▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『交差し、光射す(3) 』
白鳥・瑞科8402

 神罰は下る。電撃は、悪魔達を瞬時に屠っていく。
 続け様に、もう一撃。瑞科の放つ電撃が、悪しき者達の魂へと死という救いを与えていく。
 電撃を放ちながらも近場にいる敵には剣で斬りかかり、瑞科は次々にせん滅対象の数を減らしていった。
 瞬く間に下されていく正義の鉄槌。戦場の中にいるというのに、瑞科の動きは洗練されていてどこまでも華麗だ。今ここに観客がいたら、感動し崩折れていた事だろう。
 さながら劇の一幕のように、優雅に瑞科は悪を滅していく。今宵の主役は、間違いなく彼女であった。悪魔達も反撃しようとはするものの、彼女に隙というものは存在せず、彼らの攻撃は空を切るばかりだった。
 もしも通信で瑞科へと心配の言葉を投げかけた仲間がこの光景を見ていたら、即座に先程の自分の言葉が杞憂である事を悟っただろう。瑞科の強さを前にしたら、たとえ新たに悪魔が召喚されたとしても瞬時に地へと還されてまうに違いない。
 目にも留まらぬ速さで敵を倒した瑞科は、すぐにどこかへと向かい疾駆する。駆けながらも、彼女は思考を巡らせていた。
(悪魔達の出現場所の傾向からいって、恐らく拠点の位置は……)
 街の地図は頭の中にとうの昔に叩き込んである。今までの任務で得た経験、悪しき魔力の流れ、悪魔の出現した場所の傾向から瑞科はその中で敵の拠点があるであろう場所にあたりをつける。
 そして、聡明な聖女はすぐに違和感に眉を寄せるのだった。
「候補となる場所は、二つ。もしかしたら、これは……神父様に念の為連絡を入れておいた方が良さそうですわね」
 ある考えに行き着いた彼女は、足を止めずに通信端末を上司へと繋ぐ。独断で行動しても咎められる事はないだろうが、実力者である瑞科だからこそ仲間への報告を怠る事の愚かさを知っていた。「教会」は個人ではなく、仲間の存在する組織なのだ。
 神父に報告を入れ自らの見解を語った瑞科は、通信を切ると同時に走る速度を速める。
 向かう場所は、街の北東。地図で言えば右上の辺りだ。
「恐らく今回の事件に関わっている組織は……。いいえ、今はまず一方の拠点のせん滅に集中いたしましょう」
 首を小さく横へと振った聖女の呟きは、夜風の中へと静かに溶けていった。

 ◆

 辿り着いたのは敵のアジト。否、拠点と呼ぶのも憚れる程廃れた廃墟。庭にまで魔法陣を描いた跡があり、ここが彼らのアジトで間違いない事を瑞科は確信し、一度深呼吸をして気合を入れ直す。
 廃墟の中には、呪文のようなものが絶えず響いていた。
 いくつもの魔法陣と、何人もの人間……悪魔を信仰する狂信者の姿がそこにはある。悪魔の召喚の真っ最中なのだろう。突然の侵入者である瑞科に気付いても、なお彼らは呪文を唱えるのをやめようとはしなかった。
 今まさに、新たな悪魔が呼び出されようとしている。もちろん、瑞科がそれを許すはずもない。彼女の剣が、狂信者に向かって振るわれる。
 ようやく彼らは儀式を中断し、瑞科へと向き直る。正気を失った瞳から注がれる無機質な視線が、瑞科の艶やかな身体をまるで舐めるように撫でた。気丈な瑞科でなければ、そのおぞましさに背を震わせていた事だろう。
 彼らの心を映したかのような漆黒の魔法弾が、瑞科に向かい放たれる。それを軽々と剣で弾いた後、瑞科は跳躍した。スリットからちらりと覗く魅力的な美脚が、敵の視線をしばしの間さらう。翼のようにヴェールをはためかせ、綺麗に魔法陣の中央へと着地した瑞科はすぐに武器を構え狂信者達へと言い放った。
「あいにく、わたくしの予測ではあなたがたに構っている時間はそう多くはありませんの。申し訳ありませんけれど、手短に済まさせていただきますわ!」
 魔法陣が不気味な色に光る。瑞科に対抗するために無理矢理悪魔を召喚しようとしているのだろうが、彼女の速さに追いつく事は出来ない。中途半端なところで終わった召喚では、呼び出せるのは街にいたものよりも更に位の低い悪魔のなり損ない程度だ。
 また一体の敵を剣で屠った瑞科は、振り向き様にその悪魔すらも斬り捨てる。ここらでようやく、狂信者達は瑞科の強さに気付いたのだろうが、今更力の差を悟ったところで彼らに出来るのは後悔する事だけだろう。自らの欲のために悪魔を召喚し、瑞科を敵に回してしまった事への後悔を。
 夜は更けていく。けれど、しなやかな肢体を駆使し戦場を舞う聖女の剣に陰りはない。
 たとえどれだけ空が暗くなろうと、彼女の輝きを曇らせる事は叶わないのだ。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【8402/白鳥・瑞科/女/21/武装審問官(戦闘シスター)】
東京怪談ノベル(シングル) -
しまだ クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年01月08日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.