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『たまにはこういう時もある 』
雅・マルシア・丹菊aa1730hero001)&アルaa1730


 最近、アル(aa1730)の様子がおかしい。
 というのが雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)が、相棒を尾行する事を決意した理由だった。
 話は二週間前に遡る。アルはその日「ちょっと散歩に行ってくる」と一人で家を出ていった。もっともそれだけであれば何の問題もなかったが、その次の日からも
「ちょっとコンビニに行ってくる」
「ちょっとその辺に行ってくる」
「ちょっと焼き芋買いに行ってくる」
「ちょっと(以下略)」
と毎日のように外出し、そして例外なく三時間程家には帰って来なかった。家の前を通った焼き芋売りのトラックに三時間も掛かる訳がないのに。
 という訳で雅はその日、ついにアルを尾行する事を決意した。何もないならそれでいいが、何かあったらとても困るし、誤魔化して外出している以上何かあるに決まっている。かくして雅はスカーフで顔を隠しつつ、奥様にヒソヒソされながらアルの後をつけていた。
「ごめんくださーい」
 尾行開始から四十五分後、アルはテクノボイスを響かせてカメラ屋へと入っていった。大型電気ショップではなく、地域密着型のこぢんまりしたレトロなカメラ屋。『(あらいい被写体じゃない)』と雅のカメラマン魂が疼いたが、何故アルがカメラ屋に入ったのかは謎だった。アルにお使いを頼んだような覚えはないし。
 だが突撃する訳にもいかず、電柱の影に175cmの身長を潜ませ続けていると、アルが「ありがとう!」と言いながら出てきた。雅は完全に姿を隠した。ヒソヒソしていた奥様方が一瞬にして顔を背けた。
『(……? あれは……?)』
 雅が再び電柱から器用に顔だけひょっこりさせると、アルが何か大きめの黒い箱を持っていた。もっともカメラ屋から出てきた時点で箱の中身は決まっているが。
『(カメラ? でもなんでアルちゃんがカメラを?)』


『う〜〜〜〜〜ん』
 一足早く帰宅して雅は一人唸っていた。色々考えてみたのだが、何故アルがカメラを購入したのか検討もつかない。
『(単純に考えればカメラを使いたいからだけど、でもそれならあたしに借りればいいだけよねえ?)』
 まさかあたしへのプレゼント? と雅はハッと閃いた。もうすぐクリスマスだし、その可能性は大いにある。「プレゼントだとバレないように」であればアルの行動も説明がつく。
 その後アルが普通に帰宅し、その手には何もなかったが、『自分にバレないよう何処かに隠したのだろう』と雅は気にしなかった。プレゼントなら気付かないフリをした方がいいだろうと、雅は何も知らない顔でクリスマスが来るのを待った。
 だがクリスマス・イブも当日も、アルから雅へカメラのプレゼントはなかった。可愛いアクセサリーは貰ったが、カメラがプレゼントではない事への衝撃の方が大きかった。
『(あたしへのプレゼントじゃない? じゃあ別の誰か……ま、まさか男!?)』
 あり得ない事ではない。アルの気になる男がカメラが好きで、その人へのプレゼント用に私財をはたいて購入したとか。妹のようなアルのあり得なくはない可能性に雅が硬直していると、
「おねぇさん」
と突然声を掛けられ、『アアアアアルちゃん!?』と雅は超どもった。
『な、何かしら?』
 動揺を悟られないようコホンと咳払いをした後、雅は努めて笑顔を作りアルにそう問い掛けた。アルは何処となく緊張した面持ちで雅を見つめた後、今の雅には少々意外な事を切り出した。
「あのね、イルミネーションを見に行かない?」


「ちょっとお花摘みに行ってくるから、おねぇさんは先に写真撮ってて!」
 と言ってアルは雅を置いて人混みの中に走っていった。時刻は午後七時。場所はイルミネーションスポットとして人気を博している公園。そのど真ん中でさっそく雅はアルから置いてけぼりを喰らった。
『え、えええ!? アルちゃん!?』
 慌ててアルの名を呼ぶが時は既に遅かった。伸ばした手の先にアルの小柄な姿はなく、イルミネーションを楽しみに来たカップルとかの姿しか見えない。また本当にお花摘みなら追い掛けるべきではない。雅は困ったように眉を下げ、手元のカメラを弄りながら呟いた。
『アルちゃん、やっぱり何か変よねえ……?』
 外出の理由も分からない。カメラの行方も定かでない。なんでここに来たのかも、本当にお花摘みかも不明。謎は深まるばかりである。まさかここで好きな男と落ち合うつもりなのかしら? でもそれなら雅をここに連れてくる訳がないし……。
 考えても考えても答えが出る気配もない。それでも雅は考えたが、二分程で吹っ切れた。
『とりあえず、写真でも撮って待ってましょうかね』
 考えても答えの出ないものにこだわり続けても仕方がないし、アルが戻ってきてから聞いた方が断然早い。それにせっかくイルミネーションを見に来たのだ。そして手にはカメラがある。これで撮らなければ損だろう。
 ネットで評判なだけあって、公園のイルミネーションはそれは見事なものだった。時間毎に色を変える仕掛けらしく、今は桜色のイルミネーションが数百メートル続く街路樹達を彩っている。
『まるで桜みたいね。冬に見る桜っていうのも素敵』
 アルちゃんが戻ってきたら一緒に一枚、と思いつつシャッターボタンを押す。とその時、横合いからパシャリという音と共に光が走った。誰かが雅の右方向でフラッシュを焚いたのだ。
 さして珍しい事ではないので大して気にも留めなかったが、フラッシュは何度も焚かれた。その度に白い光がチラチラと雅の目に入った。さすがに少し気になったのでそちらの方に顔を向けると、「やばっ!」という声が向いた方から聞こえてきた。
『(……ん? 「やばっ!」?
 もしかして……あたしを撮影している?)』
 当人に許可を取らず勝手に横合いから撮っている、つまりこれは盗撮である。雅は一応確認のため、盗撮に気付かないフリをして自分のカメラを街路樹に向けた。その時また横合いからフラッシュの音と光がした。間違いない。撮られている。雅はそれでも素知らぬフリでカメラを構え続けたが、再度音がした瞬間、カメラをさっと小脇に抱えそちらへ向かって駆け出した。
「えっ!?」
『あたしを盗撮しようなんて、いい度胸してるじゃないの!』
 175cmのワイルドバディが人影目掛けて宙を待った。人影は慌ててカメラを庇い、そのまま雅に押し潰される。
「きゃあっ!」
『観念なさい盗撮男! どうせ撮るならちゃんとあたしに許可を取って……きゃあ?』
「おねぇさん! ボク、ボクだよ!」
『ア、アルちゃん!?』
 雅は相棒の姿を認め、慌ててその上から退けた。幸い何処にも怪我などしてはいないようだが。
『で、でも、どうしてアルちゃんが? あ、そのカメラ……』
 そこでようやく雅はアルの手の中の物に気が付いた。見覚えのない、新品の一眼レフカメラ。アルは少し俯いてから、伺うように雅を見つめる。
「おねぇさん、写真撮る時すっごく楽しそうないい顔するんだ。だからボク、おねぇさんを写真に撮って見せてあげたいなって思ったんだ。それもスマホとかじゃなく、ちゃんとしたカメラで撮って……」
 その一言で、雅がアルに抱いていた全ての疑問が氷解した。こそこそカメラを買っていたのもイルミネーションに誘ったのも、来てすぐに姿を消したのもつまりは全部そのためで。相棒の心遣いにキュンとしつつ、雅はアルに視線を合わせる。
『そうだったの。でも、言ってくれればいくらでも写真ぐらい撮らせてあげたのに』
「それじゃあダメなの! そしたら顔作っちゃうでしょ? ボクはあくまでおねぇさんの自然な顔を撮りたいの!」
 言ってアルはむくれたが、『顔なんて作ったりしないわよ』と雅は安請け合いをした。夜間での撮影の仕方をレクチャーした後『ほらどうぞ撮りなさい』と、街路樹に自分のカメラを向けてアルに撮られる瞬間を待つ。
 が、今から撮られるんだと思うと、なんだか顔がむずむずしてきた。妙に強張ると言うか、強張っているくせになんだか口元がニヤニヤしてしまうと言うか。
「おねぇさん、違う、その顔じゃない」
『ま、待ってね。今ちゃんとするから』
 そう言ってちゃんとした顔をしようとするのだが、いつも自分がどういう顔で撮っているのか、さっぱり分からなくなってしまった。雅はアルに顔を向け、誤魔化すような笑顔を浮かべる。
『む、難しいわね……』
 それを聞き、アルはまたむくれて見せた。
「もー」

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)/外見性別:?/外見年齢:28/シャドウルーカー】
【アル(aa1730)/外見性別:女性/外見年齢:13/能力者】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。お届けが遅くなり申し訳ありません。雅さんと言えばカメラと思い、このようなお話にさせて頂きました。口調や設定、イメージと齟齬がありましたら、お手数ですがリテイクの連絡をお願いします。
 この度はご注文下さり、誠にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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2018年12月27日

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