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『色を得た世界 』
マリナ アルフェウスka6934

 『マリナ アルフェウス』
 この単語は多分、オートマトンである自分を示す名称である。
 多分……というのは、目が覚めた時――この場合は再起動、という方が正しいのだろうか。
 ともあれ、彼女が目を開けて、自我を認識したそれ以前の記憶がすっぽりと抜け落ちていたからだ。
 自分の経歴どころか個体名すら分からない。
 クリムゾンウェストへ来た経緯そのものが不明確と言っていい状況だった。
 唯一所持していたのは、首から下げているドックタグで……そこに『マリナ アルフェウス』と刻まれていたので、恐らくそれが自身の名なのだろうと判断した。
 もしかしたら、このドックタグもただ持っていただけで他人のものなのかもしれないけれど。
 少なくとも、これが与えられていたということは、きっと何かしらの形で従軍していたのだろう。
 この名を名乗っていれば、自分の過去を知るものと出会えるかもしれない。
 ドックタグにあった名を名乗ったのは、そんな合理的な考えに基づいてのことだ。


 ――再び起動して、活動を始めたマリナだったが、自我はあっても『何もない』状態の彼女は、酷く存在が希薄だった。
 手始めに記憶を呼び起こしてみようと思ったが、これがなかなかうまくいかない。
 どこか壊れてしまっているのだろうか。
 朧気に思い出せたのは――以前、何かしらの武器を手にしていたこと。
 でも、それが何であったかは思い出せない。
 どこに置いて来たのかも分からない。
 そしてもう一つ、彼女の中に本能として備わっていたのは、敵を、人類に仇なす存在を殲滅せよという命令だった。
 その本能に従うように、マリナはハンターとして登録した。


 ――それから、彼女はただ淡々と『生きる為』の活動を続けた。
 ハンターズソサエティで仕事を受け、依頼をこなす。
 入った報酬でエネルギーを獲得し、自我メンテナンスを行い、再び依頼を受ける。
 ただただ、その繰り返し。
 その生活に色はなく、生命活動を維持する為の最低限を。ただ機械のように何度も、何度も……。


 そんな生活を続けていたある日、マリナはとある存在に出会った。
 自分と同じオートマトンの少女。
 ハンターズソサエティに張り出された同じ依頼を確認した際、たまたま目が合って……それから、何度か一緒に仕事をし、プライベートでも顔を合わせるようになっていった。
 ――彼女は『何もない』自分とは違い、楽観的で人懐っこかった。
 それが何だか、とても眩しくて……。
 彼女を見ていると、自分の胸の中が揺れ動く感覚に襲われた。
 それが一体何なのか分からなくて、思い悩んだ。
 口にしようとしても上手く伝えられず、表現に苦しんで――。

 それの不明瞭な、揺れ動く感覚を、『感情』と呼ぶのだと知ったのは、彼女と大分親しくなってからだ。
 それまで目に映るものに色があることすら知らなかった。
 ……知識としてはあったが、興味がなかった、というのが正解か。
 それまでの自分はただ単に『生命活動』をしていたに過ぎず、『生きている』には程遠い状態だったのだろう。
 ようやくただの兵器から、ヒトになったのだ……と思う。

 色のない世界は辛いことはなかったが、楽しくもなかった。
 そう感じることすらなかったのだから当然だ。
 感覚を得て……マリナは色々なことを覚えた。
 彼女と話して、空の蒼さを知った。
 彼女に触れて、日差しの温かさを知った。
 食べ物には甘いもの、辛いもの、色々な味があるのだと……。
 そして――もう1つ。恐怖の感情を知った。
 彼女を喪うのが怖い。嫌われたくない……。
 何と愚かで、非効率な感情だと自分でも思う。
 それでも、この非効率さが何と心地よく、愛おしい。
 ――これを教えてくれた彼女には、感謝してもし足りない。
 この気持ちを、自分の中で育てて……この先長い時間をかけて、感謝の言葉を伝えていこう。


 色のない世界に生きていた私が、色を得る切欠となった存在へ。
 小さな決意は、明日の私を作る糧になる。
 ――さあ。今日も依頼をこなして、可愛いあの子に会いに行こう。
 途中でお土産を買っていったら喜ぶだろうか。

 微笑むマリナ。
 ドアを開けた先は、様々な色で満ち溢れていた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka6934/マリナ アルフェウス/女/17/色を得た機械人形

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております。猫又です。

マリナさんのノベル、いかがでしたでしょうか。マリナさんの設定部分を読んで、掘り下げる形で認めてみました。
少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
好き勝手色々書いてしまいましたが、話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
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ファナティックブラッド
2019年01月07日

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