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『眠り姫は赤服の夢を見る 』
レミア・フォン・Waa1049hero002


 ふわふわ、ふわふわ。
 意識は揺らいで、まるで空気に溶けるように。
 それはもしかしたら──異界の狭間、空間の歪みにいた時と近い感覚かもしれない。


 鈴の音。風が耳のそばを通り抜ける音。
 見えた景色にレミアは目を見開いた。
「……すごい……」
 レミアは空を飛んでいたのだ。性格には空を飛ぶ大きなソリに乗っている、だが。
 身を乗り出して見れば、眼下に広がるのは町の煌めき。その光が故に星は見えにくいが、空から見る町の光もまた美しい。
 魅入られるようにそれを眺めていたレミアは、不意に肩をとんとんと叩かれた。
「……?」
 振り返るとそこにいたのはお爺さん。赤い服を着て、白い立派なヒゲを生やしている。お爺さんはにこにこと微笑んだままソリの後ろを指差し、次に眼下の町を指した。
 ソリの後ろを見たレミアはああ、と"思い出す"。
(サンタさんの……お手伝い……するのよね)
 お爺さん──サンタと同じく赤い服を纏い、ぬいぐるみのヤナミと共に皆へプレゼントを渡しに行くのだ。
「ヤナミ……も、がんばろう……ね」
 ぬいぐるみの頭を撫でていると、サンタがソリを引くトナカイを操って町へ降りていく。
 プレゼント配りの始まり、始まり。
「まずは……ここ?」
 一軒家のそばでソリが止まった。サンタが手を伸ばすと、不思議と窓の鍵が開く。音を立てずに開けた窓から、レミアはそぅっと家へ入った。
 おそらくクリスマスツリーが近い窓を選んだのだろう。すぐそこに飾られていたツリーのそばに、レミアは持ってきたプレゼントを置いた。
「……メリークリスマス」
 小さく呟いてソリに戻る。まだまだ運ぶプレゼントは沢山あるのだ。
 次はここ、と止まった家やマンションの窓からレミアはプレゼントを届けていく。
「……ここは……いいの?」
 マンションのベランダに近づいたソリが、不意に窓から離れる。レミアが問うとサンタは困ったように眉尻を下げた。
 ソリが大きく辺りを1周し、再びベランダのそばに止まる。見てごらん、と指を差されてレミアはそっと覗き込んだ。
 部屋の明かりがついている。リビングのようで、そこにツリーもあるのだが──男の子が体育座りをしてツリーをじっと眺めているのだ。そのうち女性が現れ、男の子に何か言っている。耳を澄ませば、
『──ヤダ! サンタさん来るまで起きてるの!!』
 ……なんて声が不思議と聞こえてきて。
 レミアは小さく苦笑を浮かべ、サンタを振り返った。
「早く……ねて、くれると……いいね」
 サンタは微笑んで頷き、再びソリを走らせる。
 いくつもの家へプレゼントを届け、先ほどの男の子の家にももう1度寄って。
「あと……もう少し?」
 白い袋の中を覗き込めば、プレゼントは残り数個といったところ。サンタを見上げればゆっくりと頷き、頑張ろうと言うようにレミアの背中をぽんぽんと叩いた。
 不意にサンタがどこかへ大きく手を振る。その視線を追えば──似たようなソリが離れた場所を飛んでいた。乗っているのはやっぱりお爺さん。レミアも手を振ってみると、向こうのサンタも気付いたようで大きく手を振り返してくれた。
(1人だけじゃ……ないんだ)
 考えれば、世界中の子どもがサンタとプレゼントを待っている。1人では配り切れないだろう。
 幾つかの家を経由し、最後の家へ向かったサンタとレミア。その家にレミアは見覚えがあった。
(私の……いえ)
 窓を開けて入り込めば、見慣れた部屋がある。振り返ればサンタがプレゼントを差し出していた。それを受け取ると、サンタはにっこりと笑って小さく手を振る。
 お別れの時間だ。
「来年も……いいこに……してるね」
 告げるとサンタは笑みを深め、確りと頷いて。
 レミアは窓を閉めて離れていくサンタへ、ずっと手を振っていた。


 ゆらゆら、ゆらゆら。
 揺れるたびに自分という形を感じる。空気に溶けていたそれが『私』という姿を取って──レミアは目を覚ました。
 視界に入ったのは茶色の毛布。ふわふわもこもこで暖かい。再び眠りに落ちようかとも思ったが、レミアは毛布から抜け出した。
 リビングに行くと、まだ誰も起きていない。カーテンも閉め切られたままだ。それをほんの少し開けると、光がレミアの目に飛び込んでくる。
「……まぶしい」
 何度も瞬きをして視界を慣らす。見えた空は雲1つなく、青い。
 なんだか不思議な夢を見た気がするけれど、一体どんな夢だっただろう。夢は覚えていられるものもあれば、そうでないものもある。今回は明らかに後者で、しかも時間が経てば経つほどさらにあやふやになっていく類のものだ。
 何かで思い出せないか、と視線を滑らせるレミア。見慣れたリビングを見渡して──そこに置かれていたプレゼントに、レミアは目を丸くした。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa1049hero002 / レミア・フォン・W / 女 / 13歳 / 背中を押す優しい手 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お世話になっております。レミア・フォン・Wさんの不思議な夢をお届けします。
 まだ眠って過ごすことが多いということでしたので、こんな夢も見るのだろうかと想像を膨らませさせて頂きました。
 リテイク等ございましたら、お気軽にお申し付けください。
 この度はご発注、ありがとうございました! メリークリスマス!
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2018年12月25日

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