルゥル/女性/10/魔術師(マギステル)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。
 『魔術師の弟子、ある日のお昼』の前後譚を考えながら、私に強烈な印象を残した『【HW】不思議の国と謎のボール』の後となりました。
 起きたと思ってもまた夢だったり?
 いかがでいたでしょうか?
 今後とも、ご縁があればよろしくお願いします。


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ファナティックブラッド
2018年12月25日

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