『願わくば 』

マイヤ　迫間　サーア（aa1445hero001）

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　『王』との決戦。世界の存続を前にしながらも、同時にエージェントたちは世界中に現れる愚神や従魔と相対していかなければならない。
（この後も依頼があるのだし……しっかり休息をとっておかないと）
　マイヤ　サーアはベッドに身を横たえ、目を瞑った。幻想蝶の中は暑くもなく寒くもなく、快適ではある。能力者を模した人形を抱き寄せると、彼の顔をふと思い出した。
　彼の顔を、というのは正確でないかもしれない。彼とは顔を毎日合わせているのだから。マイヤが思い出したのは以前の──婚約指輪を作ろうと言った彼の顔だ。
　彼と婚約した時に告げられたその言葉を、しかしマイヤは頷かなかった。
『本当に結婚したら指輪を買うのだから、婚約指輪にお金は使わなくていいわ』
　マイヤの言葉に彼は大層ショックを受けた様子だったが、これはマイヤにも譲れないことだったのである。
（……資金は、有限だもの）
　公務員の職に就き、エージェントとしての収入もある彼。だがその資金はやはり限りがあって、マイヤはそれを自分のために使ってほしかった。

　《最期の時まで互いの為に生き抜くこと》

　それは、婚約後に定め直した２人の誓約。
　これから今まで以上に危険な戦いが待っている。切り抜けるためにはリンカーたちの実力だけでなく、万全の装備を整えていくことも必要だ。婚約指輪を買ったから万全の状態にできない、なんて洒落にならないし──それで彼が大怪我をしようものなら、指輪を受け取ってしまったマイヤは自分が許せなくなるかもしれない、と思うのだ。
　それに、想いを形にするのはいつだってできる。それこそ王の脅威がなくなって、戦いが終わって、結婚するまでの間に改めて婚約指輪を作りに行ってもいい。
　ただ、今ではないというだけなのだ。
（どうか……私を、１人にしないで）
　今を生きる理由と、道をくれた貴方。貴方と共に生きていきたいのだから──。

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　思い出しながらうつらうつらと、少し微睡んでいたようだった。
　マイヤは何度か瞬きをして、ゆっくりと身を起こす。まだ彼に呼ばれたわけではないようダ。
（……そういえば、何をしているのかしら）
　ふと気になったのは幻想蝶の外の状況。彼の仕事は終わったのだろうか。依頼の時間まではまだもう少しあったはずだけれど──なんて思いっている間に、幻想蝶が外へ出される気配。
　マイヤは幻想蝶の外へ出て、彼の顔を見ると困惑の表情を浮かべた。
「もう依頼の時間だったかしら……？」
　それにしては他のエージェントも見当たらないし、集合場所でもない気がするが。
　マイヤの問いに彼はにこりと笑い、まだ時間があるからお茶に付き合ってほしいと告げる。
「……まぁ、いいけれど。戦う前なのだから、程々にね」
　小さく首を竦めながら、マイヤは辺りをきょろきょろと見渡した。そして、気づく。
（……２人組が多いのね。恋人同士かしら）
　駅前の広場、中央には大きなツリー。イルミネーションが道行くカップルたちを照らし出す。彼らは笑い合い、また手を繋ぎ合ってマイヤたちの前を通り過ぎていった。
「マイヤ？」
　彼が怪訝そうにマイヤの名を呼ぶ。金色の瞳を彼へ向け、マイヤはおもむろに手を差し伸べた。
「──手を、繋いでもらえる？」
　伸ばした手は応えるように彼の指が触れて、絡められる。
（……冷たいわね）
　彼が外を歩いていたのに対して、マイヤは快適な幻想蝶の中で休んでいたのだ。当然と言えば当然。その分、マイヤの熱を分け与えるようにしっかりと彼の手を握る。
　そうして喫茶店を探して歩けば、マイヤと彼の温もりは混じり合い、やがて同じ温度になった。
（寒いからこそできること……かしらね）
　今、この時だけを考えれば世界の危機などまるで夢の様。けれどもリンカーたちは従魔と、愚神と、そして王と戦う現実にもうすぐ引き戻される。
　それでも願わずにはいられない。

　来年も、再来年も。彼と並び歩く時間が続きますように──。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 aa1445hero001 ／ マイヤ　サーア ／ 女 ／ 26歳 ／ 奇稲田姫 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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　お世話になっております。マイヤ　サーアさんの冬のひと時、お届け致します。
　先日の依頼では能力者さん視点となりましたので、同時系列のマイヤさん視点で描写致しました。イメージに沿えておりましたら幸いです。
　リテイク等ございましたら、お気軽にお申し付けください。
　この度はご発注、ありがとうございました。良いお年を！

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2018年12月27日