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『暮れる年と空舞う白 』
狐杜aa4909


(……雨か雪が、降りそうなのだよ)
 狐杜は空を仰ぎ、色の薄いサングラス越しに雲を見た。重たげな雪は何処までも続いている。
 そこから降るものは雨だろうか、と思うものの吐く息の白さから『雪になるかもしれない』とも思わせて。
(あの2人は、どんな反応をするだろうね)
 思い浮かべるのは今、ここにはいない狐杜の英雄2人。
 朱華色の髪を持つ彼女は興味津々で雪を観察し、触れてみることだろう。教えてあげれば雪遊びもしそうだ。赤鬼の彼は黙って空から落ちる雪を眺めるだろうか。
 なんて考えていれば、不意に頬へ何かが触れた。
「……雪だったようだね」
 水より冷たく、頬に触れても濡れた感触はない。けれど雪の降る中を帰っていれば、いずれずぶ濡れになってしまうことだろう。
 狐杜は持っていた鮮やかな色の和傘をすぼめて開き、真っすぐ持つ。しんしんと降り始めた雪の中、帰路に着こうと参拝に来た神社を後にした。
(沢山、積もりそうだね)
 視界をちらつく城はその密度を増して、足元にもその色を残していく。明日には雪かきに励む人々が見られるだろう。
「雪遊び、ね。さて、どんなものがいいかな?」
 狐杜の第2英雄は移り気だ。彼女に雪遊びを教えるのなら、幾つか考えておきたい所である。
 まずは簡単なものから。小さな雪うさぎや雪だるまはすぐ作れるだろう。雪が綺麗に積もるのなら手形をつけて遊んだり、色水で絵を描いてみるのも良い。さらに降るのならかまくらも──とは思うが、飽きてしまうだろうか。
 あの中に入るのは楽しいが、如何せん完成までが長い。狐杜と英雄2人で頑張っても、大きなかまくらを1日で作ることは難しいだろう。
(ああ、小さなかまくらでも、良いかもしれないね)
 そういえば、と狐杜は思い出す。日本のどこぞでは小さなかまくらを沢山作り、その中に火を灯した蝋燭を入れるのだ。その程度の大きさなら、さほど時間をかけずにできるだろう。周りが雪に囲まれていれば火事の心配も少ない。
 不意に狐杜の降りていた階段の下から、冷たい風が抜けていく。思わず肩を竦めた狐杜はふと視界の端で捉えた赤に視線を向けた。
 それは邪を祓うと言われる植物──椿の花。
(おや。前にも見たね)
 去年、いや今年だったか。けれど雪は積もっていたから1年近く前のことだろう。あの時は既に幾つかの花が落ちていたが、今はまだどれも綺麗に咲いている。
「……ああ。もしかして、雪で落ちてしまうのかな?」
 狐杜はそう呟くと花へ手を伸ばした。早速積もってきている雪を指でそっと払ってやると、雪の退かされた花弁がふわりと揺れる。幾つか同じように払ってやるが──。
(キリがないね)
 なにしろ、空は絶えず雪を降らせている。狐杜が仮にずっと雪を払い続けていたとしても、その内手が足りなくなって落ちてしまう花が出てくるだろう。自然の摂理、というものかもしれない。
「来年、また来るからね」
 そう椿たちに挨拶して、狐杜は再び階段を降り始めた。


 長い階段を下りきると、地面が既に白くなっていた。まだまだ降りやむ気配はなく、これは本当に積もりそうである。
 まだ柔らかなそこを踏むと足跡がついた。そうして何歩か雪の上に跡をつけ、狐杜はくるりと振り返る。
「……わたしの足跡、だね」
 そう、足跡だ。雪の残された、狐杜の進んだ跡。
 これまで進んできたそれは、思えばあっという間だった気がする。この先は──来年はどうだろう。リンカーたちが『王』を倒したら、その後は。
(今はまだ、分からないね)
 来たるその時まで。或いは、今のように振り返るまで。未来予知でもなければ、いや予知でさえも現実となるまで不確定だ。だから、前へ進むしかないのだろう。
 さて、と狐杜は前へ向き直った。
「帰って年越しの準備を、しなくてはね」

 赤の傘を差すその後ろ。足跡は新たな雪に、少しずつ埋もれていった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa4909 / 狐杜 / ? / 14歳 / 審判の号砲を待つ 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 お世話になっております。狐杜さんの年末シーン、お届け致します。
 素敵なイラストをお持ちだったので、年末の参拝帰り……ということで絡めて描写させて頂きました。
 椿で合っているかと思うのですが……イメージに沿えておりましたら幸いです。
 リテイク等ございましたら、お気軽にお申し付けください。
 この度はご発注、ありがとうございました。良いお年を。
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2018年12月27日

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