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『敵をぶっ飛ばせ! 』
世良 杏奈aa3447

●ブッ飛ばしたくて
 ある日のこと。世良 杏奈(aa3447)は一人の少女を訪ねていた。電動扉の前に立ち、杏奈はインターホンを鳴らす。
「恭佳ちゃーん。入っていいかしら?」
[はいはい。どうぞ]
 圧縮空気の抜ける音と共に、扉が開く。薄暗がりの中、デスク周りの照明だけが煌々と輝いている。風船ガムを膨らませながら、仁科 恭佳(az0091)がコンピューターの画面と向かい合っていた。その表情はどこか気だるげで、普段見せているハイな姿とは程遠い。すっかり仕事モードだ。杏奈は肩を竦める。
「恭佳ちゃん、こんな暗い所で仕事してたら目が疲れちゃわない?」
「大丈夫ですよ、別にちょっとくらい。それに、こう、暗い部屋でやってる方が何だか雰囲気出ません? いかにも科学者ですって感じの雰囲気が」
 そう言って彼女はへらりと笑う。眼鏡のレンズがきらりと光った。
「それで、今日は何の用ですか?」
 杏奈は小脇に抱えたファイルを恭佳へずいと突き出した。手に取ってみれば、「VBS版マイティ・ヒーローズ」とでかでかタイトルが掲げられている。
「マイティ・ヒーローズ……ああ、あれですか」
「そう!」
 恭佳はぱらぱらとページをめくる。マイティ・ヒーローズ。発売するなり、一週間で国内ミリオン、世界でダブルミリオンを達成してしまった対戦型ゲームの化け物タイトルだ。杏奈はシャドーボクシングしながら応える。
「家族でやってたら、何だか私までこう、身体動かしたくなっちゃって」
「まあその気持ちは分からなくもないですけど。同じように動けちゃいますもんね」
「そー! だけど本気でぶっ飛ばしあうわけにはいかないじゃない? だから、VBSでそれっぽく再現できないかなって。恭佳ちゃんなら出来るでしょ?」
 杏奈は目をきらきらさせながら迫る。ファイルをデスクに載せると、恭佳は小さく頷いた。
「まあ出来ますよ。普段使っているデータを色々いじってやれば、ある程度それらしいデザインになるかと思います」
「やった! じゃあ楽しみにしてるわね!」

●Troopers
 そんなわけで、杏奈はVBSが作り出す仮想現実の世界に立っていた。足元に広がるのは巨大で平たい人工島。何処までも広がる雲海が島を取り囲んでいた。
「此処が特設のステージってわけね。確かにゲームそっくり」
[デザインは助手の人にやってもらいました。雲海に触れるとアウトって事で強制的に切断されるんで。そこんとこよろしくお願いします]
「ゲーム通り、落ちなきゃいいってわけね? じゃあ早速始めましょうよ」
 杏奈は魔法弾を撃ち出す双銃を手に取った。トリガーを引きながら、右手を突き出し、左手を振るい、軽く空手の型を取る。身体がうずうずして仕方がない。
[はーい。じゃあ行きますよ]
 恭佳の言葉と同時に、杏奈の目の前で次々光が輝く。古臭い特撮アニメのような敵キャラクターが、次々と飛び出してきた。トルーパー。群がる雑魚敵を次々に吹き飛ばす、マイティ・ヒーローズのミニゲームに登場する敵だ。剣や銃を構えた彼らに向かって、杏奈はすぐさま突進した。
「まずは一人目!」
 走りながら、小型の魔法弾を次々に放つ。敵を吹き飛ばすには至らないが、その足はぴたりと止まった。その隙に間合いを詰め、杏奈は敵の顔面に膝蹴りを叩き込んだ。鈍い音と光が弾け、一体の敵が雲海へと吹っ飛んでいく。更に彼女は身を翻し、別の二体を雲海へと蹴倒した。その間にも光が次々と放たれ、スクラップとも見紛う姿の敵が人工島に降り立つ。それらは一斉に銃を構えた。
[油断はさせませんよ]
「わかってるわよ!」
 杏奈は咄嗟に“拒絶の風”を身に纏う。放たれた赤い銃弾を逸らしながら、杏奈は魔法銃のトリガーに指を掛けた。一杯に引き絞ると、銃口に燃えるような光が収束していく。
「纏めて、吹っ飛びなさい!」
 指を離した瞬間、巨大な火の玉が敵の集団のど真ん中へと飛び込む。甲高い音と共に炎が弾け、トルーパー達は纏めて雲海へと吹き飛ばされた。杏奈は再びトリガーを引き絞り、“ブルームフレア”をチャージしていく。
「おまけの、もう一発!」
 振り返ると、杏奈は新たに飛び出したばかりのトルーパーの群れへ炎を叩き込んだ。次々にエフェクトが弾け、トルーパー達は宙へ高々と舞い上げられて星となる。額に手を翳して、彼女はじっと空を見上げた。
「あー、凄い! ゲームでやるのも良いけど、こうして自分で体験するのもまた違うわね!」
[VBSだし似たようなもんだとは思いますけど……っと、もっと数増やしていきますよ]
 恭佳が言うなり、一斉に八体のトルーパーが飛び出してくる。杏奈は不敵な笑みを浮かべた。
「……上等!」
 両手の魔法銃を交差させると、身を低くして駆け出し、一気にトルーパー軍団の懐へと潜り込む。一体の顔面に銃口を叩きつけ、そのまま引き金を引いて吹き飛ばす。そのまま“拒絶の風”で敵の刃をやり過ごし、反撃とばかりに蹴りを胴体へ叩き込む。そのまま空中へふわりと舞い上がり、傍の二体を次々に撃ち抜いた。次々に襲い掛かる敵の攻撃をバック転でやり過ごすと、ブルームフレア最後の一発を四体に纏めて叩き込んだ。敵は断末魔の言葉も無く、雲海の底へと消えていった。
[おっと……さすがは歴戦の魔女、ってとこでしょうか]
「まあねえ。恭佳ちゃん、こんなもんなの?」
 銃を弄びながら、杏奈は余裕綽々といった面持ちで尋ねる。
[まさか。ちゃんととっておきを用意してますよ]
 刹那、ショットガンを手にした恭佳が光の中から現れた。ゴーグルを掛けた少女は、銃を構えて杏奈へ狙いを定める。
「最後はボスキャラって事で、どうです?」
「いいわね、そういう演出!」
 甲高い音と共に、弾幕が杏奈へ襲い掛かる。スキルを殆ど使い果たした杏奈は、背後へ飛び退きどうにかやり過ごした。身を伏せたまま、恭佳に小さな魔法弾を飛ばす。流石に簡単には吹っ飛ばない。恭佳は弾丸を受けたまま無理矢理間合いを詰めてきた。
 恭佳は零距離で銃口を突きつけ、引き金を引く。衝撃に襲われ、杏奈は宙へと舞い上げられた。どうにか体勢を整え、島の縁に踏みとどまる。
「おっと……流石にやってくれるわね」
 さらに突っ込んでくる。一気に押し切るつもりらしい。杏奈は恭佳の背後へ回り込むように走りながら、次々銃弾を撃ち込んでいく。更に間合いを詰め、蹴りや拳を互いに叩きつけた。
「中々やるわね」
「単純な勝負じゃ敵いませんからね。雑魚敵でスキルを使わせといて、じっくり対決するって寸法ですよ」
 杏奈は静かに笑みを浮かべた。恭佳のショットガンを手で払い除けると、銃をホルスターに収め、掌底を恭佳の鳩尾に当てる。
「まあ誰だって考える事よね。だから私も、ちゃんと奥の手を用意してあるのよ!」
 刹那、杏奈の掌で闇が弾けた。恭佳の全身を闇で包み込み、目にも止まらぬ速さで雲海の果てへと吹き飛ばす。恭佳はなすすべなく雲海へと消えていった。

「リーサルダーク。私達の必殺技、覚えておいてね?」

[……あー、なるほど。よくわかりましたよ……]
 再び天から恭佳の声が響く。VBSから弾き出されたらしい。
[お疲れ様です。一応プログラムは此処で終わりですが……まだ続けます?]
「もちろん。まだ100人には全然足りないもの!」
 杏奈は満面の笑みを浮かべ、再びファイティングポーズを取る。

 杏奈の組手はしばらく続いた……

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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世良 杏奈(aa3447)
仁科 恭佳(az0091)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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影絵 企我です。
楽しいですよねあのゲーム。なるべくその雰囲気に近づけられるように努力してみました。
字数が足りないし間が持たないので100人には全く届いていませんが……
気に入って頂けたなら何よりです。

ではまた、御縁がありましたら。
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2019年01月07日

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