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『交差し、光射す(5) 』
白鳥・瑞科8402

「惨いですわね。跡形もありませんわ……」
 もう一つの組織の拠点があるはずだった場所は、すでに怪物に襲われたのかその影すらも残さずに消え失せていた。そっと、瑞科は思わず豊満な胸の前で手を合わせる。白いロンググローブを重ね、聖女は祈りを捧げた。今宵消えてしまった魂が、どうか安らかに眠れるように。
 優しき聖女の祈りを嘲笑うかのように、黒い影が彼女の身体を覆う。瑞科の頭上を飛び交うのは、漆黒の竜であった。巨大な魔法陣から呼び出されたに相応しい巨躯は、邪気をまといながら本能のままに獲物を探し飛び交っている。
 艷やかな茶色の髪が揺れ、振り返った瑞科の視線が竜を射抜く。彼女の視線に気付いた竜の、ぎょろりとした不気味な瞳が美しい獲物の姿を捉えた。
 先に動いたのは、瑞科の方だ。人よりも優れた身体技術を活かし、「教会」随一の実力を持つ戦闘シスターは何なく空を駆ける。跳躍した聖女は、その勢いのままに巨悪を剣で薙ぎ払った。続いて、二撃目。至近距離から放たれた電撃が、竜の懐へと抉るように直撃する。
 その鮮やかな連撃は、異界の怪物であろうとも目で追う事が叶わぬ速さであった。華麗に着地した瑞科に向かい、竜は反撃しようと落ちるように飛ぶ。巨大な身体を持つ彼にとって、自らの肉体自体が武器であるのだ。体当たりをくらわせようとした竜は、しかしその身体が瑞科に届かぬ事に僅かに動揺した素振りを見せた。
 体重を乗せた全力の一撃を、瑞科は自らの剣でしのいだのだ。体勢を崩した敵に、瑞科の追撃が襲いかかる。隙間にそのまま光を流し込んだかのような、美しい一閃が竜の身体を彩った。
 苦悶の声をあげながらも、竜は再び上昇。空高く飛び上がり、遠距離から瑞科を炎で焼き尽くそうと口を開こうとする。
 けれど、遅い。その数秒にも満たない動作すら、瑞科の前では永遠のようなものだった。
 竜が口を開けた時、すでに眼下に瑞科の姿はない。激痛が、竜の無防備な背をなぞる。いつの間にか彼の背に飛び乗っていた瑞科の正義の剣が、悪しき者を裁く。相手にバレないように後ろに回ったのも見事だが、その剣技もまた鮮やかであり華麗であった。無駄のない動きで、瑞科は敵を追い詰めていく。
 恐らく、竜の元いた世界に、瑞科程の実力者はいなかったのだろう。竜は信じられないものを見るよう瞳で、首を後ろに回し瑞科の事を見やった。女性としての魅力に溢れた聖女が、次の攻撃の構えをとる様が竜の視界に入る。
 しかし、それに対抗する術は、竜にはない。
 しなやかな肢体が揺れ、瑞科は次の攻撃の準備をしながらも地へと舞い降りた。その足がしっかりと地についたと同時に、敵に向かい撃ち込むのは、とどめの一撃。瑞科が放った弾が、竜の急所へと的確に突き刺さる。
 身体にめり込んだ重力弾に、竜は悲鳴をあげるしかない。ふらふらと揺れながら、地上へと落下していく悪を形にした怪物。
 だが、その身体はついぞ地上に触れる事はなかった。異界の竜は、一度もこの地に降り立つ事なく霧散したのだ。

 ◆

「いったいどんな怪物かと思えば、少し拍子抜けでしたわね」
 戦闘を終えた瑞科は、呆れたようにその唇から吐息をもらす。傷一つ負うどころか、この身体に指先すら触れる事も許さずに瑞科は勝利を収めてみせたのだ。
「けれど、これ以上の被害が出る前に任務を成功に導けてよかったですわ。罪なき者に、今後も安らぎがありますように」
 まだ夜は明けてすらいない。一夜の内に任務を終えた瑞科は、この街が平和な朝を迎える事が出来る事に笑みを浮かべる。他でもない、瑞科が勝ち取った平穏だ。無事に任務が終わった高揚感が、聖女の胸を満たした。

 帰路へとつく途中、ふと耳慣れた声が彼女の形の良い耳をくすぐる。繋げたままにしてしまっていた通信端末から、いつになく焦った様子の神父の声が聞こえた。どうやら、またどこかで新しい事件が起こったらしい。
「あら、次の任務でして? わたくしは問題ありませんわよ」
 さすがに瑞科に続けて任務を与えるのを躊躇していた神父だが、それを察した彼女はこともなげにそう言ってみせた。偶然通りかかった者が、足を止めて思わず彼女の事を見つめてしまう程に美しい笑みを浮かべながら。瑞科は次の任務に心を踊らせながら、疲労の色すら見せず歩みを進めていく。
 まるでスクリーンからそのまま飛び出てきたようなその美女が、まさか先程街を救ったばかりの救世主だなんて瑞科の事を知る者以外は思いつきもしないであろう。通行人は、日が昇り光が射し始めた世界の中、一層輝くその可憐な花の姿にただただ魅了されるのであった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【8402/白鳥・瑞科/女/21/武装審問官(戦闘シスター)】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ライターのしまだです。ご発注ありがとうございました!
瑞科さんの今回のご活躍、このようなお話になりましたがいかがでしたでしょうか。
お楽しみいただければ幸いです。何か不備等ございましたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
このたびはご発注誠にありがとうございました。また機会がありましたら、よろしくお願いいたします!
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しまだ クリエイターズルームへ
東京怪談
2019年01月10日

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