▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『待ち人が宿り先から離れた後の話。 』
黒・冥月2778

「で、何がどうしてこうなったんですか、結局」
「あー…報酬は言い値で払うから請求してくれ」

 とまぁ、ひとまずビジネスライクな話を先に出して言及を封じておく。

 確かに「とある魂を呼び出す手伝いをしてくれ」と頼まれ私の影内に来て後、気が付いたらオリジナルの霊鬼兵二人に(膂力的な遠慮無しで)縋られてたり泣き付かれてたりと謎の騒ぎの渦中に巻き込まれていた空五倍子唯継にしてみれば…成り行きからして疑問山積だろう、と黒冥月の方でも思う。思うが――こいつの師匠の方との約束からして多くは語れないので、その辺りの諸々は金で解決させて貰えれば手っ取り早くて有難い。勿論、最後ボロボロになった分の色は付けるし――『仕事』上、こいつはこの手の話が通じる輩だろうと判断した。

 余計な横槍が入らぬよう秘密裏に執り行いたい。そんな事情で冥月が構築した影空間内部での『儀式』が終了し、その『儀式』の目的である待ち人、ノインの魂が一時的な宿り先の憑坐――つまり空五倍子から離れて後。
 ひとまず冥月としては最後に少々割を食った感のある空五倍子へのフォローを軽く入れてから、即次の問題へと移る事にする。

 即ち、ノインが一時的でなく宿る為の――本格的な転生の為の肉体の調達、だ。

 ノイン当人から直接希望や条件等の話も聞けたし、こうなると手近なところから話を詰めて行くのが手順として妥当だ。そして現時点で一番手近、かつ手っ取り早く話を詰めて行けそうなのが、今回の『儀式』でも手を借りた、刑部一族になる。
 元霊鬼兵でもあったノインの「霊鬼兵だった頃の素体」の血縁だと言うその一族。…「一族と言う程じゃない」とか素体の弟――に当たる刑部和司辺りが言っていたような気もするが、まぁ、もう少し突き詰めて確り話を聞いておいた方がいいだろう。



 後日――画廊『clef』。

 つまり、真咲誠名――素体の姪に当たる刑部沙璃の身体を使っている、と言うこちらもややこしい事情がある――の営む画廊。ひとまずそこに話す場を設けさせて貰った。先日草間興信所でやったように、その場所に集まった上でこちらの影内に来て貰うと言うやり方を取る。…先日同様、基本的に始終監視されていると言う刑部和司の事情を鑑みてだ。

「でだ。今更かもしれんが――ノインの転生に反対の奴は居るか」

 父親的感情はさておき、と何処かの探偵をちらりと見る。…今ここには刑部に直結する誠名と和司の二人だけでなく、顔繋ぎ役のような形で草間武彦も同席している。

「ってホントに今更の話だな」
「…ですね。そこに引っ掛かるようならそもそも初めから助力を拒んでいますよ?」
「念の為の確認だ。どうも私は口が足りん事があるらしいからな」

 とまた何処かの探偵をちらり。

「…いや、俺もそれはさすがに今更だと思うが」
「何処ぞの蝙蝠娘の時には私の口が足りなかったから面倒を呼んだような事を言っていなかったか」
「…それとこれとは随分ベクトルの違う話だと思うんだが」
「私にとっては大して変わらん。…まぁいい。反対の奴は居ないと言う事でいいな」

 ここで余計な話に脱線したらそれこそ余計にややこしくなる。思い、三人の顔を見渡し異論無い事を確かめてから、すぐに本題に戻る。

「なら他の刑部一族はどうだ、復活を知って邪魔する可能性のある親族や関係者に心当たりはあるか」

 嫌がろうが無視、力押しで進めるつもりだが――と。
 話した途端に、何やら誠名と和司の二人が妙な貌をして黙り込む。

「どうした」
「いや…そもそも存命中の親族居るのかなって思ってな」

 俺この身体になってこの方、妙なちょっかい出して来るような親族やら身内っぽい関係者に会った事無え。と誠名。曰く、精々の関係者で画廊の受付嬢をしている『彼女』の家くらいしか思い付かないらしい。刑部沙璃の両親に恩があったとか何とかで、幼い頃から病弱だった沙璃の社会的な諸々は、受付嬢の彼女の家の方で丸々手配していたそうだ。…ちなみに先立つ資産については刑部の家の方でそれなりにあり、受付嬢の家は沙璃の後見人のような立場になっていたらしい。

「つまり沙璃も沙璃で結構前から天涯孤独に近かったみたいでな。唯一の叔父が普通じゃまず連絡付かないこちらさんな訳だし」

 と、誠名は和司を見る。
 見られた和司の方も、ええ、と思案げに頷いた。

「俺も存命中の身内の心当たりは沙璃だけでしたが、御覧の通りなので今は誰も思い当たりませんね。こちらの画廊の受付嬢…の家の皆さんの方は、お名前は存じ上げていましたが、面識はありませんでした。唯一、受付嬢をしてらっしゃる彼女とだけ、今日初めてお会いした事になりますね」

 向こうも同じだと思います。

「なら、この手の事については誠名の方で既に前例があるから問題無い、と思っていいな」
「ただ身内とか関係者じゃなく、完全な外部から妙なちょっかいガンガン出されるとこはあンな」
「ええ。つまりその辺の事情で俺はIO2に所属する羽目になった訳ですし、兄は――…」
「…――ノインの素体に使われる羽目になった、と言う訳か。…と言うか刑部家とは何だ、特殊な状況にある奴らばかりだが稀有な一族なのか」

 何か特異な能力を持つとか特殊な役職にあるとか――と。
 それを訊いたら、また黙られた。殆ど反射的に誠名と和司が顔を見合わせ――何やら考え込んでいる。

「…刑部っつーと古代豪族の部民が由来じゃねぇかなぁとは思うが…そんな一般的な『おなまえの話』で済むこっちゃねぇよなぁ」
「俺の方は…生前の親兄弟も同じだったと思いますが、ごくごく普通の一般人なつもりでしかありませんでしたよ。…なのに、いつ頃からかオカルト系の組織から興味を持たれる事が多くなりまして。それが何故なのかはむしろこちらが訊きたいくらいです」
 なのでIO2内でも機会があれば訊いてみているのですが、納得行く答えは得られていません。
「…それはつまり、何の自覚も無いと言う事か」

 二人共。

「強いて言うならちょっとした超能力――所謂PKのようなものはありますが、はっきり言って冥月さんの『影を操る力』の方が余程強力なものだと思います」
「沙璃の方にその手の力があったかっつーと…ちょっと心当たりは無ぇな。俺自身が今こうなってるのが沙璃の力だったっつぅなら、その辺の加減かもしれねぇが」
「…」

 …PKのようなものに、自分の中に他人の魂を呼び込む能力?か。どちらも『置かれている立場』にしてはあまりぱっとしない能力の気がするが、どういう事なのやら。
 まぁ、身内に関しては心配無用、警戒するのは外部――つまりIO2やら虚無の境界――となれば、元々の警戒対象である以上、新たな懸念材料と言う程の事でも無い。
 ともあれ、彼らに一族について話を聞けるのはここまでか、と思う。…今後の為に一族の背景を話せる範囲で話して貰えれば助かる、と思ったが――そもそも本人たちが背景も何も思い当たらないとなればどうしようも無い。そして存命中の一族が目の前に居るだけとなれば――選択の余地も無さそうだ。

 だが、本人たち視点でここまで何も無いとなると、刑部一族について掘り起こすならむしろ外部から見た方がいいかもしれない。いっそ探偵に本業を任せるか――刑部家についての調査でも任せてみるべきか。

 その方が使えそうな答えが出て来るかもしれない。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

■PC
【2778/黒・冥月(ヘイ・ミンユェ)/女/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】

■NPC
【NPC0466(旧登録NPC)/空五倍子・唯継/男/20歳/大学生・陰陽師(似非)・霊能ライター】

【NPC0534(旧登録NPC)/刑部・和司/男/47歳/IO2捜査官(エージェント)】
【NPC0469(旧登録NPC)/真咲・誠名(刑部・沙璃)/男/33歳/画廊経営・武器調達屋・怪奇系始末屋】
【NPCA001/草間・武彦/男/30歳/草間興信所所長、探偵】

(名前のみ)
【NPC5488(旧登録NPC)/ノイン/男/?/虚無の境界構成員(元)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 いつもお世話になっております。
 今回も発注有難う御座いました。

 そして年末営業日に間に合わず年明けになってしまいましたが、大変お待たせ致しました。
 旧年中は御世話になりました。今年も宜しくお願い致します。

 内容ですが…刑部一族について。まずは全然見えて来ない感じで済みません(汗)。いえあの、本人たちに訊くと全然特別だと思ってないって事になってしまうんですよ…。取り込んで利用しようとしてる以上、IO2とか虚無とか叩けば何か出てくると思いますがそれも面倒を引き寄せる事になるでしょうからアレですし…刑部一族についてでしたらもう一人のグリーンアイズ(和司と親友&IO2移籍経緯傍で見てた)や画廊受付嬢(在りし日の沙璃一家を知ってる)辺りに当たるのが無難かもしれません。
 と言ってもその辺はノベル本編の最後に載せた「探偵に任せる」を実行して頂ければまるっと解決&もう少しくらいは深く掘り起こせる事になったりしますので、刑部一族について改めて掘り起こしたい場合は「探偵に任せる」を使って頂くとプレイング文字数が楽になるかもしれません。
 そしてまた以前の御言葉に甘えて、プレイングの後半五行辺りの反映は後に回させて頂く事にしました。御容赦下さいまし。

 と、今回はこんなところになりましたが、如何だったでしょうか。

 少なくとも対価分は満足して頂ければ幸いなのですが。
 では、次の機会を頂ける事がありましたら、その時は。

 深海残月 拝
東京怪談ノベル(シングル) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年01月07日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.