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『The Princess Meets Her HERO 』
プリンセス☆エデンaa4913)&Ezraaa4913hero001


 初めに目に入ったのは、青く透き通るふたつの宝石だった。
 Ezraは暫くの間、言葉もなくそれを見つめ続けた。
「へえ、結構イケメンね!」
 宝石が口をきく。
 いや、正確には宝石のような瞳を凝らして彼を見つめる、美しい少女である。
 白い頬も、上質な絹糸のように輝く銀の髪も、生命力に満ち溢れている。
 幾度か瞬きをしながら、Ezraはぼんやりと考える。
 少女の顔に見覚えはなかった。
 少女が纏う青いドレスも、大きなつばの変わったデザインの帽子も、彼にとって見慣れたものではない。
 だがなぜか、彼女の言葉は理解できた。『イケメン』が容貌の整った男性を指す言葉であることも。
「はじめまして、英雄さん。あたしはプリンセス☆エデン。歌って踊れるエージェントよ!」
 片目をつぶって、手にした奇妙な形の杖をひとふり。
 慣れているように見えたから、彼女はいつもその動作をしているのだろうと思えた。
「……はじめまして、プリンセス。Ezraと申します。私は……」
 相手が名乗ったのだからプリンセスでいいのだろう。ほとんど反射的にそう答えた後で、Ezraは愕然とする。
(私は、何者だ?)
 続く言葉を待つ、小首をかしげた少女の顔を、Ezraはどこか遠いところを見るような目で見つめていた。


「要するにあなたは、記憶喪失なのかな?」
「そのようです」
 エデンの結論に、Ezraも頷くしかない。
 一応、彼が現在どういう立場で、この世界の中でエデンとどういう繋がりを持つのかは、簡単に教わった。
 記憶がないのだから、彼女に教わったことを否定することもできない。
 まだ混乱しているEzraの腕をエデンが引っ張って、大きな鏡の前に立たせた。
「見て」
「……」
 Ezraはしげしげと自分の姿を眺める。
 鏡には、自分が見たままの少女が映っている。だから、少女が腕を組んでいる隣の若い男が自分なのだろう。
 何とも不安げな顔をしていて、耳もしょんぼりと垂れ気味に見える。
 見覚えのあるような、ないような、何とも不思議な感覚だった。
「イケメンだよね」
「は?」
 エデンがにっこり笑ってEzraを見上げた。
「しかもケモミミなのね!」
「ケモミミ……」
 言われてよく見れば、少女の小さな白い顔の横には、これまた小さな形の良い耳がついているが、表面はすべすべした皮膚がむきだしだ。
 どうやらEzraとエデンとは、種族が異なるらしい。
「いいわね! ケモミミのイケオジ、ユニットで売り出せば、あたしたちばっちり注目集めちゃうかも!」
「イケオジ……」
 何故かそれが容貌の整った、一定以上の年齢の男性を意味する言葉だということが分かった。
 少女から見れば自分の見た目は確かに少し上に見えるが、まだそう呼ばれるほどの年齢ではないような気がする。
「あの、私は……」
「今からお買い物に行くのよ!!」
 エデンはEzraの話を全く聞こうとしない。
 そのままずるずると腕を引っ張られ、家の外に連れ出される。
(この少女は、現在の状況に何の疑問も持たないのか!?)
 ここで何も言えなかった時点で、Ezraのこの先の運命は決まったも同然だった。


 エデンは車の中で、改めてEzraの姿を眺める。
 見れば見るほど、歌って踊れる魔女っ娘エージェントのサポート役にうってつけの英雄ではないか。
(どんな服が似合うかな?)
 思わず顔が緩む。
(ビジュアル系? それともケモミミだからワイルド系?)
 あれこれ考えるうちに、車は目的のお店に到着。紳士服のコーナーにEzraを連れていくと、馴染みの店員が後から追いかけてきた。
「これはお嬢様。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「この人の衣装をそろえたいんだよね」
「かしこまりました」
 ――ここまでEzraの口をはさむ余地はない。
 そしてそこからは、有無を言わせぬ着せ替え大会が始まった。

「まずはビジュアル系! お化粧もしてみないとね!」
 エデンの衣装とイメージをあわせた、羽やレースがついた衣装が最初に選ばれた。
 ダークカラーにラメの入った裾の長いジャケットに、先のとがったピカピカの靴も、エデンの魔女っ娘と相性がいい。
 Ezraにもよく似合っていた。……メイクをすると、なんだか顔がくどいようにも見えるが。
 だが一番の問題は、エデン自身に不満が残ったことだ。
(似合いすぎる!)
 メインはあくまでもエデンなのだ。
(サポートに見えないのはちょっと問題だよ?)
 エデンは迷った。
 せっかく似合っているのにもったいない。でもエデンのスタイルを変えるのは論外。
 そこでEzraがふるふる震える片手を上げて、助けを求めてきた。
「申し訳ありませんが、かなり苦しいのですが……特に皮膚が……」
 つけまつげ3枚張りのまぶたもぴくぴく震えている。
 という訳で、ビジュアル系却下。
「しょうがないわね。じゃあ次!」

 続いてワイルド系。
「この辺りがずいぶんと、心もとないのですが……」
 Ezraがむき出しのお腹を手でさする。
 ミニマム丈のトップスに細身のレザーパンツを合わせ、毛皮を羽織った姿でのその仕草は、ある意味ギャップ萌えではあるが。
 そういう物とは違う何かを、エデンも感じていた。
「うーん、似合ってるんだけど、やっぱりこれも違うんだよね」
 違和感の理由はすぐに分かった。
 Ezraの顔立ちや物腰が、ワイルド系の服装に合わせると妙に弱弱しく見えてしまうのだ。
 エデンが隣に並ぶと、元気いっぱいの色違い赤ずきんちゃんと、お腹を縫われた後の弱りきったオオカミのようだ。
「ハロウィンの企画ならいいんだけど、ちょっとね。お腹が冷えても困るよね?」
 という訳で、ワイルド系も却下。

 さらにキレカジ系。
 Ezraのすらりとした身体に、シンプルなシャツ、シンプルなジャケットはよくなじんだ。
「でも、なにか違うんだよね」
 エデンが首をかしげるのも無理はない。
 おかしくはない。
 おかしくはないのだが、どうしようもなく地味だった。
「何と言いますか……インパクトに欠けると申し上げましょうか……」
 Ezraが自分で思うぐらいなのだから、まさにその通り。
 キレイ目お兄さんではあるが、エデンと並ぶとEzraはせいぜいマネージャーにしか見えなかった。
 エデンが突然ハッと何かに気づく。
「わかった! 真面目過ぎるのよ、顔のつくりが!!」
 そうは言われても、Ezra自身にはどうしようもないことだ。
 思わず自分の両頬に手を当て、しげしげと鏡を覗き込んでしまう。

 それからも店員が運び込んでくる、イマドキのアイドル風の服を色々とあわせてみたが、どうもしっくりこなかった。
 見かねた店員が、山積みの服を丁寧に畳みながら言うには。
「お客様のお顔立ちが上品でいらっしゃいますから、クラシカルなお召し物のほうがお似合いではないかと」
 Ezraはこの時点で、ぐったりとソファーにもたれかかって「どうにでもしてくれ」状態だ。
「お嬢様のお衣装もクラシカルですから、きっと映えますよ」
「それもそうね。じゃあ次はそっちでお願いね」
「ぐえ」
 思わず漏れ出たおかしな声も、エデンの耳には入らなかったようだ。


 店員が立派な薄い箱をいくつも運んできて、次々と中身を取り出す。
 Ezraが見たところ、どこに腕を通せばいいかもわからないものだったり、全部のボタンを留めるのにどれぐらいかかるのかわからないものだったりと、謎の衣服ばかりだったが。
 更衣室から出て鏡に映った自分の姿を目にすると、意外なことに全く違和感がなかった。
「いいじゃない!」
 エデンが目を見張り、顔を輝かせた。
「そうでしょうか?」
「うん、今までで一番いいと思う! それでこう、手を重ねて立ってみて?」
「……こうですか?」
 Ezraはエデンの言う通り、真っすぐ背筋を伸ばして立ち、手袋をはめた手を身体の前でゆったりと重ねてみる。
「ナイス執事!!」
 エデンのその一言で、Ezraの役割は決まった。

 それにしても、とEzraはタイに指をかけながら軽く息を吐く。
(このお嬢さんには警戒心というものがないのでしょうか?)
 突然現れた、明らかに種族の違う、記憶もないような男の腕を取り、屈託のない笑顔を向ける。
 それがこの世界の「パートナー」というものだとしても、だ。
(もし私が、過去に何かとんでもないことをしでかしていたらどうするのでしょうか)
 そうではない、とEzra自身も信じたい。
 だが違うという記憶もなく、ともすれば自分という存在の輪郭がぼやけていくような感覚に襲われる。

 知らず知らずのうちにEzraの視線は下がっていたようだ。
 突然目の前に飛び込んできた、青いふたつの宝石に、ハッと我に返る。
「ちょっとこれもかけてみて」
 装飾的な縁のデザインの眼鏡越しに、エデンの笑顔が見えた。
「やっぱり似合う! カンペキだよね!」
 Ezraは突然、目の前が晴れて行くような気がした。
(このお嬢さんは、悪いものを寄せ付けない何かを持っているのかもしれない)
 悪しき心を持つ者も、邪悪な敵も、彼女の明るさが吹き飛ばしてしまいそうだ。
 だから彼女が認めたEzraも、自分を信じていいのかもしれない。
 そう、彼はエデンの英雄。これから運命を共にするパートナーなのだ。
 もし何か悪いものが近づいて来るなら、共に立ち向かっていく為の存在だ。
「じゃあ改めてよろしく、エズラ!」
 差し出された華奢な手が、自分の名を呼ぶ声が、とても頼もしく思えた。
 Ezraは知らず知らずのうちに片膝をつき、うやうやしくエデンの手を取る。
「どうぞよろしくお願いいたします、プリンセス☆エデン」

 そして、魔法にかけられた時が動き出すのだ。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa4913 / プリンセス☆エデン / 女性 / 16 / 人間 / 攻撃適性 】
【 aa4913hero001 / Ezra / 男性 / 27 / ソフィスビショップ 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はご依頼いただき、ありがとうございます。
キャラクター設定を拝読して、エズラさんが現在の執事スタイルになる前にどんな経緯があったのだろうと思い、そこを取り上げてみました。
お楽しみいただけましたら幸いです。
……もし過去に、決定的に違うエピソードがあったようでしたら申し訳ありません!!
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2018年12月26日

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