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『笑顔の花 』
ユメリアka7010)&エステル・クレティエka3783

 その日は風が強くて特別寒かったけれど、空は驚くほどに輝かしく晴れ渡っていた。そんな空の下、ユメリア(ka7010)は林の木々の間を歩き回っていた。新しい年の始まりに、部屋に飾る植物を探していたのである。
 冬は草木が枯れきっているように思われがちだけれど、実のところはそうでもない。冬場に花をつける種は意外と多いし、通年青々と葉を茂らせている樹木だってあるのだ。
「これなんて、新年のおめでたさにぴったりですね……」
 そう呟きながら、つやつやと赤い実をたわわにつけた南天の枝に手を伸ばした。実が落ちてしまわないように気をつけながらそっと鋏で枝を切り取り、バスケットの中におさめた。ときおり、ぴゅう、と鋭い風が吹き、木々が大きく揺れてざわざわと音を立てる。木々と同じくユメリアも揺らされて、ユメリアはそのたびに痩身をかき抱いてふるえた。
 寒さに耐えながら歩き回ること、二時間ほど。ユメリアのバスケットはほぼいっぱいになった。これならば、花瓶をかなり豪華に彩ることができるだろう。季節の恵みを与えてくれた林に感謝の礼をして、ユメリアは帰路についた。



 林から一番近い街道は、馬車が通りやすいように申し訳程度の舗装をされているだけのもので、街道沿いはひどく殺風景だ。商店が立ち並ぶわけでもなければ民家もほとんどなく、何か買い物をしたり休憩をしたりするには一時間ほど歩いた先の町へ辿り着くしかない。……と、記憶していたのだが。
(あら……、何やら、可愛らしい建物が……)
 ショートケーキの上のイチゴのような赤いとんがり屋根の家が、遠目に見えてきたのである。その家の姿がもう少しはっきり見えるところまで歩いてゆくと、今度は、家の前に誰かが立っているのも見えてきた。
(あの方は……)
 ユメリアは驚いて目を見開いた。よく知っている顔だったのである。
「エステルさん……?」
 まるで家の中を覗き込むようにして立っているのは、エステル・クレティエ(ka3783)だった。
「あっ、ユメリアさん!」
 近づいてくるユメリアに気が付いて、エステルが顔を上げる。
「偶然ですね、こんなところで会うなんて」
「ええ、まったくです。でも、エステルさんどうなさったんですか、こんな寒い所に立って……、こちらは、お知り合いのお宅か何かですか?」
 ユメリアがちらり、と家の方を窺うと、エステルは、そうじゃないの、と首を横に振った。
「ここね、喫茶店らしいんです」
 エステルがそう言いながら指差す先には、小さな看板が出ていた。『ケーキ&ティーサロン』と書かれている。
「とっても可愛らしいお店だから、入ってみたいなあ、って立ち止まったんですけど、入ったことのないお店だし、今日はひとりだしなあ、と思って迷っていて……」
 なんでも、エステルはハンターとして依頼を受けた任務を終わらせた帰りだという。今回は顔見知りが誰も一緒に参加しておらず、ひとり帰路についたとのことだった。
「そうでしたか。ここは、お店だったんですね。……最近できたばかりなのかもしれませんね……」
 ユメリアにとっては何度か歩いたことのある街道だが、こんな店には見覚えがなかったし、よくよく見れば赤い屋根も白い壁も真新しい。ふむふむ、とふたりでお店を眺めていると。
 ぴゅうっ。
「うっ」
 冷たい風が吹き抜けて、エステルが思わず呻いた。ユメリアもたまらず身をふるわせる。
「さむーい!!」
 両手をこすって息を吐きかけるエステルの可愛らしい姿にユメリアは微笑んだ。
「エステルさん、お店、入りましょうか」
「え?」
「寒くて寒くてたまりませんし……、それに、もうひとりではないでしょう?」
 ふふ、とユメリアが笑いかけると、エステルは少し目を見開いたあと、嬉しそうに笑い返した。
「はい、入りましょう! ありがとう、ユメリアさん!」



 店の中では薪ストーブがぱちぱちと燃え盛り、あたたかな空気で満たされていた。いらっしゃいませ、と出迎えたのはエステルと同じくらいの年ごろに見える娘で、ふたりをストーブの炎がよく見える席に案内してくれた。
「あったかぁい!」
 エステルが、ストーブに手をかざしてから席についた。依頼の際にはきびきび動き、しっかりものの印象が強いが、こうした無邪気な面も持っているエステルを、ユメリアは心底好もしく思っていた。
「わあ、どれも美味しそう! ユメリアさん、どれにしましょう?」
 テーブルの上にメニューを広げ、エステルが目を輝かせる。ユメリアも、たくさんのイラストが描かれたメニューを覗き込んだ。
「いちごのショートケーキが一番人気……、あっ、でも季節のタルトも美味しそう。今はサツマイモなのね……、ミルフィーユもあるしモンブランもガトーショコラもある……、あっ、フルーツロールケーキも捨てがたいわ!」
「ずいぶんと紅茶の種類が豊富なのですね……、アールグレイ、ダージリン、アッサム……、ああ、オレンジペコーもいいですよね……、あら、ハーブティーもあるんですね。ミント、カモミール……、このお店のオリジナルブレンドというものも気になります」
 エステルは熱心にケーキを選び、ユメリアはその隣に書かれたお茶のラインナップに夢中になった。
 ふたりとも迷いに迷い、ようやく決めた注文を、店員に告げた。エステルは「いちごのショートケーキとアッサムのロイヤルミルクティー」、ユメリアは「はちみつチーズケーキとオリジナルブレンドハーブティー」だ。
「ふう……、なんだか、迷いすぎてそれだけで疲れてしまった気分だわ」
 エステルがそんなことを言って、うーん、と伸びをするものだから、ユメリアはつい、くすくすと笑ってしまった。エステルは、そんなユメリアをまじまじと見て、ほつりと呟く。
「ユメリアさんの笑い方は、いつもとっても穏やかですよね。いいな、私もそんなふうに笑えるようになりたいわ」
「……そう、ですか?」
 自分の笑い方について特に考えたことのなかったユメリアは、少し驚いて小首を傾げた。
「私からしてみれば、エステルさんのように、手放しの、と申しましょうか、満面の、と申しましょうか、そういう笑顔が、とても眩しくて好ましいと思うのですけれど……」
 ユメリアが本心からそう言うと、決してお世辞ではないということがきちんと伝わったものらしく、エステルは嬉しそうにはにかんだ。
「そうですか? なんだか、照れます」
「ふふふ。エステルさんは、そのままでいいと思いますよ」
「そう、かな? そうなの、かな? でも、努力はしていかなくちゃいけないとは思っているんです。女性として……、もっと魅力のある存在になれるようにって……」
 きっと、誰か特定のひとのことを思い浮かべているのだろう、エステルはつい、と考え込む眼差しをつくった。その様子が妙に色っぽくて、ユメリアは、もう充分魅力があると思うけれど、とこっそり胸中で呟く。
「あっ、女生としてだけじゃなく、もちろん、人間的にも!」
 ユメリアが見守っていたことに気がついたエステルが、慌ててぱたぱたと手を振って弁解する。そんな様子も、実に可愛らしい。
「ゆ、ユメリアさんと、こうしてふたりでお話することって、あまりなかったから、ちょっと新鮮」
「そうですね、依頼でお会いすることの方が多いですから」
 苦しい話題の転換だと思ったが、ユメリアはエステルに合わせて頷いた。こうした穏やかな時間を、友人と過ごせると思うと、話題が何であってもそれだけで嬉しい。
「また、是非、こういう機会をつくりましょうよ!」
「はい、是非。春になって、外を出歩くのが楽になったら、お花を摘みに行くのもいかがですか?」
 ユメリアが、自分のバスケットの中を示しながら言うと、エステルはうんうん、と大きく頷いた。
「是非!」
 バスケットの中は、鮮やかな花が乏しかったけれど、ふたりの会話には大きな花が咲きそうだ。ユメリアが、そう思ったとき。
「お待たせいたしました!」
 大きな盆を持った店員が笑顔でやってきた。注文の品が運ばれてきたのである。
「わあ!」
「美味しそうですね」
 ケーキとお茶を前にして、ふたりの乙女は、それぞれに魅力的な笑顔を見せ合ったのであった。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka7010/ユメリア/女性/20/聖導士(クルセイダー)】
【ka3783/エステル・クレティエ/女性/17/魔術師(マギステル)】



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ごきげんいかがでございましょうか。
紺堂カヤでございます。この度はご用命を賜り、誠にありがとうございました。
可愛らしい女性ふたりとなれば、女子会。女子会って言ったら、ケーキだよなあ、というなんとも安直な考えで書いてしまいましたが、大変わくわくと執筆させていただくことができました。
もっともっとふたりの会話を追いかけたくなったくらいです。是非、これからも仲良くなさってください!
楽しんでいただけたら幸いでございます。
この度は誠に、ありがとうございました。
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ファナティックブラッド
2019年01月07日

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