▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『魅了されたのは魔法の宝石ではなく少女の形をした宝石 』
シリューナ・リュクテイア3785)&ファルス・ティレイラ(3733)

 ある日、とファルス・ティレイラ(3733)が瀬名雫に頼まれて、『調べ物する』とシリューナ・リュクテイア(3785)に一言残して出かけた。
「わぁ、なんか雰囲気がある建物……」
 ファルスは郊外にある古びた洋館を見上げ、怪しい感じというより近代化が進んでいるお洒落な家より綺麗だと思った。
 しかし、雫の話によると洋館に入った人々や周囲の住人までもが奇怪な現象に合い、渋々家を手放したり通行止めせざる得ない状況であった。
「そうね。でも、奇怪な現象を起こしている中心はこの家なの。そう、この何時建った誰も知らない家……」
 同行した雫は静かに言った。
 流石に人除けもされており、建物自体を手放してからそれなりの月日が経っているのだろう、預かったカギを使い錆びた門を開くと草が伸び放題の庭に足を踏み入れた。
 木々も手入れされていないので伸びきっており、昼間なのに薄暗い庭を歩くファルスは少し腰が引けていた。
「やっと玄関……本当に屋敷もだけど、敷地が広いのって不便ですね」
 はー、と嘆息するとファルスは振り向き、歩いてきた庭を見据えると背筋がゾッとした。
「えーと、玄関のカギは細工が細かいのっと」
 じゃらり、と重たい金属音を奏でながらカバンからカギの束を取り出し、玄関のカギを探す。
 幸いにも雫がタグを付けて分けてくれていたため、見つけるのにさほど時間は掛からなかった。
「こんな綺麗なカギを使うの初めて」
 シリューナの仕事を手伝う時に飾りやアンティークとして作っているのを見ているが、実際にカギとして使われているのは見たことがなかった。
 ファルスの大きな緋色の瞳がカギの細工を映すと、蜘蛛の巣の様な細工に色んな色の小さな宝石が散りばめられてた。
 カギをドアの口に入れ、ゆっくりと捻ると重たく鈍い鉛の音がガチャリと鳴った。
「え……なんか、普通の洋館じゃないっ」
 重たいドアを押し、ギギギギと鉄が軋む音と共に開かれていくがファルスは直ぐに違和感を感じると、ドアを閉めて踵を返そうとした瞬間。
「ファルス!」
 雫が手を伸ばしたものの空を掴み、しゅるり、と蒼白で半透明な腕が伸び、細い体を掴むとドラゴンであるファルスの抵抗も空しく洋館に引きずりこまれてしまった。
「いらっしゃい。綺麗なお嬢さん……さぁ、わたくしのコレクションになりなさいな……」
 古びた椅子に座る何者かは、口元を吊り上げるとぶつぶつと何か聞き取れない言葉を発した。
「ま、まって!!」
 動けないファルスが声を上げるが、一切聞き入れる様子は見せずにただただ聞き取れない言葉が呪文として進んでいるのだけは感じた。
「いけない! 口を塞ぐか邪魔をして! それは呪文の類!」
 ダンダン、とドアを叩きながら雫は声を上げた。
「だめ、動けない!」
 青白く半透明の腕はファルスの体をガッシリを掴んでおり、足をばたつかせたり、尻尾を振ったり、翼を生やして羽ばたくも効果はなかった。
「仕方がない!」
 雫が窓を突き破り、強引に洋館に足を踏み入れようとするがーー呪文は終わっておりファルスも雫も足元から徐々に感覚が無くなるのを感じた。
 ふと、足元へ視線を向けると、銀をメインに色が違う場所は色が近い宝石にへと変わる。
「ご、ごめんなさい〜」
 ファルスは最後に言い残すと、翼を広げて天を仰ぐ様なポーズのまま完全に宝石が散りばめられた像となった。
 呪文をドア越しに聞いていた雫も意識を失い、クリスタルの彫刻の様になってその場に座り込んだ。

「遅いわね」
 シリューナは時計の針が8を差しているのを見て、呟くが依頼で調べ物位ならば一日使う程の内容なのだろうと思い、その日は全く気にしなかった。
 しかし、3日、6日と日が経ってもファルスからの連絡どころか、家に行っても帰っていない。
「一人ではないのに……とりあえずファルスの魔力を追ってみましょう」
 シリューナは魔力の痕跡と、何処からか風に乗って感じる力を辿りながら情報収集した結果、洋館に辿り着いた。
「聞いた通りね。それに、魔力の痕跡もある……門が開いているから間違いないわね」
 門が開きっぱなしなのに気づくとシリューナは、此処にファルス達がいる事を確信すると躊躇わずに足を踏み入れた。
「雫ね、こうなっているとなると……ファルスもって事ね。比較的に雫は軽度だけども、中にいるファルスはどうなっているのかしら?」
 クリスタルの彫刻の様な雫を見つけたシリューナは、呪文の影響が比較的に軽度である事を見破ると解除した。
「っは、シリューナ、中に……」
「分かっているわ。後は任せて、雫さんはとりあえず休んでて」
 1週間近く像化していたからだろうか、雫は立つこともままならない状態である事にシリューナは気付くと、無理をしないように優しく言った。
「おやおや、またお客さんかしら?」
 古びた椅子に座った何者かが、楽しそうに言うとシリューナは素早く魔力で襲い掛かってきた青白く細い半透明の腕を倒す。
「呪文なんて、口にさせる暇は与えないわよ」
 カギの細工を見て、既にシリューナはこの洋館の力の根源を突き止めていた。
「あぁ! 陣が、陣が壊れているではないか!」
 何者かは絶望と怒りの声を上げると、背中から長く毛に覆われた節足が生えると巨大な宝石の瞳を持つ蜘蛛の怪物が現れた。
「魔力の流れを見れば簡単よ。怪物も時代遅れってワケね」
 牙をむき出しにした巨大な蜘蛛の怪物、しかしシリューナからしたらまだまだ若くて未熟な怪物だ。
 魔力供給する陣も無い、呪文を唱えても簡単なモノだけ、そうなればシリューナは魔力をぶつけると怪物はあっという間に消し飛んだ。
 その後、雫が動けるようになったのを見てシリューナが現況の怪物を倒した事を伝え、ファルスはというとーー。
「あの怪物も中々のセンスよね」
 宝石が散りばめられた像のファルスを見て、シリューナがその部分だけを評価する言葉を呟いた。
 もちろん、像のまま連れて帰るとシリューナは恍惚とした表情でその美しい像をじっと見つめた。
 石像、魔法ガラス、鉄、そして今回の魔法の宝石の像。
「嗚呼、この美しさはこの子じゃなければ……出せない美しさね」
 色とりどりの宝石がそれぞれの部位となり、肌は白金の如く美しく滑らかな曲線を描いていた。
 何度見ても、何度触っても、ファルスの像は美しい。
 完全に像となっても、魔力の流れが血流の様に鼓動となって感じる。
 一つの芸術品だ。
 この子の事だ、呪文を直接聞いて呪いを受けたのは明白である。
 優しい少女だから、美しい少女だから、この姿に美と愛情を注ぐのはシリューナの役目。
 普段は見せれない素の自分を、今このひと時だけ己の欲を開放して楽しむ。
「あら、目はピンクダイヤモンドなのね」
 白金の頬と頬が触れ合うくらいに近付き、じっと大きな瞳を覗くとカットされたピンクダイヤモンドがシリューナを多面に映る。
「本物の肌みたいな色で、そして黒曜石の様な翼も素晴らしい」
 舐めれば温もりが伝わりそうな白金の肌、少し透き通っているが美しい黒曜石の翼は魅了される位だ。
 唇も、服も、尻尾も、爪も、色に合わせた宝石だ。
「いなかった分だけ、楽しませてもらうわ」
 一日だけで戻すのは勿体無い程に、少女の魔法の宝石像は魅力的で美しかった。
 さぁ、戻した時は追及される前に、失態と怪物を倒した話でもして誤魔化そうーー私の大切な宝石(ファルス)

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【3785/シリューナ・リュクテイア/女/212/魔法薬屋】
【3733/ファルス・ティレイラ/女/15/配達屋さん(なんでも屋さん)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
お久しぶりでございます。
また、ノミネート発注していただきありがとうございます。
良いですね、宝石にしちゃって愛でたり愛する部分は良さは伝わります。
ちょっと改変した部分もありますが、問題がありましたらお問い合わせしてください。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
本当にありがとうございました。
東京怪談ノベル(パーティ) -
紅玉 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年01月07日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.